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目の前の生徒には全力で対応。今いるこの場所でプラスに思ってもらえるように。

学校法人 電波学園
あいち情報専門学校高等課程 教務主任
小関 元和 先生

高校だけじゃない、専門学校の高等課程という選択がある。

なぜ、電波学園に?
「もともと高校で教員をしていたんです。縁あって、電波学園でお世話になることになりました。最初は、『専門学校の高等課程って?』と思いましたが、実際勤めてみると何も変わらない、教員としてやることも高校と一緒。当時は自分も知らなかったのですが、多くの教員志望の方は『高校』という意識しか持っていないと思いますので、こういった学校があることを、ぜひ知っていただきたいです。
教員を志したきっかけは、クラスや部活の先生など、自分の身近な大人は先生で、先生に影響され育ててもらったという思いがあるからです。私は、小・中・高とサッカーしかやっていなくて、世の中にどんな仕事があるか知らなかったですし、その中でも先生って、人を導いて、人を変えたり、助けたり。自分もそういう『道標になれたらいいな』と考え、先生を目指したいと思うようになりました。中でも、小学校の時の担任と、サッカーを教えてくれた先生は、いろいろ気にかけてくれて、人間的な部分を育ててくれたので、とても感謝していますし、自分の理想の先生ですね」

社会に対するイメージを、現実のカタチとして教えてあげたい。

最初から順風満帆だったか?
「自分の受け持つ社会科の、先生としての実力の無さに苦労しました。だから、毎日勉強して、勉強したことをすぐに次の授業で教えて、その繰り返しでした。生徒にちゃんと聞いてもらいたい思いはあったのですが、焦って余裕が無くなってしまって…。今思えば、若かったですね(笑)。それからは、社会科は世の中に関わることが多い科目なので、『それ、知っている』という日々の身近なネタを探して、興味を引き付ける授業を心掛けるようにしました。例えば、『世界で一番のお金持ちは誰だと思う?』とか。具体的な数字を出したりすると、食いつきは良いですね。なんとなく生徒たちが思っている社会に対するイメージを、現実のカタチとして教えてあげられると良いな、と思って日々ネタを探しています」

ホームルームでは、生徒が前向きになれるような言葉を発信。

一生懸命関わることで、思いを感じてもらえれば。

担任指導で普段心掛けていることは?
「今持っている生徒たちを大事に、思い入れを持って可愛がってあげたいと思っています。学園に勤める前の前任校の時に、1年、2年と持ち上がって当然そのまま3年生も受け持つと思っていたら、外されて新1年生の担任をすることになったんです。愛着のあるクラスだったので、テンションも下がりやる気も失ってしまって…。そんな中、新しいクラスを受け持って、当然思い入れも薄いのでクラス運営も全くうまくいかなくて、問題も起きるし、心の繋がりもできず、今にして思えばその時の生徒たちには申し訳なかったと思っています。ただ、そこで気づいたのは、自分の思い通りにいかない時でも、目の前にいる生徒には全力で対応してあげないといけない、ということです。なかなか伝わらないかもしれませんが、一生懸命その人に関わることで、こうなってほしいという思いは感じてくれるのではないでしょうか。『ちゃんと、自分の方を向いてやってくれたんだ』と思ってもらえれば」

社会研修で、生徒と一緒にランチ中。

指導に苦労した分、頑張っていると聞いた時は本当にうれしい。

苦労したエピソードは?
「よく屁理屈をこね、生活も身だしなみもだらしない、お家の人も無関心。そんな生徒がいました。ある時、『この先、どうする?今のままじゃ、社会で生きていけないぞ。どうやって生きていくつもりだ?』と生徒に問いかけたんです。そしたら、『川で魚釣って食べます』って。それからしばらくして、その子がテストを休んで遊びに行っていたことが発覚しました。しかも、その時は先生に暴言を吐いたということで、懲戒指導中だったんです。これはいけないと、保護者を呼び出して、『もう無理です。このままでは面倒見られません。ご家庭でもよく相談してください』と言ったら、生徒が手紙を書いてきました。誰かに言われた訳ではなく、迷惑を掛けた先生たちに、『何とか続けさせてください、すみませんでした』と一通ずつ。ようやく自分でも何とかしなきゃいけないと気づき始めたんですかね。本人も反省していたので、それならば、と停学にすることになりました。
照れくさがって素直に物事を喋れず、ひねくれた態度を取ってしまう生徒でしたが、停学中の日々の指導の中で、だんだん心が解きほぐれていくのを感じていました。そんな中、2人でお昼ご飯を食べる機会があって、ロールケーキのパンを生徒が持っていたんですが、もじもじしながら『先生、食べますか?』って言ってくれて。コミュニケーションを取るのが苦手で、自分になびいてくるタイプの子ではなかったのですが、ようやく心を開いてくれたのか、と感じた瞬間でしたね。だらしないままでしたが、何とか卒業することもできました。学校を出て、そのまま就職したのですが、翌年、彼が勤めている会社の方が学校にみえて、『頑張ってやっていますよ。先輩たちにご飯に連れてってもらったりして』と伺った時には、『あいつがそんな風に人と関係が築けるのか!』って職員室中で大騒ぎしたのが良い思い出です(笑)。大人を全部突っぱねてきたような生活を送っていた子だったので、ちょっとずつちょっとずつ思い入れを持って声を掛けていく中で、心が解きほぐれていって、ちゃんと今、就職先でも頑張っていると聞いた時は本当にうれしかったですね。その後、彼が学校に遊びに来ることはありませんが、それでいいと思っています。幸せだったら、学校に来る必要はありませんから」

学校祭で、クラスの生徒と。

納得して進路を選んでもらいたい。そのためにも柔軟な姿勢を。

生徒たちに伝えていきたいことは?
「きちんと納得して自分の進路を選んでいけるようになってもらいたいと思っています。高校で選んだ道が一生続くかどうかは分かりません。新しい道に進みたいなと思った時には、改めて自分の進みたい道を描けるように考えることはすごく大事なので。これじゃなきゃダメではなく、柔軟に考えられる姿勢が身につけば、自分で納得して進むことができるんじゃないかと思います。特にうちの学校でも、年に1人か2人、成績の良い子がちょっと有名な大学の名前を出して『ここに行きたい』と言うケースがあります。こちらからすると、受験するにしてもあなたの実力が分からないので、模試の結果を持って来て、と言ってもやらない。面倒くさいのか、本気じゃないのか、結果を知るのが嫌なのか、言い訳だけ言って模試を受けようとしない。結局、何もせずに進路も決まらないというパターンがあったりします。だいたいそういう子は、進路が決まっても、『自分はこんな所に行きたくなかった』と言いがちなので、やっぱりそういう事は生徒に言わせたくないですよね」

自分にレッテルを貼ることのないよう、自信を持たせてあげたい。

普段、苦労している事は?
「生徒にプライドを持たせたいと思っています。学校が楽しいとか、この学校で満足している、という思いを持たせてあげたいんです。本校は、学力的にも自信が無かったり、自分でできないと思ってしまったり、事あるごとに、『だってうちの学校だからな』という声が聞こえてきたりします。以前、在職していた他の学園の学校でもそういった子はおりましたが、自分たちでレッテルを貼ってしまっているというか…。そういう思いを持たせずに、『うちの学校って楽しいんだ』とか、『自分はここでこんなに成長ができるんだ』とか、今、自分がいるこの場所をプラスに思ってほしい。他と比べる必要もないし、比べてもきちんと頑張っているって、そう思ってもらえるように働きかけるのは難しいですが、楽しく、笑顔で学校生活が送れるように、日々声掛けをして生徒と関わるようにしています。例えば、ホームルームの時間に、今目標に向かって頑張っていることや、資格取得に向けて頑張っていることは、誰もができることではないので、自信を持っていいんだよ、と発信したりしています。幸いにして、本校は小規模の学校なので、生徒と教員の距離感はとても近いです。自分たちに貼っているレッテルを払拭できるよう、これからも生徒一人ひとりに関わっていきたいと思っています」

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