「ペドフィリア」と「チャイルドマレスター」は別物である

 LGBTQが権利を拡大していく中で、なおざりにされているのが、ペドフィリア(ロリコン、小児性愛者)の権利である。未成年(定義はさておく)を性的対象にする彼(女)たちが、欲望を充足するということは、すなわち未成年に対する加害を行うということであるから、仕方ないと言う話になっている。
 だがちょっと待ってほしい。実際に未成年に対する性加害を行った者たちが、裁かれ、罰され、あるいは治療を受けるのは当然のことである。
 しかしペドフィリアのほとんどは、実際に未成年に対する性加害を行うわけではない。むしろ実際に未成年に性加害を行う者たち=チャイルドマレスターの中に占めるペドファイル(ペドフィリア傾向を持つ人)の割合は、わずか三割程度との調査結果が出ている。
 では残り七割のチャイルドマレスターは、どうして未成年に性加害を行うのか。
 彼らの目的は女性(あるいは男性)に対する性加害であるが、成人は未成年に比べて肉体が強く、反撃される可能性が大きい。また性についての知識もあるので、騙して性加害を行うことも難しい。チャイルドマレスターのほとんどは、安全かつ容易に性加害を行うため、未成年をターゲットにする、卑劣漢なのである。 
 チャイルドマレスターの多くがターゲットにするのは、たいていの場合、通りすがりの見知らぬ未成年ではなく、顔見知りで、かつ権力関係にある相手が多い。教師→生徒、宗教者→信徒、親戚同士。そして残念なことに最も多いのは実父母・継父母・兄妹姉妹から行われる、家族内での性的虐待である。
 また、チャイルドマレスターの中には、性加害を目的として、未成年と接触する機会の多い職業(教師や宗教者) を選ぶものも少なくない。カトリック教会で、聖職者による未成年に対する性加害が多発するのは、これが原因だと考えられる。
 さらに教育機関や宗教機関においては、ただでさえ権力勾配が発生しやすいのに加え、問題を隠蔽する体質があり、深刻化しやすい。家庭の密室性においては、言うまでもない。
 チャイルドマレスターがどうして性加害を行うかについては、多くの研究がある。基本的には、性加害は性欲の発露ではなく、支配欲の発露であり、性加害は暴力で他者を支配したいという欲求を満たすために行われると考えられる。そしてその歪んだ欲求の源は、幼少時に彼らの多くが受けた、肉体的・精神的・性的虐待にあるのではないかと考えられている。
 実際、ある調査によると、性犯罪者の五割に虐待経験が見られた。この状況を「セックス・リング」と呼ぶが、もちろん虐待経験者の五割が性犯罪者になるわけではなく、ほとんどの虐待経験者は加害者にはならない。
 チャイルドマレスターの多くが未成年を愛しているどころか、性欲を抱いているわけですらない(支配欲を満たしているに過ぎない)のに対して、ペドファイルの多くは、実在の未成年を加害しないし、実在の未成年に興味を持たない人々すら、雑にペドファイルにくくられている。
『週刊少年サンデー』より売れていると言われるロリコン漫画雑誌『LO』の読者の多くは、実在の未成年ではなくあくまで、空想上の幼女に対して欲情しているのである。かつて同誌のキャッチコピーとなった
「Yes! ロリータ、No! タッチ」
 が全てを象徴している。
「(いわゆる)『児童ポルノ』は、創作物であっても性加害のきっかけになる」
 との意見もあるが、だとしたらそれは単に創作と現実との混同であり、教育(特に性教育)の敗北である(現状その傾向があることは認める) 。もちろん実在の未成年を撮影等した「児童性虐待記録物」の制作・流通・所持は固く禁じられ、取り締まられるべきだ。
 つまりペドフィリアは、行動に移さない限り内心の自由として尊重されるべきであるし、チャイルドマレスターは厳重に取り締まられ、処罰あるいは治療を受けるべきである。しかし現代社会では、ペドファイルが過剰に迫害され、チャイルドマレスターが野放しになりがちという、逆転現象が起こっている。これを是正するためには、いくつかの施策が必要であろう。
 まずは未成年に対する正しい性教育。具体的には「プライベートパーツ(口、胸、性器、尻)」を触ろうとされたら、それが家族や教師であっても、信頼できる大人に告発すべきだと教えなくてはならない。また、ある程度の年齢に達したら、実際のセックスがどうあるべきかを教え、氾濫しているAVやエロマンガはファンタジーであることをはっきりさせなくてはならない。
 そして内心の自由の尊重。実在の未成年を素材にした児童ポルノは「児童性虐待記録物」として厳しく取り締まると共に、被害者の存在しない創作物に関しては、表現の自由が尊重されるべきである。
 チャイルドマレスターに対しては、もちろん処罰は必要だがそれ以上に、性依存症患者とみなしての治療が、再犯(チャイルドマレスターの再犯率は高い)防止に役立つと思われる。
 みんなでもっと住みやすい世の中にしよう。


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