ソロジャーナルRPG「魔法骨董ここに眠る」プレイログ CASE:EF-1

はじめに

本稿は、ソロジャーナルRPG「魔法骨董ここに眠る」のプレイログです。

これ以降は、すべてプレイログとなります。

序:誰かの私記

明日から、店長の仕事を手伝うことになった。その仕事とは、魔法の道具たちが残す最期の言葉を代筆する、というものだ。どうして、一人のバイトでしかない僕が、そんな大事な仕事を?

最初は断ろうとした。自分がやるには荷が重すぎる、と。でも、店長があまりに泣きついてくるものだから、半ば強制的に引き受けることになった。

別にやりたくないわけではない。元々あの店でバイトを始めたのも、店に集まってくる道具たちに惹かれたからだ。ただ、彼らの思いをきちんと汲めるかどうか、不安が胸に積もる。店長から色々と教わりはしたが、正直学び足りない。

まとまりは悪いけど、何となく気持ちを整理できたから、さっさと風呂入って寝よう。最後に、明日の自分に向けて、店長の言葉を記しておこうと思う。

「正確に記録しよう、などと思ってはいけない。目の前の道具に向き合うことだけを考えるんだ。」

もう!!!!
それができるなら、こんな気分で朝を迎えてないんだよ~~~~~!!!!!

(最後の部分だけ、後から乱雑に書きなぐられたような筆跡になっている)

日記の最初のページ

CASE:EF-1

2022年9月17日 17:39

道具の形

書く/描くもの

魔法の効果

豊穣

魔法の程度

ちょっとした効用

感じ取れた思い出

(1)5黒
この道具は、持ち主が何度も何度も代わっている。かつての所有者たちが、口を揃えて「期待外れ」と言っているのが聞こえた。

(2)5赤
しかし、それと同時に「ありがとう」「助かった」という言葉も聞こえた。この道具を手にしたものは皆、満面の笑みを浮かべていた。

(3)9赤
道具は、この店に届く直前まで、ほとんど誰も立ち入らない物置の、小さな箱の中にいた。少なくとも数百年の間、彼の視界には暗闇しか映っていなかった。

※代筆者注:これ以降は、対象品自身が執筆している。

久しぶりに光を浴びたのは、つい数日前のことである。持ち主の子どもが、私を偶然見つけ出してくれた。私がこの店に差し出されるときの、あの子の悲しそうな顔は、今でも忘れることができない。
魔法というものは、使われなければ急速にその力を失う。私が一生を終える前に、ここへたどり着けたのは奇跡と言えるだろう。

(4)6赤
無から有を生み出すことは、最も強力かつ根源的な魔法の一つである。そして、文章をしたためたり、絵画を生み出したりする行為は、その最たる例だ。私の役目は、持ち主の創作物が、豊かで実りあるものとなるようにすることだった。もう、随分と昔のことだけれどね。
彼らの創り上げたものは、書物だったり美術館の展示だったり、ありとあらゆる形で残されている。きっと、これを書き残してくれている君も、見たことある作品があるんじゃないだろうか。

(5)Q黒
ある時、私は魔力を込めなおされた。その持ち主は、どうも私の果たしている役目に満足しなかったらしい。結局、魔力を込めなおした後も、奴は皆に喜ばれるような作品を世に出せなかった。
それもそのはず。奴のやっていたことは、他の誰かが創ったものの切り貼りに過ぎなかった。足りなかったのは私の魔力ではなく、持ち主の「創作」に対する敬意だったのだ。
残念ながらそれ以来、私は持ち主を次々と代えられる身となった。

(6)2黒
最後の持ち主は、今の職に就く直前まで、芸術家の道に進むかどうか悩んでいた。正直に言って、もし芸術家になっていたら、間違いなく稼げていなかっただろう。しかし、何かを創りたいという思いは、そこらの自称アーティストよりは強かった。私を手放さなかったのは、きっと芸術に対する未練を捨てきれていなかったからだろう。
道具である私としては、持ち主が目まぐるしく代わることよりも、誰にも使われない方が苦痛だった。
道具でしかない私がこんな風に思ってしまうのは、わがままだろうか。

最期の質問

(1)あなたが誇りに思っていることは?
繰り返しにはなるが、私が筆を務めた作品たちが、ありとあらゆる形で残されていることだ。

(2)次に引き取られるなら、どんな人がいい?
私のことを大切に酷使して、まだこの世に無いものをたくさん生み出してくれる人、だろうか。

代筆者所見

本稿は、思い出(3)の途中から、対象品自身によって執筆されている。具体的には、対象品が代筆者の手元に移動し、残された魔力でその手を操って書いた内容である。
道具であるという自覚を持ちながらも、自身の考えを明確に持つ品物だったと推測される。

以上

誰かの私記

何とか、初めての大仕事をやり切った。突然目の前の道具が動き出して、僕の手で勝手に日記を書き始めたときは、心臓が止まるかと思った。店長もその様子は見ていたらしく、珍しい体験をしたなガハハ、と言っていた。ガハハじゃない。

肝心の日記の中身だが、店長曰く「道具自身が書いてくれてよかったな」とのこと。確かに前半だけを見ると、もし僕が最後まで書き続けていたら、あそこまでの内容にはならなかったと思う。

日記を確認した後、店長は僕に「次もやってくれる?」と、若干心配そうな顔で尋ねた。もちろん、僕は即答した。

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