正直者が損をしない社会になって欲しい
『金の斧』は、イソップ寓話のひとつで、正直であることが最善であるという教訓の物語です。この話は、西洋では古くからある話のようで『ヘルメースと木こり』ともいうらしい。
殆どの人は、この話を知っていると思いますが、あらすじは次の通りです。正直な木こりが、誤って斧を川に落としてしまいます。すると、ヘルメース神が現れて川に潜り、金の斧を拾ってきて、落としたのはこの金の斧かと尋ねます。木こりが違うと答えると、ヘルメースは次に銀の斧を拾ってきますが、木こりはそれも違うと答えます。最後に鉄の斧を拾ってくると、木こりはそれが自分の斧だと答えました。ヘルメースは木こりの正直さに感心して、三本の斧すべてを木こりに与えました。
この話には、日本昔話の『すずめのお宿』みたいな続きがあります。その話をどこかで聞きつけた欲張りな木こりは、斧をわざと川に落とした。正直者の木こりの時のようにヘルメースが金の斧を拾って同じように尋ねると、その木こりはそれが自分の斧だと答えます。しかしヘルメースは神様です。そんな嘘はとっくにお見通しです。欲張りな木こりは金の斧を手に入れるどころか、自分の斧を失うことになりました。
この話に出てくるヘルメースは、ギリシャ神話のオリュンポス十二神の青年神で、神々の伝令使であり、旅人・商人などの守護神でもあります。ところで、この話を読んでいて違和感を覚えた人は少なくないでしょう。「斧を落としたのは湖じゃなくて川だったの?」や「ヘルメースのような青年神じゃなくて、女神さまでは?」。私が子供の頃に聞いた話も、”湖と女神”の話でした。どうやら、日本では話が脚色されているようです。
「正直者は馬鹿を見る」と言う諺がありますが、正直者が不利益を被るような社会は間違っています。”嘘をついてもバレなきゃOK”という社会では、困ります。正直者が得をしなくても良いので、少なくても損をしないような世の中になって欲しいと思います。
ニュースなどではあまり大きく取り上げられませんが、大学の研究者による研究不正は後を絶ちません。また、過去には食品偽装や賞味期限偽装などもありました。最近では、温泉施設の”お湯の管理”偽装もありました。想像力が欠如したり、倫理観が薄れると、このような不正が出てきます。しかし、嘘をついても必ずバレます。称賛されることはないかもしれませんが、自分にも他人にも嘘をつかない生き方が肝心です。
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