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自由と不自由の狭間で

「自由と不自由、どっちがいい?」と聞かれれば、「自由がいいに決まってるでしょ」と多くの人が答えるでしょう。しかし、果たしてそうでしょうか。

英語で自由はfree(フリー)と言いますが、freeの元々の意味は”○○が無い”という状態のことを言います。アルコールフリーはアルコール分が入ってないという意味ですし、タックスフリーは税金が無いことを指します。フリーが単独で使われる場合は、”制限/制約が無い”状態を指します。これが自由です。

しかし、「自由にして下さい」と言われると途端に困ってしまいます。人間は選択肢が多過ぎると、何も選べなくなることが知られています。この傾向は、コロンビア大学のビジネススクール特別講座で紹介され、『ジャムの法則』と呼ばれています。ジャムは人の名前ではなく、実験に使われた”(パンに塗る)ジャム”から来ています。

この実験では、”24種類のジャム”と”6種類のジャム”の販売数の比較実験を行なっています。この結果、24種類のジャム販売をした場合、足を止めて立ち止まる率は高かったのに、買った人は僅かしかいませんでした。

制約の中にこそ、価値があると考えられているのが、最近ブームの俳句や短歌です。俳句や短歌には17文字や31文字という字数制限があります。また俳句には、季語を入れなければならないというルールもあります。17文字や31文字では多くのことを伝えられませんが、その奥に潜む情景や背景が俳句や短歌の魅力を高めています。

『型破り』という言葉があります。これは破天荒な意味で使われますが、元々は能や歌舞伎からきた言葉です。能や歌舞伎には、古くから伝わる有形無形の制約である”型”があります。型破りというのは、この型をしっかり身につけた人にしかできない高等テクニックなのです。

自由な社会で暮らしていると、その価値を見失いがちです。自由の価値は、不自由になって初めて自覚できます。我々は自由と不自由の狭間で生きています。でも、このサジ加減が難しいんですよねぇ~。

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