思い出とわたし

 私には悪い癖があって、過去にあった嫌な出来事をいつまでも引きずってふとあるごとに思い出しては、ぶつぶつと独り言を言ってしまう。その独り言は、決まって『大嫌い』とか、『もういいです』とか。私の頭の中で考えている事が出てしまっている。大抵は1人でいる時なのだけれど、隣に人がいる時は、言ってないふりをしてスルーする。
本当はこんな癖 治したいしやめたいのに、決まってお風呂に入っている時や、車に乗っている時に出てしまう事が多い。どうせなら、『楽しかった』とかのポジティブな言葉が発せられればいいのにと、いつも思う。
嫌な思い出?沢山ありすぎて思い出せない!いや矛盾している。でも、本当にそんな感じで、今は言えないのにふとした瞬間にモワモワと湧き立ってきてその思い出に囚われて一言発するまで抜け出せない。いっそ本当に忘れられたらどんなにさっぱりすることかと思う。

なぜそんな文章を書き始めたのか?実は、手に入れたのである!
思い出消しゴム を‼︎
正確には「おもひでけし」だ。

父方の祖父は、祖母が亡くなってからずっと一人暮らしをしていて、まわりの手を煩わせることなくあっさり亡くなってしまった。風邪を引いたようだとかかりつけの病院で順番を待っている時に心臓発作を起こしたらしく、順番で看護師が呼びに来て亡くなっているのが分かった。心臓マッサージもAEDも試みたけど、帰ってくることはなかった。とても残念だけど、自宅で孤独死にならなくてよかったし、祖父もこれでいいんだと思っていると思う。私も出来ればそんな死に方がいい。

 そんな祖父の家の片付けを手伝う事になり、ひとりっ子だった父が丸ごと相続することになった為、ひたすら要る物要らない物に分別するという作業を続けている。これは修行だと。とはいえ飽きずに作業できるのは面白いこともあるからで、祖父の時代の写真や書物にはびっくりするような価値のあるものもあっていくらになるのかなあと、想像するのもまた楽しい。が、売るかどうかはまた別の話ではある。なんと言ってもこれは父の物になるから。

祖父の荷物は、あまり多くなく殆どは書物だった。亡くなった祖母の荷物は片付いているので、祖父の家の片付けは1週間程で大体片付いた。読みたいと思った本や価値がありそうな物、思い出の物、必要な書類だけを持ち帰り、後は業者に来てもらって処分する事に決まった。寂しい思いもあるけど、家に持ち帰れる量にも限度があるので仕方がない。祖父もこれでいいと言っている事にする。

そんな中で、私は気になる本を見つけていた。「つくるということ」という本だ。中には梅干しの作り方や、炭の作り方。荷車の車輪の設計図まで載っていた。何か楽しい作る物はないか後でゆっくり探そうと貰ってきた。祖父がなぜそんな本を持っていたのかは、分からないままである。ただ、私も忙しい毎日を送るうちに貰った本の事も忘れてしまっていた。

そして、その本をめくる日がやってきた。なぜかその日は何かを作りたくてうずうずしていた。料理で何かを作りのではなく、形に残る物を作りたい。手を動かして作りたい!と。そして本棚に仕舞い込んでいた「つくるということ」を引っ張り出してペラペラと作れそうなものを探し始めた。

何かないかなぁと。作れそうなものはないかなぁ。そんな中、見つけてしまった。おもひでけしの作り方を。思い出を消せる消しゴム!そのページにはメモも挟んであった。

作ってみた。消えたと思う。思い出せないから。

!!!じいちゃん作ったの?消せる?マジ?すご!私も消したい!
そう思った時には立ち上がっていた。とりあえずじいちゃんちに行ってあの箱を開けてみよう。あの箱!
あの箱には色んなものが入っていて、使わないと思って置いてきてしまっていた。でも場所もわかってる。あの中には、確か『おもひでけし』と書いてある紙の袋に入った消しゴムがあった。
母にじいちゃんちの荷物の処分はいつかと尋ねると、まだ未定との事。なかなかそこまでは思い切れないらしい。欲しい荷物があった事を話し、鍵を受け取り自転車で祖父の家へ。

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残念ながら、今日は7月23日で書き切る事が出来ませんでした。
いつか続きを書きます。ごめんなさい。

#創作大賞2024
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