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牧羊犬の夢 

鐘が鳴る 丘の上に連なる羊たちは 頭を上げず 草を食んでいる 私は待つ 午後 彼らの影は長い 夏が終わる 代赭色に覆われた季節が来る 羊たちはそんなに貧弱な巻き毛で 冷風から身を守るつもりなのか 鐘が鳴る 私の吐く息はすでに白い 雪のひとひらが足元に落ちる 季節に季節が重なる 私は待つ もう 鳴き声は 聞こえない 彼らが食む草はとうに枯れた 羊たちは凍え 一頭 また一頭 倒れていく 一声も鳴かず 訪れるものが何かも知らず ただ 倒れていく その時 彼らは聴くだろう 鐘の音を 最後の鐘の音を 鐘は鳴りやむ 私は目を開ける 羊たちはいない 私の影は長い 代謝色の手のひらが頬をかすめる それから 再び鐘が鳴り始める 私のための鐘が

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