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【NYM】落ち着かない好調

2022シーズンのMetsは好調な滑り出しを見せています。開幕33試合を22勝11敗の好成績で終え、NL東2位のBravesと6.5ゲーム差をつけ首位につけています。昨年まで隙だらけのMetsとは異なり、相手のミスに付け込んで逆転勝ちを収めたり、中盤に中押し点を挙げて逃げ切る試合が多いように感じます。先日Phillies相手に収めた大逆転勝利では、9回に7点を入れ逆転を果たしましたが、昨年であればその裏に Rhys Hoskins あたりに逆転HRを打たれていたところでした。

Metsの躍進の裏には、何が隠されているのでしょうか?

先発・中継ぎ双方の整備に成功

もはや(良くも悪くも…)伝説の存在と化しつつある J. deGrom 不在ながらMLB最多の17勝を挙げている先発投手陣のみならず、中継ぎ陣も安定しています。先発防御率3.30でMLB6位、中継ぎ防御率3.27で8位はもちろん好成績ですが、合算で3.29で全米4位と順位を上げるということは、両者のバランスが取れているということです。

多い三振少ない四球、此れ投球の基本なり

先ごろ打ち込まれてしまいましたが、これまで開幕投手としての好投から一貫してローテーションを引っ張ってきた Tylor Megill の成長の影響は大きいでしょう。94.6→95.6mphと平均球速を伸ばし、時折100mphに届こうかという直球は、昨年よりもハードヒットを浴びる割合が15%も減っています

Megillの強みは高い奪三振能力と四死球の少なさ (K/BB: 3.77) ですが、この特徴は、新加入のM. ScherzerC. Bassitが、復活のC. CarrascoT. Walkerが次々とアウトを積み上げる今年のMets投手陣を特徴づけるものでもあります。チームK/BBが3.59はMLBトップの数字を誇っています。それを象徴するもう一人は、これまで無失点投球を続ける覚醒したリリーバーDrew Smith(被打率 .093、奪三振率11.48)でしょう(もちろんEdwin Diazも忘れてはいけない)。

横軸が与四球数、縦軸が奪三振数

多投連投鮮し仁

また、中継ぎ投手に目を向けると、運用の工夫が見て取れます。

横軸は連投数/中継ぎ登板数、縦軸が回跨ぎ数/中継ぎ登板数
色で1試合当たりの中継ぎ登板数を表している。
データソース

回跨ぎと連投、さらに1試合当たりの中継ぎ登板数を見ると、Metsは中継ぎの登板数を少なくし、連投を抑えて多めに回跨ぎをさせる戦略をとっていることがわかります。運用が功を奏してか、SmithとDiazのみならず、開幕不調気味であったSeth LugoJoely Rodoriguezが安定感を得つつあり、とっておきの左腕Chasen Shreveが支配的な投球を続けていることはさらなる好材料です。
2018年、Metsは開幕11試合で貯金10を作りつつも最終的には借金を作りPOを逃すという苦い経験をしています。このときは、連勝中の中継ぎ酷使が失速の原因の一つとなっていました。経験豊富な B. Showalter の采配により、当時監督1年目の M. Callaway の轍を踏まずに済むかもしれません。

打低の風潮が追い風

2022年シーズンは、近年1の打低シーズンであるといわれています。リーグ長打率は過去5年の平均.426を大きく下回り.373です。実は、今年のMetsの戦略はこの理由は不明な風潮とマッチしています。Statcastによると、MetsはMLB平均より1.5mph近く遅い平均打球速度、ハードヒット率も平均より5%近く低い。一方で打率の予測値は高く、実際にMLB平均より2分高い打率.254はMLB第3位に付けています(出塁率.334はトップ!)

横軸がチーム出塁率、縦軸がチーム長打率

この図からも、三振を抑え四球とヒットで出塁に特化した打撃スタイルが見てとれます。この戦略の申し子といえるのが復活を遂げたバットマン、Jeff McNeilでしょう。開幕シリーズでの固め打ち以来、打率三割をキープしています。最も多く守備でアウトを増やしてもいるMcNeilに加え、Mark Canhaハードヒット率下位7%で打率3割)といま最も隙がない選手であるBrandon Nimmoが攻守ともに活躍(CanhaとNimmoは共に守備指標Outs Above Averageがプラス)し、唯一の大砲であるPete Alonsoが貴重な一撃を加える存在として鎮座しています。

Savantより
驚きの赤さ

このように、チームの戦略・編成とリーグの傾向が合致したことは今シーズンの好調の要因である可能性があります。長打率が一様に低く一発の出なさが不利に作用しないのであれば、出塁を重視した編成はプラスに働くはずです。

まとめ

Metsの好調は、けっしてまぐれではないものでした。しかしこれらのアドバンテージは、リーグの状況やチームの状態が変化することによって揺らぎうるものです(怪我人が出ないように、君は十分に祈ったか?)。チームの真価が問われるのはこれからでしょう。

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