日本歯科大学2023年度化学の過去問解説(有機)第6回
こんにちは私立歯学部専門予備校のデンアカです。今日は日本歯科大学2023年度一般入試の化学の問題を取り上げます。有機化学からの出題です。
第6回として(2)のii)を解説します。
問題文
必要があれば、次の原子量および値を使うこと。
H 1.00
C 12.0
N 14.0
O 16.0
S 32.0
標準状態における気体のモル体積 22.4 L/mol
アボガドロ定数: NA=6.00×1023N_A = 6.00 \times 10^{23}NA=6.00×1023/mol
I 次の文を読み、(1)と(2)の問いに答えよ。
希硫酸中で天然のタンパク質を加水分解すると、その構成単位であるアミノ酸が得られる。アミノ酸は1つの分子内に酸性の ① 基と塩基性の ② 基とをもつ化合物である。アミノ酸のうち同一の炭素原子に ① 基と ② 基とがともに結合しているアミノ酸は ③ とよばれ、その一般式は RCH(NH₂)COOH で表される。
天然のタンパク質を構成するアミノ酸は約 ④ 種類であり、これらのうち動物が体内で合成できないか、合成できても十分量でなく、食物から摂取する必要があるアミノ酸を ⑤ という。ヒト(成人)の ⑤ は、 ⑥ 種類といわれている。
天然のタンパク質を加水分解したときに得られるアミノ酸には、R が水素 H である ⑦ CH₂(NH₂)COOH を除いて、すべてに(a) 不斉炭素原子があり、 ⑧ 異性体が存在する。天然のタンパク質を構成しているアミノ酸は、そのほとんどが ⑨ 体である。
水に溶解させたアミノ酸は、その分子内に存在する ① 基から電離した ⑩ イオンが ② 基に結合し、分子内に正と負の両電荷をもつ ⑪ イオンになることがある。このため、(b)アミノ酸の水溶液では、陽イオン、 ⑪ イオン、陰イオンが平衡状態にあり、水溶液の pH に応じて、それらの濃度が変化する。また、水溶液中のアミノ酸は、それぞれ特定の pH において、正の電荷と負の電荷がつりあい、全体として電荷が0になる。このときの水溶液の pH の値を、そのアミノ酸の ⑫ といい、 ⑦ ではその⑫ の値は 6 である。
アミノ酸が結合するときに生じる ⑬ 結合を特にペプチド結合といい、2分子のアミノ酸がペプチド結合によって結合するとジペプチド、3分子のアミノ酸が結合すると(c)トリペプチド、多数のアミノ酸が縮合重合すると ⑭ となる。
タンパク質は ⑭ を基本とした複雑な立体構造をもつ生体内の高分子化合物である。タンパク質は、加水分解したときにアミノ酸のみを生じる ⑮ タンパク質と、アミノ酸とともにそれ以外の成分として糖類、核酸、脂質、色素、リン酸などを生じる ⑯ タンパク質に分類される。生物体内で起こる複雑な化学反応の触媒として作用するアミラーゼなどの ⑰ もタンパク質を主成分とする高分子化合物である。
(1) 前回までに解説したため略
(2) 文中の (a)~(c) に関する、次の i)~iii) の問いに答えよ。
i) 文中の (a) について、分子内に不斉炭素原子をもたない化合物を、次の解答群から二つ選び、記号ア~カを解答欄に記せ。
ア. グリセリン (1,2,3-プロパントリオール)
イ. セルロース
ウ. 乳酸
エ. ヘモグロビン
オ. リノール酸
カ. RNA (リボ核酸)
ii) 文中の(b) について、⑦ が溶解している水溶液の pH を pH = 1.0、pH = 6.0、pH = 11.0 にそれぞれ調製した。それぞれの水溶液中に最も高濃度で存在する ⑦ の化学式の組み合わせとして最も適切なものを、次の解答群から一つ選び、記号ア~エを解答欄に記せ。
iii) 文中の下線部 (c) である化合物 X 6.50 g を完全に加水分解すると 3.75 g の ⑦ とある質量の化合物 Y との 2 種類のアミノ酸の混合物が得られた。このとき生じた化合物 Y の分子量として最も近いものを、次の解答群から一つ選び、記号ア~クを解答欄に記せ。
今回は(2)のii)を解説します。
考えてみましょう。
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解説: 文中の下線部 (b) について
この問題では、アミノ酸(⑦、グリシン)が異なるpHの水溶液に溶解したときに、どの形態で存在するかを選ぶ問題です。アミノ酸は、pHに応じて構造が変わるため、その形態を理解することがポイントです。
アミノ酸の基本構造とイオン化
アミノ酸にはカルボキシ基 (-COOH) と アミノ基 (-NH₂) があり、これらがpHによってプロトン(H⁺)を失ったり受け取ったりすることで、アミノ酸の形態が変わります。
酸性環境(低pH)では、アミノ酸のアミノ基 (-NH₂) はプロトンを受け取り、正に帯電した -NH₃⁺ になります。同時に、カルボキシ基 (-COOH) はプロトンを失わず、-COOH のままです。
中性環境(中pH)では、アミノ酸は双性イオンと呼ばれる形態になります。このとき、アミノ基は -NH₃⁺、カルボキシ基は -COO⁻ の状態で、正と負の電荷が分子内に共存しています。
**塩基性環境(高pH)**では、カルボキシ基 (-COOH) はプロトンを失い、負に帯電した -COO⁻ になります。同時に、アミノ基 (-NH₂) もプロトンを失って中性の -NH₂ となります。
各pHにおけるアミノ酸の形態
pH = 1.0(酸性環境)
酸性環境では、アミノ酸のアミノ基がプロトンを受け取り、正電荷を持ちます。カルボキシ基はプロトンを放出せず、そのまま -COOH の形で存在します。したがって、化学式は次のようになります:
H₃N⁺-CH₂-COOH
pH = 6.0(中性環境)
中性のpHでは、アミノ酸は双性イオンの状態になります。この状態では、アミノ基はプロトンを受け取って -NH₃⁺ となり、カルボキシ基はプロトンを失い -COO⁻ となります。したがって、化学式は次のようになります:
H₃N⁺-CH₂-COO⁻
pH = 11.0(塩基性環境)
塩基性環境では、カルボキシ基はプロトンを完全に失って -COO⁻ となり、アミノ基もプロトンを失って中性の -NH₂ となります。したがって、化学式は次のようになります:
H₂N-CH₂-COO⁻
選択肢の検討
各pH環境におけるアミノ酸の形態を考慮すると、次の組み合わせが正しいことが分かります。
pH = 1.0 の水溶液: H₃N⁺-CH₂-COOH
pH = 6.0 の水溶液: H₃N⁺-CH₂-COO⁻
pH = 11.0 の水溶液: H₂N-CH₂-COO⁻
これに該当するのは、選択肢 ア です。
正解
ア.
ポイントまとめ
pHの影響: アミノ酸はpHによってアミノ基とカルボキシ基がプロトンを受け取ったり、放出したりするため、pHによって異なるイオン形態を取ります。
双性イオン: pHが中性(pH 6.0)のとき、アミノ酸は正と負の電荷を持つ双性イオンの形態になります。
酸性と塩基性環境の変化: 酸性の環境ではアミノ基が正に帯電し、塩基性環境ではカルボキシ基が負に帯電し、アミノ基は中性のままです。
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