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【スターウォーズより早く出ます】アクションとれとれ3種盛りセット「宇宙からのメッセージ(1978)」


 非常に大雑把で乱暴な分類をすると、スターウォーズのアクションシーンはだいたい3種類に分けられる。

①チャンバラ(ライトセーバーで斬り合う)
②ドンパチ(光線銃とかで撃ち合う)
③ブンドド(宇宙船とかのすごいメカが戦う)

 時々2つが混じり合う。たとえば①と②が混じって「クローンの攻撃」のジェダイvsバトルドロイド戦になったり、②と③が「帝国の逆襲」でホスの戦いになったりする。①と③は……あんまりやんないね。ルークがAT-ATの腹の中に爆弾放り込んだり、レイがカイロ・レンのTIEファイター(TIEウィスパーっていうの?)とタイマン張ってたけど、一瞬のことだったしね。

【追記】「マンダロリアン」シーズン1最終回のタイマンは食い応えがあって相当よかった。生身でメカとやり合うには、やはりジェットパックぐらいは必須なのかもしれない。

 まあともかく3種類あるのだが、①②③を一度にやる事はなかなかない。ガチで一度にやった「ジェダイの帰還」は凄かった。若干頭数が足りなくなってクマチャンの手を借りたりしたものの、全体としてはオリジナルトリロジーのシメにふさわしい満腹フルコースだった。

 本家に先駆けてそれをやったのが、映画「宇宙からのメッセージ」だ。

 もともと八犬伝をベースにした話で、善玉のメインキャラが8人もいるから頭数には困らない(むしろ何人か余ってるけど俺は気にしない)。しかもチャンバラ担当が千葉真一vs成田三樹夫で監督が深作欣二なのだから、これはもう「柳生一族の陰謀」のチャンバラと「仁義なき戦い」のドンパチを同時にやるようなものだ。そこに加えて、宇宙刑事や80'sスーパー戦隊に通じるハンドメイド特撮がブンドドする。

 それぞれのパートは泥臭く荒っぽいが、同時進行のテンポ感は圧倒的だ。6車線フリーウェイを颯爽とクルーズするピカピカのアメ車がスターウォーズだとすれば、「宇宙からのメッセージ」は畦道をスピード違反でぶっ飛ばす改造バイク。序盤からアクセル全開で、クライマックスでレッドゾーンに入り、あれよあれよという間にラストまで駆け抜け……そのまま帰ってこなかった。特にシリーズ化とかはせず、減価償却的スピンオフTVショウ「宇宙からのメッセージ 銀河大戦」が放送されたのみで、フォロワーとしての生を全うしたのだった。

 なにせアメリカでスターウォーズが大ヒットしてから制作が決まり、一年後の日本上陸より先に公開すべく作られた超突貫工事物件である。映像クオリティ差は如何ともしがたいうえ、キャラクター、ガジェット、音楽などの換骨奪胎が少々巧みすぎた。タイミング的には同じく便乗作でありながら、実質「海底軍艦」の宇宙版だった「惑星大戦争」と比べれば一目瞭然だ。

 結果醸し出される圧倒的コレジャナイ感。スカムまとめサイトに面白おかしくネタ扱いされてしまうのはまあ仕方ないとして、WOWOWで放送された時ですら「なんとも不思議な怪作」呼ばわりされる始末である。

 しかし特撮作品は時とともにヴィンテージ化し、技術的な至らなさを許しやすくなってゆくものだ。スターウォーズのスピンオフ映画やドラマが次々と公開され、もう「こんなパチモンじゃなくて本物のスターウォーズを出せ!」なんて言う必要のない今の世こそ、「スターウォーズに遠く及ばぬ国産宇宙SF映画の恥ずかしさ」みたいな当時の自意識をいったん脇に置いて、本作を素直に観られる時代であると言えよう。ていうか観ようぜ! 昭和の東映娯楽作品の旨味が、わずか105分の尺にみっちり詰まってるよ!

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