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黒単調整録(エルドレイン後期~テーロス還魂記初期)

スタンダードからオーコが去った際(前回)の記事を書いてから2か月以上が経過してしまいましたが、その後からテーロス還魂記がリリースされた現在までについてを記事にしました。
当初は一部有料化を考えておりましたが、自分自身も何百マッチと重ねている訳ではないため、構築やサイドボーディング等についても模索しているような状況です。もしご意見があればそれを取り入れやすくするように、という意図もあって全文無料化とした次第です。

1.エルドレイン後期

実を言うと、11月後半~12月にかけてはほとんど真面目にスタンダードに打ち込んでおりませんでした。他にもやりたいことが増え、その結果アリーナに触れる時間が減ってしまっておりました。1日4勝したら終わり、という程度でした。

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その時使用していたのは黒単サクリファイス。Twitch Rivalsで準々決勝まで勝ち進んでいたリストとほぼ同じものをBO1でのみ回していました。
真夜中の死神やアヤーラ下での猫かまどの強さを改めて認知し、もう一歩噛み合うパーツが来ればより引き締まったデッキになるなという印象でした。
ちなみにBO1では赤単が比較的多く、何度もマッチングしましたが負けたのは数回。猫かまど+アヤーラが揃えば《エンバレスの宝剣》が無い限り突破されることはそうそうありませんでした。

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その後、もうちょっと真面目にスタンダードをやろうと思い立った際に騎士ベースの黒単アグロも少し回しました。飛行戦力+《恋に落ちた剣士》によって地上が固まっても上からライフを削りきることが出来ます。
しかしジェスカイファイアーズ、ジャンドサクリファイス相手は《波乱の悪魔》《轟音のクラリオン》といったタフネスの低い生物を複数処理する手段を持ち合わせているため思うように面展開が出来ず、これらとのマッチアップに関しては《恋に落ちた剣士》の価値は落ちてしまいます。

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そこで、騎士シナジーを減らして単体で突破力のある《石とぐろの海蛇》《破滅を囁くもの》を搭載した形に。メインはややアグロ寄り、サイド後は妨害を増強してミッドレンジとして立ち回ります。
《穢れ沼の騎士》は騎士ベースの際に使用した際に感触は悪くなく、ラクドスナイトやグルールといった比較的サイズの大きい生物を有するアグロ相手にブロッカーとして有能でした。《金のガチョウ》等にも止められることはまず無いため絢爛達成にも貢献するため引き続きの採用。
《石とぐろの海蛇》は先述した軽量生物へのアンチカードを乗り越えられ、トランプルも相まって猫かまどに比較的強いです。
《破滅を囁くもの》はこのマナ域に於いて空中戦最強クラスで、《騒乱の落とし子》が互いに睨み合っている状態で一方的に突破することもできます。自分の《騒乱の落とし子》とも相性が良く、諜報を繰り返してライフを11以下にすることでアップキープ時のパンプアップも狙えます。

サイドの《殺害》は《オブ・ニクシリスの残虐》《壮大な破滅》が他に候補でしたが、主に対ラクドスナイトに於いて《朽ちゆくレギサウルス》を1枚で処理でき、相手の《漆黒軍の騎士》も中盤以降は脅威となり得るためこれも狙える除去札として採用しました。《波乱の悪魔》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》に対する追加の除去としても有能です。

アリーナMCQも控えており、このリストが最も手応えを感じていたためこれで参加。

青単〇〇
ジェスカイファイアーズ〇〇
ジェスカイファイアーズ××
ジェスカイファイアーズ×〇〇
シミックフラッシュ〇〇
ジャンドサクリファイス×〇〇
ラクドスナイト×〇〇
ジャンドサクリファイス〇〇
ジェスカイファイアーズ××

結果7-2。GPなら初日抜けですがアリーナMCQは10勝しないと権利付与ならずのため残念ながら敗退。この時流行りのデッキ達には一通りマッチングし、総合的に善戦出来た方だと思いました。

2.テーロス還魂記リリース

アリーナMCQが終わってから束の間、テーロス還魂記が先行で解禁されました。収録カードが次々公開されてゆく中、(個人的に)テーロスの顔とも呼べるカードの再録が発表されました。

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《アスフォデルの灰色商人》再録!
エルドレインの王権で各色にトリプルシンボル生物やハイブリッド4マナ生物のサイクルが収録されていたことから予想されていた方も多かったと思いますが、信心はテーロスを代表するメカニズムの一つですし再録か近い別バージョンが来ると思っていました。

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再録カードだけでなく新規カードも粒ぞろいで、特に《悪夢の番人》は優秀な中量級デーモンとあって是非使用したい一枚でした。《苦悶の悔恨》は待望の2マナ万能ハンデスと黒のデッキが一段階強化されることは間違いないと感じておりました。

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また、市川プロがアーリーイベントにて使用していた黒単信心には《悲哀の徘徊者》+《ボーラスの城塞》ギミックが仕込まれておりました。《悲哀の徘徊者》は《悪夢の番人》ともシナジーを形成するため、この方向性でまずは試してみることに。

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何度か回した結果このようなリストへ。
元のリストで採用されていた《どぶ骨》《忘れられた神々の僧侶》も最初試しましたが、それぞれがさほど有用でない場面やマッチアップも多々ありました。《泥棒ネズミ》も追加してハンデス生物を水増しし、ラクドスナイト等のアグロ相手に後手1ターン目から打てる《見栄え損ない》を採用。《悪夢の番人》+サクり台によってドロー後ハンデスを狙いやすく、ミッドレンジやコントロール相手なら手応えは悪くない印象でした。

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また試したデッキは黒単信心だけではありません。黒いカード以外にも注目していたものとして《影槍》がありました。設置から起動までもそこまで重くなく、エルドレイン後期で使用していた黒単で試してみたところ《漆黒軍の騎士》に装備することで接死+トランプルによって必ず4点抜けるといったシナジーもあり、《騒乱の落とし子》に装備すればアップキープのダメージで逆にライフが増えるため総合的に見て相性は良い方でした。
但し《自然の怒りのタイタン、ウーロ》から《茨の騎兵》が着地するとそれ以上にライフを詰め切ることが出来ず押し負けてしまうため、当面は黒単信心を調整することに。

3.黒単信心の調整

黒単信心は使用者数もそれなりにいるため、対戦を重ねてゆくとミラーマッチが発生します。相対した構築では猫かまどを織り込んだものも何度か見かけました。軸としては冒頭で触れた黒単サクリファイスに共通する部分があり、《アスフォデルの灰色商人》で最後のひと押しも狙えるため猫かまど入りの黒単信心も触ってみることに。

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そうして作成したのがこちら。各種ドレイン要素を駆使してライフを削りきれるため、一度もコンバットすることなく勝利することも珍しくありません。
対アグロに於いては《オルゾフの処罰者》が壁となりつつ生物2体分換算となるため《ロークスワインの元首、アヤーラ》とシナジーもあり、決して悪くない選択肢だと感じました。
ミラーマッチを意識した際に《虚空の力線》が信心を稼ぎつつ相手だけ一方的に効果があるため有力な選択肢として浮かんできました。

その後アグロ系統とはあまりマッチングしなくなりシミックをベースとしたランプ、青白コントロール、ジェスカイファイアーズを目にする機会が増加。いずれのマッチアップに於いても《オルゾフの処罰者》+αを《苦悶の悔恨》と差し替えており、それならいっそ最初からメインへ組み込んでしまって問題ないのでは?と思い立ち構成を変更。

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現在のリストがこちら。《苦悶の悔恨》をメイン4とし、空いた枠に除去やPWを追加しました。メインからハンデスを積んでいるため、先述した比較的重めのデッキとのマッチアップはある程度改善されるようになりました。
一方《魔女のかまど》等で生贄の火種となる生物が減ってしまい、生物でないことが仇になってしまう場面もありますが、必要なマッチアップではそういったリスクを差し引いても打ちたいはずなので、そこは目を瞑ることに。

《悲哀の徘徊者》が不在なのはそれほど強みが活かせないと判断したためです。引き連れる0/1のヤギトークンは自身でサクる以外の使い道も無く、あまり墓地が肥えるわけでもないため脱出も狙いづらいです。《ボーラスの城塞》があれば有効活用できますが、如何せん重い上にライフを詰められると機能しなくなるのが気になり、このパッケージを《真夜中の死神》等に割いております。

メインボードは似通った構築となりがちですので、サイドボードについて。

・《害悪な掌握》

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対シミックランプに於いて、焦点となるのはやはり《世界を揺るがす者、ニッサ》。猫かまどだけでは《ハイドロイド混成体》も止められません。《残忍な騎士》のみでは枚数が足りないため、追加の除去として採用。

・《軍団の最期》

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《見栄え損ない》との選択枠。ラクドスナイトや赤単のようなアグロに対してサイドイン。一概にどちらが良いとは言い切れませんが、タフネス3以上となった《遁走する蒸気族》や《漆黒軍の騎士》なんかも一網打尽にできるのはこのカードならではの強み。手札も見れるため、生物を立てるか除去を構えるかを判断しやすくなります。

・《オブ・ニクシリスの残虐》

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《壮大な破滅》との選択枠。こちらを優先した理由としては、上記アグロ相手に追加の除去としてインした際に2マナ以下の生物を処理できるため。またこちらはインスタントであるため《エンバレスの宝剣》着地&装備スタックで打てるため不意の一撃をかわすことが可能です。
ジャンドサクリファイス相手では《波乱の悪魔》への処理札として運用。

・《はぐれ影魔導士、ダブリエル》

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対青白コントロールへのサイド枠その1。カウンター以外であれば1:2交換以上を望める1枚。相手が除去を大量に抱え込んでいる場合に効果的。

・《虚空の力線》

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《真夜中の死神》の死亡誘発も阻止できるため、先述したようにミラーマッチで強いです。ジャンドサクリファイス相手にもインします。
一時期4枚採用していましたが、スタンダードの場合他のフォーマットと異なり必ず初手で置かねばならない相手はそういません。4ターン目にベタ置きしても十分効力を発揮します。2枚目以降は引きたくないため枚数を抑えております。

勘違いされやすいですが、以下の点には注意。
・力線が初手より後に置かれた場合、元々墓地にあるカードは追放されません。
・力線下でもトークンであれば一旦墓地に置かれる(死亡誘発する)。置換効果で追放されるのは「カード」のみです。

→両方とも効力を発揮するのは《安らかなる眠り》。

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・《煤の儀式》

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3マナ域の生物がそれなりにいるはずなのに何故?と思われるかもしれませんが、横並びされると処理しきれないため白単や赤単相手への全体除去枠としてサイドインします。

・《戦慄衆の将軍、リリアナ》

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対青白コントロール用サイドその2。《夢さらい》への回答となります。
それだけなら他の布告系除去でも良いかもしれませんが、《メレティス誕生》から生み出される0/4壁がいるため2体生贄であるこのカードの方が確実性が高いです。
同じ6マナ域には《ボーラスの城塞》《戦慄衆の指揮》もありますが、《自然への回帰》《虚空の力線》等でついでにメタられてしまうこともあるため、それらに引っかからず上述の理由より《戦慄衆の将軍、リリアナ》の方が優れていると考えております。

4.サイドボーディング

過去の記事ではリストをアップするところまでで終わらせておりましたが、今回は更に掘り下げてサイドボーディング等についても触れてゆきたいと思います。
冒頭でも述べたように、もし「サイドボードにこういうカードも欲しい」「このマッチアップではこういうサイドボーディングの方が良いのでは?」といったご意見がありましたら遠慮なくコメントいただければ幸いです。

・赤単/ラクドスナイト
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OUT

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除去を増量して頭数を並べさせないように処理してゆきます。
2点火力に弱いため《真夜中の死神》を抜き、なるべく盤面に影響のあるカードを優先するため《苦悶の悔恨》を減量します。

・ランプ

IN

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OUT

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今更言及するまでもないかもしれませんが、《世界を揺るがす者、ニッサ》は早急に処理する必要があります。猫かまどで止めきれない生物も除去したいところですが、
メインボードのカードはどれも極力抜きたくないものばかりですが、猫かまど以外ではチャンプブロックでしか誘発のタイミングが無いため《真夜中の死神》が一番優先度が下がります。

・ミラーマッチ

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意外に思うかもしれませんが、ミラーマッチでは猫かまどパッケージを大きく減量します。これは相手側も《死より選ばれしティマレット》《虚空の力線》を有するため、サイド後は特に成立しにくくなるからです。ミラーマッチで鍵を握るのは《ロークスワインの元首、アヤーラ》《悪夢の番人》になるため、それらに対する除去手段も増強。また、追加のフィニッシャーとして《戦慄衆の将軍、リリアナ》もインします。

・ジェスカイファイアーズ

IN

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OUT

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相手側の除去が濃いため、《ロークスワインの元首、アヤーラ》はあまり定着しません。《真夜中の死神》は《砕骨の巨人》に焼かれてしまいますが、《轟音のクラリオン》されてもアド損しないためこちらを優先して残します。
除去キープされることが多いため、《はぐれ影魔導士、ダブリエル》が有効に働くことも少なくありません。(但しこちらも《砕骨の巨人》に弱い)

・ジャンドサクリファイス

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《波乱の悪魔》に弱く、《パンくずの道標》で引っ張ってこられた適当なカードを捨てられるだけとなることが多かったため《ヤロクの沼潜み》が最も優先度が低いと考えております。《虚空の力線》で猫かまどを妨害し、《波乱の悪魔》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を除去することを心掛けます。

・青白コントロール

IN

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OUT

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盤面に出てくるカードで《迅速な終わり》で処理しなければならないものがほぼありません。
サイドボードの項でも触れたように、PW2種を追加して《夢さらい》への処理やリソース面で負荷をかけてゆきます。

サイドイン/アウトは以上になります。
追加してほしいアーキタイプへのインアウト等あればこちらもコメントいただければと思います。

5.《悪夢の番人》絡みの豆知識

最後に、黒単信心の中核を担う《悪夢の番人》絡みの豆知識をご紹介します。(ご存じのものも多いかと思います)

・5キルムーブ

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黒単信心を代表する動き。《ロークスワインの元首、アヤーラ》《悪夢の番人》《アスフォデルの灰色商人》とマナカーブ順にプレイするだけですが、ドレインだけで18点分稼げます。残り2点はいずれかの戦闘ダメージや2マナ以下で更なる信心が稼げていれば足りますね。

・インスタントタイミングでのハンデス

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こちらも有名な組み合わせ。サクり台+《ヤロクの沼潜み》(または《泥棒ネズミ》)があれば、相手のドロー後にハンデス生物を生贄にしてトークン生成→今引いたカードを捨てさせることが可能です。アリーナ上でこの操作をする場合、フルコントロールモードにすることで出来ます。

・《残忍な騎士》死亡時はトークン生成可能

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《悪夢の番人》のトークン生成と、《残忍な騎士》のボトムに行く能力はいずれも死亡誘発ですので、好きな順でスタックに積めます。
《悪夢の番人》から先に解決するようスタックに積むことで、《残忍な騎士》トークンを生成できます。(逆に積むとボトムに送られてしまう)

・《悪夢の番人》+《ロークスワインの元首、アヤーラ》×2

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レジェンダリールールによって墓地に置かれる際もトークン生成することが可能です。一方を墓地へ送りトークン化、最初に着地した際の2体誘発で2点ドレイン+トークン生成時の誘発で更に2点ドレイン。非トークンのもう一方も同様へ墓地へ送り、トークン化して2点ドレインとすることで最大で6点ドレインを狙えます。
アヤーラを4枚投入している理由の一つはこの動きが出来るためです。

・《死より選ばれしティマレット》トークン化した場合

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先日アリーナで初めて知ったのですが、ティマレットをトークン化した場合は黒の信心に関わらず1/1のままになります。
これはティマレットが持つ特性定義能力をコピーしないためです。
詳細はMTG Wikiにも記載がなされております。(リンク

黒単信心を使う側でなくとも相手にした場合こういった動きがあることを覚えていただければどこかでお役に立てるかもしれません。

長文ですが、以上で今回の記事は終わりとなります。
スタンダードは兎に角メタゲームが変動しやすいため、その都度構築の細部やサイドボーディング等は対応する必要があります。ですがデッキの根幹は強いため、黒単信心は今後も一定の使用率を誇ると思っております。
また記事の中でも少し触れましたが、《影槍》には可能性を感じているため、信心以外の黒単についても引き続き試してみたいと思います。

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