映画を観た記録118 2024年7月7日    溝口健二『赤線地帯』

Amazon Prime Videoで溝口健二『赤線地帯』を観る。

1950年代、今なお、赤線が存在している頃の吉原で働く女性たちの生態をどぎつく描く。最もどぎつい女性が若尾文子演じるやすみである。やすみはニコニコ堂という名の布団屋を騙し、結婚を匂わせつつ、しかし、結婚はせず、30万だけせしめて、追い出してしまい、自分が店の主人に収まってしまうのである。

そして、やすみは店のナンバーワンなのか、稼ぎはよいので、周りの女性から無心されてしまい、ニコニコ堂の主人になっても金貸しを店の女性たちにセールスする。

どぎついし、エグイ。

本作品が傑作であるのは、この類のテーマの映画では、安きに流れ、ベッドシーンが往々にして挟まれるが、本作品にはベッドシーンはないのである。ときには、華麗に吉原を謳いあげるような駄作が多いが、本作品は、冷徹にリアルに、女性たちの生態を描く。亭主が病気持ち、実家は資産家だが、親に呆れて家出してきたもの、奥さんを夢見ているもの、様々な女性の現実との格闘を描く。

売春防止法が制定されるかどうかの瀬戸際の中で、吉原で働く女性たちは果敢に生きる。

売春防止法は女性のための法律ではない、と進藤栄太郎演じる店の主人は力説し、売春防止法が制定され、仕事ができなくなったらどうするのだ。ホントの味方は誰なのだ?と欲まみれの資本家のごとく説教する。

人間のどぎつい生態を嫌らしい迄に描く。

溝口健二の遺作である。

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