映画を観た記録49 2024年2月23日    ジョン・カサヴェテス『こわれゆく女』

Amazon Prime Videoでジョン・カサヴェテス『こわれゆく女』を観る。
私は、本作品こそ、20世紀最大の、最高の映画であると断言してもよい。
果たして、ジーナ・ローランズを演じる、妻であるメイベルは精神に変調を来したのか。それは狂言ではなかったのか、という疑いすら抱くが、精神のバランスを欠いていたのは確かである。ピーター・フォーク演じる夫でもあるニックは、現場監督であり、徹夜工事のため、ニックは、メイベルとの約束である二人きりで過ごすという夜を果たせないでいた。そのために子どもたちは、母親に子どもを預けた。
二人との夜の時間を過ごせなかった日以降、メイベルは、精神の変調が激しくなり、入院までする。ニックはとみに怒りっぽくなる。ニックはいささか支配的でもあるが常識人すぎるきらいがある。
入院後は、メイベルを迎えてのパーティーだが、ニックは招き過ぎたのか、母親から注意される。そして帰ってもらい、家族だけのパーティーになる。メイベルは入院中、朝は注射をうたれて、トイレへ行き、そしてその後、頭に電流ショックを流し込むということをされたことを話す。そのことを主治医は聞いている。
パーティーが終わり、メイベルは、手首を切ったり、ソファで白鳥の歌を踊ったりする。ニックは、どうしてよいのか、わからないのか、平手打ちをしてしまう。
ニックとメイベルは家の中を追いかけっこをする。
子どもたち3人は、ママが好きだよという。ちなみに、女の子が1人いるが、やけに太っている。それはともかくとして。子どもたちは言う「分かんないけど、愛してる。」
この言葉は、偉大過ぎる。
「分かんないけど、愛してる。」
凄い言葉だ。
メイベルを演じるジーナ・ローランズ、ニックを演じるピーター・フォークの演技は、異常なまでにリアルというのか、とてつもないものがある。特にジーナ・ローランズのメイベルを演じる、精神に変調を来した人間を演じる、その仕草、表情、など、映画俳優でもすごい俳優はいるということを感じさせる。映画俳優は、概ね、演出と編集で「演技できてしまう」のだ。話はそれるが『ニックス・ムーヴィー』のニコラス・レイは映画俳優は無能でもできる、と述べていた。しかし、ジーナ・ローランズとピーター・フォークは断じて違う。凄いとしかいいようがない。
映画は俳優のドキュメンタリーとは大島渚が語った言葉だが、大島渚の映画にそういうことはないが、ジョン・カサヴェテスの映画は、確実に、、明瞭に、俳優のドキュメンタリーである。それは脇役も、子役もだ。
そして、ボー・ハウエルの音楽は素晴らしい。
そして、オープニング・タイトルやクレジット・タイトルの青地の文字。かっこいいとしか言いようがない。
20世紀最高峰の映画と断言してよい。この映画は映画の概念を超えた。

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