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ライフケア分野におけるイノベーション、そして社会実装への課題を考える

ライフケア(健康・くらし・介護)産業の新事業創出あるいはイノベーションにおいて、複数の課題を見つけ出しました。これらの課題は、実証試験の実施、それに続く事業化に至るプロセスを阻害し、この分野の成長を妨げていると思われます。

第一に、実証試験を行うための適切な場所、すなわち「フィールド」が見つけられず、関係者の協力も得られないという問題があります。また場合によっては、協力者から高額な費用を要求されることがあります。

第二に、実証試験の設計について混乱していることがあります。試験の組み立て方がわからないため、結果が得られずに独力で試験を行ってしまうことがあります。この結果、プロジェクトは停滞し、重要な進歩が遅れることになります。

第三に、事業化に繋がる検証・評価の方法について理解できないという問題があります。これにより、可能な製品やサービスの商業化の道筋が見えない場合があります。

第四に、フィールド実証後、事業化までの道筋や方法が明確でないという問題があります。具体的な事業化の戦略やプロセスが明らかでないため、成果を商業化する方法がわからないという状況が生じます。

第五に、過去に実証試験を実施した経験がありますが、それに対するコストが見合わない結果となってしまったという課題があります。これは、コスト効率の観点から、実証試験の有用性を問う声があることを意味します。

また、医薬品や医療機器のような治験ではないため、実証試験が必要と認識されていないという課題も存在します。これは、新製品や新技術に対する受け入れ体制が未熟であることを示しています。

さらに、組織内に実証試験に詳しい人材がいない、という問題があります。これは組織内での知識と経験の不足を示し、これによりプロジェクト全体が遅延したり、全く立ち上がらない可能性があります。この状況は、上層部から市場投入を急ぐ圧力が加わるとさらに困難になります。

また、データの分析が困難な状況もあります。実証試験の結果や情報が膨大で、その全てを適切に理解し分析することが難しい場合があります。その結果、有益な情報を見逃す可能性があり、事業化の道筋が見えなくなる可能性があります。

さらに、ビジネスモデルの構築が難しいという課題もあります。製品やサービスの品質は良好であるにもかかわらず、収益モデルを適切に作り上げることができない場合があります。これは、特に国や自治体などの競争的な資金獲得が主な収益源になっている場合に顕著です。

加えて、自社単独では事業化が困難で、どの企業と連携すれば良いのかが分からないという問題もあります。信頼できるパートナー企業を見つけることは容易ではなく、悪質な企業に注意しながら進めなければならない状況があります。

そして最後に、連携可能なネットワークを持っていないという課題があります。これにより、大企業との連携を望むものの、具体的な方法が見つからない場合があります。また、企画が盗まれるリスクも心配な事情も存在します。

以上のような複雑な課題を解決するためには、実証試験の支援だけでなく、事業化に向けた全面的な支援、販路開拓や事業提携を加速するための総合的なプラットフォームの開発が必要です。

しかし、単独でこのようなプラットフォームを作り上げることは困難で、多様な関係者との連携ネットワークを構築し、適切な組織体制を整備することが重要となります。施設や資金、機器、システム等も重要な要素ではありますが、最も根底にある基盤として重要なのは、「人」そしてその人々とのつながり方です。

人間の知識と技能、そして人間同士の協力関係が、これらの課題を克服するための最も強力な道具であると考えています。つまり、ライフケア(健康・くらし・介護)分野での実証試験と事業化を成功させるためには、保有するネットワークを拡大し、その中に存在する人々の知識と能力を最大限に活用することが必要です。

具体的には、連携可能なパートナーを見つけ出し、共に新たなライフケア(健康・くらし・介護)の事業化に向けて取り組むことです。また、それぞれのステークホルダーから最適な知識とリソースを引き出すことで、全体のプロセスを進めていくことも重要です。

これらの課題に対応するための組織体制の構築や、実証試験と事業化に向けた具体的な戦略を共に策定し、実行に移すことが求められます。そして、その全ての過程において、個々の人間、その能力、そして人々とのつながり方に最大限の注目を向けるべきです。

これらの取り組みを通じて、ライフケア(健康・くらし・介護)分野の実証試験とその後の事業化(社会実装)を成功へと導くための新たな道筋が開かれると確信しています。

ライフケア(健康・くらし・介護)分野における社会実装支援基盤の構築検討


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