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片手だけで演奏できるサックス

もし、楽器演奏が生きがいのあなたが、何らかの理由で片手が不自由になったら、単に楽器の演奏ができなくなってしまったというだけでなく、自分というアイデンティティが崩れ去ってしまうような大きな喪失感を覚えるだろう。

そんな経験をしたサックスプレイヤーのお話。まずは、演奏を聴いてもらいたい。

何の違和感もなくふつうにサックス演奏している動画にみえるけれど、よく見ると片手だけで演奏しているのがわかると思う。このプレイヤーはネブラスカ大学カーニー校で吹奏楽や音楽史をおしえるデビッド・ナブさん。ヤマハのアーティストでもある。

彼は2000年に脳出血を起こして左半身麻痺となってしまう。この時すでに大学でサックスをおしえ、ミュージシャンとして活躍していた。音楽への思いは今までと同じようにあるのにも関わらず、もはや自分がミュージシャンではなくなってしまったことで失意のどん底に落ちてしまったそうだ。そんな時にワンハンド用のサックスをStelling Brass and Wind社とともに開発し、そのおかげで、ワンハンドでのサックス演奏活動や大学でサックスを教える仕事にも再び戻ることができた。

ナブさんはこのサックスを”魔法の剣”と言っている。それだけ、この楽器がナブさんが再び”自分”を取り戻す戦いに勝利するための大切なツールだったのがわかる。ネブラスカ大学カーニー校ではワンハンドの木管楽器プログラムがある。なんて進んだ取り組みなんだろうと驚いた。

両手で不自由なく楽器演奏していた人が、何らかの理由で身体的に楽器演奏ができなくなってしまうことは意外と多くあるのではないかと思う。その多くは楽器演奏を諦めてしまうのかもしれないが、このような楽器が日本でも一般的になって、だれもが音楽を続けられる世の中になってほしいと思う。

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