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AJAX-JUVENTUS 1stレグを振り返る

【試合概要】

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【アヤックスの攻撃戦術】

アヤックスの攻撃戦術における特徴は主に2つある。

・安定したビルドアップ

アヤックスは、デ・ヨングがDFラインに落ちて疑似3バック+シェーネというシステムや、ボックスの形をとってボールを回した。
(画像では誤字でシェーネがシェーンと表記されています)

この疑似3バックはユーべがアトレティコ戦で導入したものと似ているが、ユベントスのそれはジャンが右CBになって構成されるものであり、デ・ヨングのように比較的自由に動いたりはしなかった。
(アトレティコ戦の分析noteもあるので詳しくはこちらをご覧ください。) 

このシステムの利点は両SBが攻撃的な位置をとることができる点にある。


・同サイド攻撃

アヤックスはサイド攻撃時に、3トップがボールサイドに大幅に寄り、サイドチェンジを多用せずにしつこく同サイドを攻め続けた。

アヤックスが強引にサイドで数的有利を生み出しているように見えるが、3トップの流動的かつやや窮屈とも思えるポジショニングは、3人がお互いの邪魔になることなくプレーできる絶妙な距離感を保てており、この状態からボールを奪取するのは至難の業である。

ただ、このシステムはユベントスの守備組織を必然的に固めてしまう。
アヤックスの選手が密集すればするほど、ユベントスの選手も同じく密集する。
基本的に、この攻撃で得点するには、同サイドで固く整ったユベントスの守備陣を完全に崩しきるか、ユベントスの守備陣が寄ったところでファーにクロスを放り込むくらいしかない。


【アヤックスの守備戦術】

アヤックスの守備戦術における特徴は主に2つある。

・ユベントスのビルドアップを封じ込む

動画を見てもらえれば分かると思うが、アヤックスはユベントスのビルドアップに対して非常に効果的にプレスできている。

ユベントスのDF(特にCB)がボールホルダーになったときにはじまる。
デ・ベークがピャニッチにマンマークで対応し、ツィエクやネレスがSBへのパスコースを切りつつ寄せる。
デ・ヨング、シェーネがそれぞれベンタンクール、マテュイディにつき、ロングボール以外の選択肢を徹底的に減らす。
ロングボールを蹴らせれば、サイドではフェルトマン、タグリアフィコなど、中央ではブリント、デ・リフトなどが対応する。

つまり、アヤックスはピャニッチにゲームを支配されるのを嫌って、アグレッシブなマンツーマン戦術を用いた。

画像は、アトレティコ戦2ndレグとアヤックス戦1stレグにおけるピャニッチのボールタッチをまとめたもの。
2つの試合では支配率や総タッチ数が異なるものの、アヤックス戦でピャニッチを中心とするユベントスのビルドアップがうまく機能しなかったことを示すには十分だ。


・ネガトラでの優位

動画を見れば明らかだが、この試合では終始アヤックスのネガトラが脅威的だった。

ボールをロストした瞬間から、ツィエク、デ・ベーク、ネレス、シェーネ、デ・ヨング、タグリアフィコ、フェルトマンらがすぐに囲い込み、攻撃の芽を摘み取る(ネガトラゲーゲン)。

また、同サイド攻撃で選手を密集させることで、サイドでロストしても即座に奇襲的にプレスをかけられる。

画像はユベントスのボールロストポイントをまとめたもの。


【ユベントスの攻撃戦術】

いつも通りの4-3-3で挑んだユベントスは、特別な対策はしなかった(見せなかった?)。

ビルドアップでの段階的な攻撃は無理だと判断すれば、ロングボールでの打開に切り替える。
ただデ・リフトの壁は分厚く、マンジュキッチやロナウドは簡単にはボールを収められなかった。

また、前述したアヤックスによるビルドアップ封じによって、ユベントスはロングボールを”蹴らされた”かたちになるので、精度も高くない。

前半終了間際に先制したせいか、HTでの修正も特にみられなかった。

しかし、特に後半はロングボールの標準をマンジュキッチひとりに絞るも、うまく収められず有効な攻撃ができずにいたユベントスは、60分にそのマンジュキッチに代えてコスタを投入した。

コスタ投入後の布陣は以下の通り。

(ボヌッチとルガーニの位置が逆です)

前半からトップ下兼右ウイングのような仕事だったベルナルデスキは正式にトップ下となり、コスタの位置に合わせてその逆のサイドミットフィルダーも兼任した。彼の主なプレーエリアは画像内黒円。

その後、65分くらいからマテュイディの運動量が露骨に落ちてきた。
71分過ぎにマテュイディが離脱して、75分にディバラが投入された後の布陣は以下の通り。

(ボヌッチとルガーニの位置が逆です)

ディバラをトップ下に置く4-4-1-1。

これ以降、ユベントスはコスタのドリブル突破でアヤックスのゴールに迫ることができた。
ハイプレスに対してもディバラが落ちて受けるなどして対処した。


【ユベントスの守備戦術】

前述したように、ユベントスの守備組織はアヤックスの攻撃戦術によって自陣で固く整理された構造だった。

後半開始早々にカンセロのもったいないミスで失点してしまうものの、ユベントスはHTでひとつ修正を加えた。同数プレスの導入だ。

アヤックスのビルドアップ時に、マテュイディやベンタンクールが相手のポジショニングに合わせて押し上げをはかり、マンジュキッチとロナウドがそれぞれCBに圧をかける。

ただ、これも効果的だったとは言いにくい。
確かに押し上げてプレッシャーを与えることはできていたが、アヤックスが流動的だったこと、この対策が試合前ではなくHTで決断されたこともあって、ユベントスの選手は誰が誰にプレスするかなどが明確に決まっておらず、アヤックスにかいくぐられることが多かった。


【得点シーンの解説 ~ユベントス~】

ユベントスの得点は前半終了間際の45分に生まれた。
上の動画で、得点シーンとその類似シーン(前半36分)を挙げた。

①前半36分の類似シーンについて

この一連の流れは、ユベントスのビルドアップ時に降りてきたベンタンクールにボールが渡って始まる。

【アヤックスの守備戦術】の、アヤックスのビルドアップ封じでも触れたように、アヤックスはデ・ヨングにベンタンクールのマークをさせた。

このシーンでベンタンクールにボールが渡った時もデ・ヨングがプレスをかけている。
ただ、これでユベントスはデ・ヨングをつり出すことに成功する。

デ・ヨングとマテュイディにマンマークするシェーネが中央付近からいなくなったことで黒円のスペースがうまれ、ロナウドが降りてきてここを使う。

ロナウドが降りて組み立てに参加したことで今度はブリントがつり出される。

ロナウドがサイドに展開したあと、マークしていたブリントはとりあえず最終ラインに戻る。
ここに、ロナウドとアヤックスDFラインにギャップ(黒円)が生じる。

さて、この流れを踏まえたうえで ②得点シーン を見てほしい。

自陣でスローインを受けたベンタンクールにデ・ヨングが食いつく。

ベンタンクールがデ・ヨングとシェーネを引き付けて、降りてきたロナウドに出す。

ブリントはロナウドに完全に引き出され、アヤックスのDFラインの均衡が崩れる。

ロナウドのスペースにしっかり走り込むランニングやカンセロの高精度クロスも素晴らしいが、スペースができるまでの流れも美しかった。


【得点シーン解説 ~アヤックス~】

カンセロがやらかした。
ルガーニはシュート時にもう少し詰めてほしかった。


【この試合の収穫 ~アヤックス~】

守備面において、ボール支配率61%、ユベントスの枠内シュート数1本、などのデータは彼らに自信を与えるには十分だろう。

スタッツの他にも、アヤックスの収穫は主に2つある。

・ビルドアップ封じの有用性の証明

前述したように、アヤックスの高いボールポゼッション率は、アヤックスがユベントスの思うようにビルドアップさせなかったのが大きい。

一般的に、試合の主導権を握りゲームをコントロールできるのは、よりボールを保持できたチームである。

若くアグレッシブで運動量が豊富なうえ、選手たちが戦術的互換性を持ちながら展開する連動的なプレスは、ユベントスが何も対策できなければ2ndレグでも非常に効果的にはたらくだろう。

・ハーフスペースの攻略

アヤックスは、タディッチの0トップ戦術から得点できなかったものの、この戦術自体は効果的だった。

動画はアヤックスの惜しかった攻撃シーン。

ルガーニにデ・ベークをあててサイドにつり出しルガーニとボヌッチの距離を広げさせる。
その空いた2CB間にツィエクやネレスを送り込めば突破できそう。

このハーフスペース付近を攻略できれば得点を量産することも可能か。



【この試合の収穫 ~ユベントス~】

試合の主導権を握ることができなかったユベントスの収穫は主に5つある。

・崩されての失点はなかった

1-1のドローに終わったが、ユベントスは自分たちの攻撃で相手を攻略し得点したのに対して、アヤックスはユベントスの(カンセロの)コントロールミスから生まれたチャンスをものにしたに過ぎない。

確かに、ミスから生まれたチャンスをしっかりものにするアヤックスは素晴らしいが、アヤックスは自分たちの狙った形からは得点できなかったし、ユベントスもそれをさせないよう防ぐことができたといえる。

第2戦はホームなので、より一層期待できる。

・得点パターンの発見

ユベントスの得点シーンの解説でも述べたように、あのゴールは偶然の重なりで生まれたものではない。

もしアヤックスが同じような戦術で挑んで来ようものなら、中盤の選手がデ・ヨングをつり出す→ロナウドがブリントを連れた状態で落ちてサイドに振る→アヤックスのDFラインにギャップが生じる→ロナウドが飛び込む これで得点できそう。

まったく同じ形とまで言わなくとも、デ・ヨングとシェーネをつり出せばビックチャンスとなりそうだ。

・アヤックスの守備戦術の弱点

アヤックスのゲーゲンプレス的なネガトラや複数で囲い込む守備組織は、確かに驚異的ではあるが、同時に一定のリスクも孕んでいる。

そのリスクとは簡単なことで、つまり複数人数でプレスしたのにそれをかわされたときである。
これをユベントス視点で考えるならば、複数プレスを掻い潜ることができれば得点にかなり近づける、ということだ。

上の動画のように、ダイレクトパスなどでテンポアップしてかわしてもよい。

はたまたこの動画のように、離れ業だがコスタのドリブル突破も期待できる(負傷情報もあるが…)。

・選手層とSBの質

ユベントスがアヤックスに明確に優れている点、それは選手層の厚さだ。
第1戦でもディバラやコスタを途中投入させたし、ジャン、キエッリーニなどを怪我で欠いてもある程度補える選手層はアヤックスにはない。

また、確かにアヤックスもトップレベルの選手がたくさん在籍しているが、そのなかではSBの質がやや見劣りする点も気になる。
さらに第2戦ではタグリアフィコが出場停止なので、おそらくブリントがLSBを担当、CBにはデ・リフトとマガランが担当するだろう。

加えて、フェルトマンやマズラウィは守備が得意な選手ではないので、ここもねらい目だ。

・ターンオーバー

両チームとも第1戦と第2戦の間にリーグ戦があったが、リーグ優勝がほとんど決定しているユベントスは第2戦のために主力温存でリスク管理に尽力した。
(おかげでSPALに負けたしいろいろ負傷者抱えてるのは内緒)

一方、アヤックスはリーグ戦もほとんど主力選手を起用して温存はしなかった。
この試合でデ・ヨングが負傷した情報もある。

アトレティコ戦のnoteにも書いたが、ユベントスのリーグ独走状態はCLにとても有利に働く。

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