「およしちゃん」再燃?

地域やイベント、商品などのPRにアニメ絵が使われる例が多くなっているが、特に問題のなさそうな絵柄であるのに「過度に性的である」とか「女性への性的搾取を助長する」などの批判にさらされることも多い。
そういった批判に主催者側が屈し、しなくてもいい謝罪をしたり、ポスターを撤去するなどして、その手の活動がどんどん窮屈になっていく流れは非常に残念に思っている。

そんな中で、今度は「およしちゃん」というキャラが話題に上っているようだ。

岐阜県の郡上八幡城のイメージキャラとして提案されたものの、行政側の判断で公式キャラと認定されなかったという。
これについては「これのどこが性的なんだ?」「美少女イラストなら何でも噛み付くやつらがいる」などの声が上がっている。

ただ、このポスター、見る側として積極的に抗議しようとまでは思わないが、もしも私が行政側の担当者だったとしたら、やはり不採用にしたと思う。

■公認キャラ不採用の理由は?
ネットでは「まったく性的ではない」「美少女キャラなら何でも叩くのか?」などの声が上がっているが、元ツイートには理由として「性的」などの文言は見当たらない。
「ツイフェミ」などがしばしば「性的」という表現で美少女キャラに抗議を入れていることから、同様の事例と考えてしまったのだろう。

「およしちゃん」に関する行政側の公式コメントは見つからなかったが、件のツイートによると「郡上にふさわしくない」「害のあるキャラクター」と看做されて「有害指定」を受けたとのことだ。

理由について当事者から具体的な発信がないため、そこは推測するしかなさそうだ。

■「およしちゃん」のモデルは?
郡上八幡城に伝わる伝説の中に「およし物語」というものがある。
築城(サイトによっては「改築」)の際に人柱として生き埋めにされた少女の話だ。

「およしちゃん」のTwitterプロフィールにも「人柱歴約400年」とあることから、上記のおよしをモチーフとしているということだろう。

■PRキャラとしての扱いにくさ
観光地のイメージキャラとして郡上八幡城のPRをするとなると、人柱にされたことを、事前であれ事後であれ、「受け入れた」ということにしておかないといろいろと都合が悪いだろう。

しかし、歴史上の被害者を勝手に代弁し、「赦す」ということをしていいものだろうか?
ましてや、自身の死の元凶ともいえるもののPRに使うというのは、冒涜にはあたらないだろうか?

「過去のことをいつまでも恨みがましく言っていても仕方がない」という意見もあるだろう。
それはそうなのだが、事実は事実として伝えるべきではないだろうか?
史実がいろいろと脚色されて伝わるのはよくあることかもしれないが、これは許容範囲といえるのだろうか?

■文化財の保全
古い建築物などの有形文化財が大事なのはもちろんだが、各地に伝わる伝承などといった無形の文化財も大事にしていかなければならない。

「およし物語」では死後数十年(あるいは数百年?)にわたり、本丸の石段から彼女の泣き声が聞こえたという。
時代や場所によっては「生贄になるのは名誉なことで、人々は喜んでその身を捧げた」なんて話もきくが、ここではあくまで悲劇として伝えられているのだ。

このような悲劇のヒロインを萌えキャラ化するというのは、伝承のイメージを大きく毀損する行為だといえるだろう。
「害のあるキャラクター」というのはそういう意味ではないだろうか?

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アニメ絵、萌えキャラ、美少女イラスト、
そういったものにやたらと噛み付いてくる人というのは確かにいるのだろう。
しかし、キャラやイラストへの低評価や不採用の原因をすべてそこに転嫁するようではいけない。

不当な非難に対してしっかりと反論し、表現の自由を守っていくことはとても大切なことだと思う。
しかし、その非難が本当に不当なものかどうかについては、個別に検討が必要だ。

件の「郡上八幡城 新緑まつり」ポスターの差し替え版が絵的につまらない、という意見については私も同感だが、「およしちゃん」を「公認PRキャラとして採用しない」という判断は妥当であったと考える。



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