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デンマーク教育視察ツアー 2017 Report #3

5日目(2/28)は、ロスキレ市というコペンハーゲン郊外の町を訪ねました。入り組んだ複雑な入り江を進んだ先にあるこの町は、昔バイキングが根城としていた歴史があるのだそうです。

朝イチで訪れたのは、ウスターヴァンスコーレ。ロスキレ市の公立小中一貫校です。カスパー副校長に案内され、まずは低学年のクラスを見学。今は南スーダンについて学ぶ授業を行なっているとのことで、私達が教室に入ったタイミングでは、ちょうど南スーダンとデンマークについてTチャートで比較をしているところでした。実際に南スーダンに向けて飛行機に乗っているという仮定でストーリー仕立てで教材は進んでいくようです。

デンマークでは、2014年に大きな教育改革があり、授業時数が増えたり、体力向上のために毎日45分以上運動をしないといけないなど、学校でやることが増えました。いわゆる脱ゆとり的な改革です。背景にはPISA(国際学力到達度テスト)での不振があります。
一方で、デンマークでは従来「自分はどうあるべきか」「社会の中でどう生きたいのか」というようなことを重視する「人間づくり」の教育が大事にされてきたため、現場には改革への反発もあるようです。

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この学校では、単に上から降りてきた方針を仕方なくやる、ということではなく、創造的に工夫を凝らしてカリキュラムマネジメントをしている点が印象的でした。
例えば、運動をしなくてはいけないということに関しては、算数やデンマーク語の授業の中で、体を動かしながら学べるように環境設定をしたり(床に貼ってあるアルファベットが書かれたステッカーを使い、指定された単語のスペリングを片足ケンケンで踏むなど)、クラフトマンシップ&デザインクラスというものを新たにつくり、その科目を通して学力向上と人間的な発達の両立を図るなど、意図を持って、現実的な制約を踏まえてカリキュラムづくりをしているとのことでした。

また、この学校には裕福な層とより貧しい層が両方通っており、移民の子供たちも多いそうです。しかし、カスパーさんが「移民の子供たちは様々な難しさを抱えているけれど、これは"問題・problem"ではなく、あくまで"向き合うべき課題・our task"です。」と仰っていたのが強く印象に残りました。

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その後、世界遺産のロスキレ大聖堂のすぐ隣という素敵な立地にあるロスキレ高校へ。
ここは環境教育に熱心に取り組んでおり、環境教育を推進しているところに与えられる認証、グリーンフラッグを毎年のように獲得しています。ゴミの分別や食べ物についてなど様々なテーマに毎年取り組むのですが、今年のテーマは「屋外に学習スペースをつくること」。学校の敷地内に東屋のようなものを建て、そこ授業ができるように取り組んでいるのだそうです。環境クラスを任意でとっている学生さんたちや、校長先生などと一緒にランチをいただきます。両国の社会や教育の違いや、現在進行形の環境教育プロジェクトについてなど、交流に花が咲きます。

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食事のあとは、3つのグループに分かれて、順々にスクールツアーへ。
リラックスして課題に取り組める廊下のソファスペース、休憩やミーティングに使う素敵な教職員用カフェテリア、図書館、200年前に作られた歴史ある校舎…などを通り、そのまま生物の授業を見学。全員がPCを持って授業に参加しており、先生が出したいくつかの問題について、その答えを資料を駆使して見つける…ということにグループワークで取り組んでいました。
最後に屋外の学習スペースがつくられる予定の庭を見ました。本当に気持ちよさそうな広場でした。

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学校を後にし、また電車でコペンハーゲンへ。
最後にコペンハーゲンの公立の建築遊び場へ。
雨だったので子どもたちはほとんどいませんでしたが、スタッフが骨組みをつくり子どもたちが板を張った小屋やお城、パーマカルチャーガーデン、地域の大人も利用できるコミュ二ティガーデン、石窯や火遊びの場所などがあります。隣には子どもたちや親子連れが動物と触れ合える、これまた公立の施設もあります。
このエリアは、サポートが必要な層が多く暮らしているため、どんな子どもたちも子ども時代に豊かな遊びの経験ができるようにというコンセプトでつくられたそうです。

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ホテルに戻って振り返りの時間を持ち、この日は終了!
視察は残すところあと1日です。時間が過ぎるのは早い…。

(2017/02/28)