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Feelin' James

James Brown。ファンクの帝王。彼の楽曲はそのままヒップ・ホップへ置き換えられる。彼のバンドにいたドラマー、Clyde Stubblefieldが叩き出したドラム・サウンドがその理由のひとつだ。

James BrownClyde Stubblefieldが生み出した楽曲を無数のヒップホップ・アーティストがサンプリングし名曲を生み出した。これがClyde Stubblefieldのドラムはヒップホップと言える所以だ。

そして、その影響はヒップホップだけではない。70年代のディスコ・シーンでも彼の楽曲は常にダンス・フロアを沸かせてきた。みんなJames BrownClyde Stubblefieldのグルーヴ(=ドラム・サウンド)を欲しがったのだ。それなら、そのグルーヴを抽出してしまえと考えたDJがいた。その名はDanny Krivit

ディスコ創成期からDJとして活動を開始し、〈Paradise Garage〉や〈The Loft〉、〈Roxy〉で経験を重ね、70年代から現在に至るまでダンス・ミュージックとニューヨークのクラブ・カルチャーを築き上げてきたひとりだ。また、キング・オブ・リエディットと呼ばれ、Mr.K名義でオリジナル楽曲をテープ・エディットしDJ用に拡張(Extended)してきた。代表作はJames BrownFeelin James」、MSFB「Love Is The Message」、「Rock The House」だ。いづれも〈T.D Records Inc.〉なるDJ用のカットアップ、メガミックス専門レーベルからのリリースで、もちろん公式ではなく街角リリースのブートレッグだった。

Danny Krivitは、ウェブ・マガジン〈Donuts Magazine〉のインタヴューにこう答えている。

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〈Donuts Magazineより〉

 80年代の前半、僕の周りでミキシングをやっている人がいて、それで自分もやってみたいなと思ったのが始まり。当時〈Sleeping Bag Records〉を経営していた友人の1枚目のレコードを頼まれて、とりあえずやってみたんだけど、その時は理解ができなかった。限られた時間と予算も少ない中での挑戦で、自分的に納得のいかないままで、エンジニアは後で修正し直すからと言ってくれたけど、結局彼はそれを直さずリリースしてしまった。その後に、WBLS(ラジオ局)の友人に相談してエディットの過程を見せてもらったり、その他の友人からもテクニックを学び技術を習得した。当時はGrand Mixer DXTに凄く影響を受けていて、彼がJames Brownの「Funky Drummer」と Magic Disco Machineの「Scratchin'」をカッティングしていた姿に感銘を受けた。僕はスクラッチが出来なかったから、これらを何らかの形でエディットしたいと思ったんだ。それが初めて「Funky Drummer」をエディットした時のインスピレーションだったよ。2曲目が「Rock The House」、それから「Love Is The Message」。その後はシングルを数々エディットしていったんだ。

彼がスクラッチに憧れてエディットしたとはいい話。当時はレコード盤かオープンリールの磁気テープしかメディアはなかった。つまり、DJが楽曲に手を加える方法は、スクラッチかエディットのふたつだけだった。こうしてDanny KrivitMr.K名義で「Feelin' James」を作り上げた。

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James Brown Mixを最初に誰が作ったか?その答えは持っていないが、代表作は間違いなくDouble Dee & SteinskiLesson 2(James Brown Mix)。この作品が85年。「Feelin' James」は87年リリース。イントロがKurtis BlowDo the Do」と同じということは、Danny KrivitDouble Dee & Steinskiにもインスパイアされたのは間違いないだろう。Who'S Sampledによればそれ以外のネタは以下の通り。

Hassan & 7-11 / Emotions Can Be Serious、James Brown / Sex Machine、Incredible Bongo Band / Apache、James Brown / Funky Drummer (Bonus Beat Reprise)、Funkadelic / You'll Like It Too、James Brown / Get Up, Get Into It, Get Involved、Aretha Franklin / Rock Steady、Juice / Catch a Groove、James Brown / Get on the Good Foot、The B-Boys / Two, Three, Break

この「Feelin' James」はリリース後、世代を超えて数々のDJがプレイし続けた。クラブDJだけでなく、ターンテーブリストがスクラッチ・ネタとしても使った。街角リリースのブートレッグが、ダンス・ミュージックの定番として使い続けられてきたのだ。それはリスナー向けではなくあくまでプレイヤー向けだった。つまりこのレコードはDJツールとして存在してきた。初出から現在まで大量のリプロ盤が作られ世界中の街角で販売され続けている。


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