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Bomb The Bass / Beat Dis

1982年10月に、英国のソーホー地区にあった〈Whisky a Go Go Jazz Club〉の跡地に、ジャーナリスト兼プロモーターのChris Sullivanが〈The Wag〉という名のナイト・クラブをオープンした。ディスコとも違うオルタナティヴなダンス・クラブを目指しあらゆるジャンルを横断する自由なサウンドがそこで鳴っていたという。

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(The Guardianより)

The Guardianの記事によれば、そのこけら落としは、同年11月、英国ではじめてのヒップホップ・クラブ・イベント〈ロキシー・ロード・ショー〉だった。当時アメリカで火がついていたヒップホップ・アーティストを招聘したイベントで、Africa Bambaataa、Jazzy Jay、 Double Dutch Girls、Rock Steddy Crew、そして、Futura 2000。それは英国に初めてヒップホップが上陸した瞬間だった。

それ以降、数々のライヴやDJによってその名は英国中に響き渡り、Boy George、Joe Strummer、Neneh Cherry、David Bowie (Blue JeanのPVを撮影した), Mick Jagger, Keith Richards, Prince, George Clinton, Stevie Wonder, Robert De Niro, Brad Pitt, Karl Lagerfeld Jean Paul Gaultier. George Michael、 Grace Jonesなどが訪れるトップ・ナイト・クラブとなっていった。その後、ヒップホップとハウス・ミュージックに力を入れるようになりThe Wild BunchやCockie Crewを輩出した。

そんなクラブでDJのキャリアをスタートさせたのがTim Simenonだった。Wikiによれば、彼はDJをする傍らSchool of Audio Engineering in Hollowayで音楽制作を学び楽曲制作をはじめた。自分自身のDJプレイとDJの間で大流行していた街角リリースのメガミックスものをヒントに。そう、彼もM/A/A/R/SやCold Cutらと同様に、Double Dee & Steinkiの「Lesson」に強い影響を受けていたのだ(実際に彼は、Wag ClubでのDJプレイで「Lesson」をヘヴィー・プレイしていた)。

彼は、まずメインとなるドラム・ルーツとベース・ラインを制作した。そこにエディット、カットアップ、サンプリングを駆使し、古いソウル、ファンクはもちろんオールドスクール・ラップ、エレクトロ、ゴーゴーから、アニメのテーマ・ソング、ラジオ放送のジングル、映画音楽、TV番組、サウンドエフェクト・レコードなど、ありとあらゆる素材をコラージュしてできたのが「Beat Dis」だ。ネタに関してはWhos Sampedを参照してほしい。

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Tim Simenonは語った。「サンプル・ネタはライブでスクラッチするか、マシンでサンプリングしてリズム・セクションの上でループするかのどちらか。したがって、Bomb The Bassのコンセプトは、さまざまなアイデアでベース・ラインをBombし、サウンド・コラージュを作ることでした。Bombは、電車などにグラフィティをBombするというグラフィティー用語から引用したんだ」。

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人気コミック〈Watch Men〉から引用されたジャケットも印象的だった。

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ノイジーなロック・ギターをフューチャーしたこの曲は、その後、90年代にUKポップ・シーンで大流行したFatboy Slim、KLF、Chemical Brothers、Prodigyらによるロッキン・ブレイク・ビーツのルーツのひとつと言えよう。さらにEric B. & Rakim ‎/ Paid In Full (Seven Minutes Of Madness - The Coldcut Remix)M|A|R|R|S ‎「 Pump Up The Volume」と並ぶ英国ブレイクビーツのマスターピースだ。

余談だが、彼のアルバムのスペシャル・サンクスには、日本のMajor Force、イギリスのWild Bunch、23 Skidoo、Ronin Records、そして、ニューヨークのプロデューサー、Double Dee and Steinskiがクレジットされた。

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