Scratch!!①
2001年12月に日本公開されたドキュメンタリー映画『Scratch』。タイトル通りDJによるスクラッチという手法にフォーカスしたもの。アメリカのドキュメンタリー映画監督、Doug Prayの作品。グラフィティー・ライターを描いた『Infamy』の監督やHBOのドキュメンタリー・シリーズで Dr. DreとJimmy Iovineの関係を描いた『The Defiant Ones』のエクゼクティヴ・プロデューサーなども務めている。
映画はGang Starr「DJ Premier In Deep Concentration」で幕を開け、スクラッチを発明したとされるGrandWizard Theodoreのインタビューからスタート。
「その日も学校から帰り曲をかけてたが、音がうるさいとお袋がドアを叩いた。「いい加減にして!」だが、その声をよそにレコードにあてた手を前後させて俺は思ってた「こりゃ名案だ」。いろいろ試してみた、違ったレコードでね。しばらくしてパーティーで初披露した。それが「スクラッチ」だ」。
その後、Mix Master Mikeのトリック・プレイにのせてDj Premier、Z-Trip、Rob Swiftらがスクラッチの初体験談を語った。そして、場面はブロンクスへ。ゴッド・ファーザー、Africa Bambaataa、そしてJazzy Jayの登場だ。当時のブロンクスの様子とDJによるブレイクという概念を発見したKool Hercを紹介した。
73年だったと思う。多くのDJはディスコ、クラブやラジオなんかで普通に曲を流すのが主流だった。そこへ現れたのがKool Hercだ。彼は「ブレイク」を、つまりリズムやビート、その演奏法を発案した神にような存在だ。
当時のヒップホップDJ達は、そのブレイク(=レコード)を探した。誰も知らないブレイクをプレイすることがステイタスだった。映画『Wild Style』の有名なキッチン・シーンでGrandmaster Flashが披露したプレイがまさにそのブレイク・ビーツ・プレイだ。レコードを2枚使用し同じブレイクを永遠と繋いでいくには、スクラッチが必要不可欠。しかし、ここではあくまでブレイクをスムースに繋ぐためのスクラッチだった。そして、このスクラッチ自体がひとり歩きをはじめ、パーティーを盛り上げたり楽曲を構成する重要なエレメンツとなっていった。
劇中、Mix Master MikeやQ-Bert、Cut Chemistらが初めてスクラッチを目撃したのはMalcolm McLaren「Buffalo Girls(83')」、Herbie Hancock「Rock It(83')」Grand Mixer DXTのプレイだったと証言した。そのHerbie Hancockがグラミー賞で披露したパフォーマンス(’84)は強烈だったようで、劇中でも洗脳するかのようにそのシーンが度々インサートされた。それは彼らだけではなく世界中のリスナー達がこの曲で初めて「スクラッチ」を知ったから。それほど重要な楽曲だったということ。リトル・ベトナムと言われ荒廃しきったブロンクスで産声をあげたスクラッチという手法が世界中に広まった瞬間だった。
続く、、、
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?