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Eric B. & Rakim ‎/ Paid In Full (Seven Minutes Of Madness - The Coldcut Remix)③

Remixで頭ひとつ飛び抜けたのはCold Cutだった。58年にリリースされたステレオ音響のデモストレーション・レコード『A Journey Into Stereo Sound』の一曲目「Train Sequence」の冒頭で俳優Geoffrey Sumnerがナレーションした「This Is The January Into The Sound」ではじまる「Seven Minutes Of Madness - The Cold Cut Re-Mix」。Who's Samplingによれば25曲のサンプリング・ピースが使われた。Cold Cutの緻密なCut Up & Editスキルは本家Double Dee & SteinskiLessonを超える勢いだった。


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この楽曲は当時、DJの間ではすでに手垢のついた手法だったメガミックスと違う、カット・アップ(コラージュ)という手法でもって様々なネタを切り貼りし作り上げられた。

ここでメガミックスとカット・アップの違いを整理しておこう。前者は、DJミックスよろしく音楽だけを素材とし多くの楽曲を数分〜数十分に凝縮したもの。

後者は、音楽だけでなく声ネタや効果音など非音楽ネタを含めある意図やメッセージを込めて制作されたもの。

彼らのPVも見事なCut Upで制作されている。監督は調べきれなかったが、「I Ain't No Joke」と同じくヴィヴィアン・ゴールドマンなのか?

この楽曲で使われたネタは、Who's Samplingを参照してほしい。ディスコ、ファンク、ソウル、エレクトロ、ノヴェルティー・ソング、そして、声ネタも含めジャンルや年代を超えた25曲以上を7分に凝縮している。

特筆すべきは、その中にイスラエル出身の女性歌手、Ofra HazaIm nin' alu」が収録されていたこと。当時、DJの間で世界的なレアグルーヴ・ブームだった。と同時に、ワールド・ミュージックもDJ文脈で再発見されていたが、そのブームに火をつけたのがこのRemixだった。それほどの影響力を「Paid In Full (Seven Minutes Of Madness - The Coldcut Remix)」は持っていたのだ。

Ofra HazaIm nin' alu」も含めこの楽曲は、当時国内においてもディスコやクラブでヘヴィー・プレイされていたし、ヒップホップやレアグルーヴ系DJはもちろん、ターンテーブリストらのレコード・バッグにも常に入っていた。つまり、DJ文化みたいなものを世界的に拡張した大袈裟ではなく革新的な1曲として今もどこかのクラブでプレイされているはずだ。以下、リリックの一部を掲載する。

俺は口笛をふきながら街角を歩く
でも、何かが違うんだ

ペンとペーパー、ステレオ
俺とエリックBのテープ
俺の好きな大盛りの魚料理が恋しい

だけど金がなければただの願望だ
なぜなら、俺は金を稼ぐのを夢見るのは嫌いだ
だから俺は自分のライム・ノートを掘り下げ
俺が今でも力を持っているか試すんだ

だから、スタジオに行くんだ
そのための十分な金をもらったからな

Eric Bは、このリミックスを「Girly Disco Music」と呼び嫌っていたが、Rakimは過去最高のRemixだと賞賛した。

87年に、 Cold Cutによる「Paid In Full (Seven Minutes Of Madness - The Coldcut Remix)」とM/A/A/RPump Up The Volumeの世界的大ヒットによってDJミュージックがポップ・チャートに風穴を開けた。街角で流行っていたDJによるメガミックスが一気にポップ・マターにのったのだ。

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