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1枚の模式図がdeleteCの基礎に 事務局・中田憲介さん

 deleteCのイメージを初めて形にしたマリオネット操者のストーリー。活動内容を聞いた瞬間、感じた強烈なインパクト。行動せずにいられなかった中田さんが書き上げたのは、1枚の模式図だった。そこにはdeleteCの詳細な活動内容、お金の流れ、実現したいことなどが全て、分かりやすく表現されていた。そんな中田さんの独特の感性やアイデアはチームの成長を支えてきた。

 きっかけは1枚の模式図

 deleteCの発足当時、事務局で基盤を支えたのが「困った時の中田君」こと中田憲介さん。事務業務が的確、かつスピーディー。さらに、言葉やセンス、イメージが独特で面白く、クリエイティブの面でも頼れる存在。メンバーからも厚い信頼を得ている。

 2016年からバンド「TheWorthless(ザ・ワースレス)」のマリオネット操者として活躍する。国内だけでなく海外も併せて年間200回の公演をこなすほどだ。上半身だけで操るマリオネットは筋力も必要で、柔らかい笑顔からは想像できないほど、ストイックにトレーニングする面も。

 そんな中田さんとdeleteCが結び付いたのは1枚の模式図。2019年2月4日のイベントの様子を動画で目にした時、deleteCの活動に共感し、イメージが湧いてきた。そしてすぐに行動に移った。

 「個人的にdeleteCがものすごく興味のある対象だったので、頭の中で見える形にしたいという欲求が湧いて。自分のために書いたという感じでした。」

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 その模式図には、企業と医療を結び付ける方法や可能性、活動の広げ方などが記されていた。まさにそれは発足時のメンバーたちが思い描いていたイメージが形になったものだった。
 その模式図は、中島ナオさんのお姉さんを通じナオさん、小国士朗さんに共有された。そしてすぐ、「2月中旬に打ち合わせに遊びに来てよ」と声をかけられ参加したことから、中田さんとdeleteCとの歩みが始まった。

「出だしからすごく話のスケールが大きかった。ビルゲイツに届いてほしいという話でした」と当時を思い起こしながら笑顔を見せる。

 従来のプロジェクトと違う関係性が斬新

 中田さんは、お金持ちが世界を救う切り口でないアイデアに魅力を感じた。

 「間口の広さにしびれました。経済状況の大きさにかかわらず応援ができる。商品を購入して寄付する方、企業としてお金を出して参画する方、このプロジェクトをSNS上でシェアをして拡散する方もいる。色んなかかわり方がある。でもがんを治せる病気にするというゴールが明確だ」

 ”困っていない人が困っている人を救う”従来の寄付活動と違い、”未来の自分たちを救うかもしれない”という切り口が斬新に映った。

 「将来かなりの確率で多くの人が、がんになるという前提があるなと。今は支援する立場でも、10年後にがんになった自分を救うかもしれない。従来の、”困っていない人が困っている人を救う”という関係性ではなく、”未来”という、時系列によってグラデーションになっているのがユニークで、凄いところ。」

 と、語る中田さん。deleteCヘ、大きな可能性を感じずにはいられなかった。

中田さんページ用

 アベンジャーズが生み出すスピード感

 中田さんの目に映るdeleteCの魅力は人の多様性とスピード感だそうだ。全く違う領域のプロが集まり、さらにメンバー同士のつながりで新たなメンバーが増える。そして、組織の成長・発展に必要なピースがどんどん埋まっていく。

 そんな様子を、「また新たなアベンジャーズが来たという感じ。そのわくわく感はすごく楽しみ。実際にプロジェクトはスピードを増して進んでいきました」と笑みを浮かべる。

 その一方で、領域の広さによる難しさも感じた。会議の議事録を作るとき、専門領域の違いから当然、知識の差はあった。「うまく理解してかみ砕いて記録として残すのは骨の折れるところだなと思いました。」
 誰にでも分かるようにみんなの活動の足跡を残すこと。それは中田さんならではの細かな配慮で、組織の基盤を作る大きな力となった。

 その頑張りで、活動のやりがいを実感できた時もあったそうだ。
 自身のマリオネットのファンの方が、deleteCのコラボ商品である「"C"を消したC.C.レモン」の写真をツイッターでアップしていた。

 「もともとは、金融のIT関連の仕事をしていて、”がん”や医療は、視界に入りにくい領域でした。自分の活動が、身近な方に届いて、そのプロジェクトに理解を示してくれた瞬間が、シンプルに新鮮でした。」と、喜びいっぱいに中田さんは語る。

 deleteCで変わった発信への意識

 言葉の大切さ、コミュニケーションへの意識は、deleteCに携わって大きく変わった。それは中田さんにとって本業にもつながる価値のある変化だった。

 「deleteCで重ねていく打ち合わせの中で、広報・山口さんが『もしこの情報を、この人が受け取る可能性があるとすれば、表現はこうした方がいい』と、細かく積み重ね、すごい数の確認があったと思います。何を伝えたいのか、どう認知してもらいたいのか。発信を受け取る人の特性を理解しながら文章と情報を組み立てる意識がすごい。痺れました。」

 マリオネット操者としてSNSでの発信。ファンに向けたメッセージでも、活動を認知していない人がどう受け取るか考える。また逆の場合もそう。受け取る人を理解し、よりよい方法を選びながら自身を伝えている。
 中田さんは、これから支援の輪が広がれば、医療者はdeleteCがあるからこそ前向きに研究を進められる状態になり、医学が進歩する、一般の人々にはがんへの知識が広まり、本当の意味での認知もされていくと考えている。

 「3年後か、10年後か。それは分からないけど、身近な人と自分が救われるようにできることをしていきたいです。」

 中田さんは、がんを治せる病気にする未来を思い描きながら、deleteCへと携わっていく。

協力(企画 山口恵子 文 酒谷裕 編集 中島ナオ)

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