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BSで観た三島由紀夫やらヒトラーやら。

偶然、深夜、BSで再放送していた三島由紀夫特集が思いのほか良かった。
三島好きな識者6名が、彼の作品やエピソードについて語りながら、三島の生き様、生い立ち、戦争を生き残ったことへの葛藤、肉体への過剰なコンプレックス、表現者としての俳優、最後、「楯の会」を率いて命を全うするまで、色々な側面から検証する内容だったのだけど、改めて、三島由紀夫って、ひとつの時代が生んだ唯一無二の天才だと。

特に漫画家、ヤマザキマリさん(この番組で初めて知ったのですが彼女、カッコいいですね。「テルマエ・ロマエ」などの作者)の発言が三島愛に満ち溢れていて、熱情がこもっていて、言葉が胸に響いた。聞きながら胸の中で「この人の発言、いいね!」を10個くらい押した。

三島が晩年、東大生全共闘と行った討論会のドキュメンタリー映画も好きだったけれど、三島の発言で好きだったのが「私は諸君の熱情は信じます」というセリフ。
右であろと左であろうと思想こそ違えども、日本の行く末を真剣に案じていた、という点では三島も東大生も同じ「サイド」に立っていたのだ。

そしてつい先日観たヒトラーのドキュメンタリー。
フランスで制作された番組で、テーマ別に何編か作られたシリーズものだけど、ドイツ国民を扇動し、洗脳し、自分たちこそ世界をけん引するにふさわしい民族だと信じ込ませた偏った思想、それこそがヒトラーの力であり、怖さだと。

当時の映像がいくつも流れたのだけど(これが意外に鮮明な映像でびっくり)、巨大なスタジアムで、身振り手振り、オーバーアクションで叫ぶヒトラーの演説を、陶酔しきった熱に浮かされた表情で聞き入るドイツ国民。彼らの忠誠の印、「ハイルヒトラー」の一糸乱れぬ敬礼を見るたびに、ヒトラーは時代が生んだ一種の「狂気」で、彼の戦争犯罪人としての行為は決して許されるものではないけれど、エネルギーの使い道を踏み外してしまった、ある意味「偏った天才」だったのではないか、と。

あの当時、ヒトラーを唯一無二の神と崇めたドイツにもし自分が生きていたら、同じようにハイルヒトラーと叫んでいたと思う。もし、胸にナチス体制への一抹の疑問があったとしても。生き抜くために。ユダヤ人が出自を偽って虐殺を生き延び、ヒトラーユーゲントに加入したように。戦争に突入した国、そして国民は、哀しいかな、加害者であり同時に被害者でもあるのではないか?

思えば手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」でヒトラーやヒトラーユーゲント(ナチスの青少年組織)を知ったのだけど、あの漫画の脚本、ストーリー展開は同じく天才的な域だと思う。改めて漫画を読み返したくなった。

終戦の日もあって、戦争を振り返る番組がいろいろ特集されていて、良質なドキュメンタリーに出会えると、良質な書物に出会えたような満足感がありますね。

三島が20代の頃の世界を放浪した紀行文集など、これを機に読みたくなった宵でした。


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