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『リコリス・リコイル』のBlu-ray売上の収益はどのように配分されるか?

こんにちは、アニメ社畜投資家のでこです。
今回は2022年夏クールにおける"覇権アニメ"の呼び声が高い『リコリス・リコイル』(以降リコリコ)のBlu-rayの売上から見る収益配分についてお話したいと思います。

アニメBlu-rayのマーケット概観

9月21に発売されたリコリコのBlu-ray第1巻の初週売上本数なんと2.1万本を記録しました。

2000年代後半の『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』『らき☆すた』などが放送されてた"深夜アニメ全盛期"では1巻あたりのBlu-ray売上1万本越えというのはそこまで珍しいものではありませんでした。
(例えば『けいおん!』のBlu-ray第1巻初週売上本数は3.3万本でした)

2010年代後半に入るについてて、NETFLIXやAmazon Primeなどの配信でのアニメ視聴形態が一般化していくにあたり、Blu-rayの売上は年々減少していき、近年では「Blu-rayは2000~3000本売れたら及第点、5000本超えたら大ヒット、1000本を下回ることもザラ」という市場になってしまいました。

なお、ここ最近のヒット作のBlu-ray売上本数は以下の通りです。

・『鬼滅の刃』第1巻売上本数:2.9万本
・『ウマ娘(第2期)』第1巻売上本数:5.5万本
・『SPY×FAMILY』第1巻売上本数:8,000本

ただ、『鬼滅の刃』や『SPY×FAMILY』はコミックス原作アニメ、『ウマ娘』はゲーム原作アニメであるため、ある程度原作作品の人気度からアニメの人気度も放送前に計ることができるのに対し、「リコリコ」は原作なしの完全アニメオリジナル作品という中で2.1万本というのは特筆すべき点だと言えます。
(なお、"完全アニメオリジナル作品"というジャンルの中だと、『魔法少女まどか☆マギカ』が歴代最高の5.3万本を記録しています。)

さて、ここから題名の
リコリコ」のBlu-ray売上の収益はどのように配分されるか?
に話を移したいと思います。

「リコリコ」Blu-ray第1巻・売上と配分について

まず、以下でこちゃんが調べた中での「リコリコ」第1巻のBlu-ray情報は以下の通りです。

・売上本数:23,383本
・上代:7,920円(税抜)

ここから「リコリコ」第1巻の現時点の総売上がわかります。

売上本数23,383 x 上代7,920(税別) = 総売上185,185,440

「リコリコ」製作委員会について

「リコリコ」の製作委員会には、アニプレックス・ABCアニメーション・BS11が参加しています。

製作委員会に参加しているということはどういうことかというと、すごく簡単に言うと以下のことが言えます。

・「リコリコ」のアニメ製作費を各社で比率を分けて出資している。
・「リコリコ」の商品化や円盤などで収益が発生したら、各社の出資比率に応じて配分する

この出資比率については、アニプレックス・ABCアニメーション・BS11間で結ばれた「委員会契約書」に書いてあることで、この出資比率は社外秘で社内関係者じゃないとわかりません

ですが、でこちゃんが聞いたアニメ業界内でのウワサから、「以下のような出資比率なのではないか?」という妄想出資比率を以下のように算出しました。

《リコリコ製作委員会・出資比率》
・アニプレックス:出資比率70%
・ABCアニメーション:出資比率15%
・BS11:出資比率15%

経費

Blu-rayの利益を配分するにあたり、総売上から諸経費を引いた金額を算出する必要があります。

諸経費とは主にBlu-rayの製造原価とTVCMやプロモーション費などの宣伝広告費があげられます。

以下でこちゃんが「リコリコ」の製造原価と広告宣伝費をざっくりと算出してみました。

《経費》

・製造原価(大体本体価格の30%か?)

⇒185,185,440×30%=55,555,632円

・宣伝広告費(大体本体価格の10%か?)

⇒ 185,185,440×10%=18,518,544円

窓口手数料

ここで窓口手数料というものが発生します。

まず「窓口ってなに?」って話なのですが、これはアニメ製作委員会特有のものだと思います。

窓口とは、簡単に言うと、"製作委員会内のお問い合わせ窓口"です。

製作委員会の中では、放送権窓口・商品化窓口・配信権窓口(正確に言うと"自動公衆送信権")・ビデオグラム化権窓口・出版権窓口など、様々な権利窓口を委員会メンバー間で担当を分ける形をとっており、その窓口を担当する会社は、"汗かき料"として大体10~30%の窓口手数料をもらうことが出来ます

今回の「リコリコ」に関して言えば、Blu-rayの窓口にあたるビデオグラム化権は十中八九アニプレックスが握っていると見て間違いないので(※アニプレックスは音楽・映像パッケージを製作している会社のため)、「リコリコ」においても窓口手数料が入ります。

仮に「リコリコ」におけるビデオグラム化権の窓口手数料が10%として、以下のような形で窓口手数料が入ります。

《窓口手数料》

売元アニプレに10%?

⇒ 185,185,440×10%=18,518,544円

配分原資

上記の経費・窓口手数料を引いた額が「リコリコ」Blu-ray第1巻の売上における配分原資となります。

《配分原資》

上代-(製造原価+宣伝広告費+窓口手数料)

= 185,185,440-(55,555,632+ 18,518,544+ 18,518,544)

= 109,285,820円

配分金

「リコリコ」Blu-ray第1巻の税抜価格に売上本数をかけた総売上から、諸経費と窓口手数料を引いた価格がアニプレックス・ABCアニメーション・BS11に配分されます。

上記にありますでこちゃんの"妄想委員会出資比率"をベースにすると、以下のような形で委員会メンバーに配分されます。

《配分金》

・アニプレックス分

 109,285,820×70%=76,500,074円

・ABC分

 109,285,820×15%=16,392,873円

・BS11分

 109,285,820×15%=16,392,873円

最後に

ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございます。

上記で算出した数字は全て「でこちゃんのアニメ業界で働いてきた経験からの勘」なので適当ではあるのですが、"近からず遠からず"というものだと思っていただけると幸いです。

なお、今回Blu-rayでしたが、商品化での売上やネトフリなどの配信料についても製作委員会方式を取って製作されているアニメは例外なくすべて"出資比率に応じて配分される"というルールには変わりないです(※窓口会社には窓口手数料も入ります)。

ですので、もし今後大ヒットアニメを発見したら、

「このアニメ、製作委員会にどの会社いるんだろ?」

というのを見て、

「このヒットによって儲かる会社はどこだろう?」

というのを考えてみると、
意外と投資アイディアのヒントが隠れているかもしれません。

ご清聴ありがとうございました。

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