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【企業分析ノート】I-ne(4933)

こんにちは。アニメ社畜系投資家のでこです。
今回は初めてアニメ関連会社以外の会社、I-ne(4933)を企業分析していきたいと思います。

概要

■業種:卸売/小売業
■設立:2007年3月
■資本金:32億9,181万円
■従業員:282人
■事業内容:
 ①化粧品、美容家電等の美容関連商品や販売店の企画開発、運営、製造及び販売
 ②トイレタリー及びヘルスケア関連商品の企画開発、製造及び販売
 ③Eコマース事業

指標

(以下2023年1月29日時点)

[株価] 2,987円
[時価総額]522億円
[利回り] 0%
[PER] 28.2倍
[PBR] 5.04倍
[粗利益率] 53.0%
[営業利益率] 9.14%
[自己資本比率]63.2%
[発行済み株式数] 17,482,240株
[株主優待] 無

[デュポン分析]
・売上高純利益率が年々上昇している。
・総利益回転数も競合他社(ヤ―マン/北の達人/アクシージア)と比べて良い水準
・適切な財務レバレッジ(自己資本比率も上昇している)
➡年平均約6.7%と高水準のROE成長率

I-ne・デュポン分解

[CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)]

I-ne・CCC

I-neって何の会社?

I-neはヘアケア製品と美容家電の開発・販売をしている会社です。

植物由来のオーガニックシャンプ「BOTANIST」が同社のメイン商材で累計出荷本数1.5億本を記録した大ヒット商品です。

シャンプーだけではなく、ドライヤーやヘアアイロンなどの美容家電ブランド「SALONIA」も展開している。

新商品の開発にも余念がなく、2021年に発売された"寝ながらヘアケア"を謳ったシャンプー/トリートメント「YOLU」が働く女性層のニーズをとらえ、累計販売1000万本を突破、日経XTRANDの2022年ヒット商品Top30に選出されました。

上記の大ヒット商品のおかげで、I-neはヘアケア市場メーカー2位を獲得し、直近の決算では売上高+27.2% / 営業利益+42.6%と急成長中のグロース企業です。

2022年12月期第3四半期決算説明資料・市場シェア
2022年12月期第3四半期決算説明資料・売上高
2022年12月期第3四半期決算説明資料・営業利益

I-ne・国内/海外売上比率

I-neの2021年度通年の売上高は283.9億円でしたが、国内海外の内訳は以下の通りです。

 ■国内:271億円(95%)
 ■海外:12.9億円(5%)

上記からも分かる通り、I-neは日本国内がメイン市場で海外はまだまだ弱いです。
ただ、台湾を中心にアジアへの展開を進めており、今後ロックダウンが明けた中国への展開拡大も期待されます。

2022年12月期第3四半期決算説明資料・グローバル

【I-neのここに注目!①】配送方法の変更

直近の決算資料から以下「コスト構造」についての図を抜き出させて頂きましたが、営業利益が昨年に比べて+1.3%改善しています。
その中でも、物流費が1.9%も削減されていることがわかります。

2022年12月期第3四半期決算説明資料・コスト構造

こちらについて確認した所、配送の際に自社の商品だけではなく、他社の商品も一緒に配送することで荷物の積載率を向上させたことがコスト削減につながったとのことでした。

なお、こちらの共同配送は北海道エリアだけでの実施だったようで、今後他のエリアでも共同配送の実施を検討中の模様。

【I-neのここに注目!②】売上高販管費&一般管理費率

ここでI-neと競合他社での「売上高に対してどれだけの販管費(=広告費)・一般管理費を使っているか?」の比率を出してみたいと思います。

この%が低ければ低いほど、以下のことが言えます。
 ●宣伝広告費・人件費などのコストを掛けなくても売上を確保できる
 ●商品のブランド力・認知度が高い
 ●効率の良いマーケティングが出来ている

≪美容業界・売上高販管費&一般管理費率≫ 
 ■ファンケル:61%
 ■北の達人:64%
 ■ヤ―マン:40%
 ■アクシージア:61%
 ■プレミアアンチエイジング:81%
 ■MTG:57%
 ■I-ne:39%

I-neは業界内で最も低い売上高販管費&一般管理費率を誇っていると思います。
この要因としては、
 1.BOTANISTのブランド力・認知度の高さ
 2.効率の良いマーケティング・プロモーション施策

があげられます。

1.については既にBOTANISTが累計1.5億本売り上げていることからわかるともいますが、2.についてはもう少し掘り下げたいと思います。

【I-neのここに注目!③】LINEマーケティング

I-neのマーケティングの上手さが如実に見られるものの1つにLINEマーケティングが上げられます。

最近、企業がLINEのアカウントをもって「フレンド登録をすると~がもらえるよ!」などで友だち登録をさせて、登録者にその後宣伝メッセージを送ってくるのについて、身に覚えがある人は多いと思います(大抵は登録した後にミュートにするかブロックするかになるますが…)

LINEでの企業アカウントでの平均集客数は350~450万人が平均なのですが、I-neはなんと1800万人もの友だち登録がなされています!

I-ne・LINEアカウント

P&Gのパンテーンや、IKEAのアカウントでも1000万人には達していない中で、この数字は驚異的であることがわかると思います。

P&Gパンテーン・LINEアカウント
IKEA・LINEアカウント

どうしてここまでI-neのLINEアカウントの友だち数が多いのか?
それはI-neのLINEプロモーションの運用方針の変更が大きく、当初は"新規顧客獲得"を目的としていたところを、途中で"既存顧客とのリテンション(定着"に切り替えたことが大きな要因です。

以下は有料の記事になってしまいますが、I-neのLINEアカウント運用担当の戦略が詳しく記載されておりますので、ご興味ある方はこちらをご覧いただけると幸いです。

「美容業界は広告費を掛けないと売上を確保できない!」という業界の定説となっています。
しかしI-neは業界内で最低コストの宣伝費で最大のプロモーション効果を得られるかを常に創意工夫を凝らしていることで、I-neの収益性は競合他社と比べてアウトパフォームしていると言えます。

今後のシナリオ

でこちゃんの考えるI-neの今後のシナリオは以下の通りです。

 1⃣BOTANISTのブランド力の継続・YOLUの売上続伸による売上高増
 2⃣共同配送の全国化によるコスト削減
 3⃣ロックダウン明けで中国への展開再開による海外売上増
 4⃣効率的かつローコストのプロモーションによる他の競合他社との収益性のアウトパフォーム

最後に

本日、近所のドラッグストア3店に行って、実地調査を行いました(笑)
すると、BOTANISTとYOLUは大体ヘアケア商品棚の6~8面と他の商品に比べても広く面を取って展開されていました。

これは小売・流通としては非常に大事なことで、
 ●多面が展開されている
 ↓
 ●流通側が「この商品は売れる!」「ブランド力がある!」と思って多く入荷している
 ↓
 ●それだけI-ne側に注文が入ってくる
というメカニズムにあると言えます。
(今おもちゃ屋さんの棚が「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「SPY x FAMILY」で埋め尽くされてるのは、流通・小売側が「これは売れる!」と思っているからで、BOTANISTもそれと同じです)

なので、今後も実地調査を含め、確認をしていきながら投資判断を調整していきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。


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