岡村靖幸という衝撃 その2

岡村ちゃんとの出会いは、まさに未知との遭遇でした。今回は初DATEに至るまでのお話です。


11年半ぶりのオリジナルアルバム

2016年1月26日 ファン待望の新アルバム『幸福』が発売された。良い時期に岡村ちゃんにハマったものだと、私は然るべき時期に岡村ちゃんにハマったのだな、と実に都合の良い考えをしていた。1曲目である【できるだけ純情でいたい】、最初の雨の音からドキドキした。イヤホンつけて、部屋暗くして、外部からの刺激をできる限り遮断してその世界に浸った。

ニューリリースは岡村ちゃんだけじゃない

この年は、春先まで好きなアーティストの新アルバム祭りだった。青春をともにしたBUMP OF CHIKENにスガ シカオ(こちらも云年ぶりのフルアルバム)、及川光博、そして岡村靖幸…… どれから聴こう、どれから聴き倒そう、迷い迷った。推しアーティストたちで渋滞して、揺れるお年頃。

帰ってきたイエローモンキー

この年はそれだけではなった。イエローモンキーが春より再集結・全国ツアーをすることになったのだ。再集結しますよ、って話は公式発表された二日後くらいにFBの広告ページで見て知った。思わず悲鳴をあげた。暗黒時代に前述のスガ シカオ、BUMPと共に大変お世話になったあのイエローモンキーが!!復活だなんて!!! ただでさえもアルバム4つも聴き込まなきゃいけないのに、イエローモンキーの参戦でいよいよ大渋滞。忙しくなってきた。

母からの誘い

久しぶりに母から連絡がきた。元々仲が悪いわけではないけど、まあ色々あって、就職して実家を出てからは滅多なことがない限り連絡取り合ったり、実家帰ったりはしていなかった。厄介ごとではありませんように、と思つつ携帯を開いた。

岡村靖幸のライブチケットが手に入った。場所は青森。席は2列目。

…これはまたいつもとは別の厄介ごとだ。この頃、イエローモンキーのライブ(遠征)を2件控えており、神奈川→青森の遠征は正直厳しい。しかし、2列目。ぐぬぬ、行きたい。ボーナス早くください。しかし、旅費はなんと母が負担してくれると言う。それならばと、そうして現金なムスメはホイホイついていくことにしたのだった。

ベイベは案外近くに潜んでいる

母はしばらく会わぬ間に私以上に、本当に岡村ちゃんにハマっていた。法事の帰りに聴かせた【Automatic】が、どうしても忘れられなかったのだと言う。

ビギナーズラックで2列目のチケット取るとかエグイな、で思ってたけど、それにはカラクリがあった。

母が仲良くしてる、母のいとこ。なんとベイベだったのだ。そんなことある? ありえないでしょ。ちょっと何言っているかわからない。 そして、その親戚ベイベより行けなくなったチケットを譲ってもらった、と。偶然にしては出来すぎている…事実は小説よりも奇なりとはまさにこのことなのかもしれない。

しかしベイベはなかなか見当たらない。

青森へ行くのは20数年ぶりだった。記憶にないくらいなので、実質初めてと言ってもいいかもしれない。本州最北端の国。不思議な空気感のある街だった。スタバではおじいちゃんが店員さんに今まで集めたスタバのコーヒーステッカーのスクラップを見せていた。店員さんはそれに対して丁寧に対応していた。やさしい街。 

スタバでお茶した後は噂のアスパムを見て、全く並んでいない物販に(本当に岡村ファンはいるのか…?)と、一抹の不安がよぎりつつも母とお揃いでTシャツを買い、会場近くのお店でラーメンを食べた。他客のほとんどはベイベのようだった。ここでやっとベイベに遭遇した。なんだ、きちんといるじゃん。少しホッとした。

距離が近い。これはやばいかもしれない。

会場はこじんまりとしていて、入ってみれば席はどセンターで、そして2列目はなかなかに近かった。いいのかな、初めてなのにこんな席で。ライブ自体も久しぶりなのに。紫の柔らかなカーテンが時折ゆらゆら揺れる。この先に岡村ちゃんがいる。これはやばいかもしれない。

恋に落ちる、心を震わせるということ

ライブが始まった。お互い手を伸ばせば届きそう、でも届かない。それくらいの距離だった。そして岡村靖幸は思っていたい以上に身長が高く、そして横の厚みもみっちりしていた。口からはCD音源。汗がすごい。あ、この人自分大好きだ。汗がすごい。あ、ちょっと気持ち悪い。汗がすごい。この人絶対セックスしつこそう。汗がすごい。…かっこいい。 知っているつもりだったけど、全然知っていなかった岡村靖幸という才能と魅力。

いけないことかい?
傷ついても 2度とはもう離したくない baby
息ができないほど愛してるよ

そして、こんなにも切なく歌い上げる人に、私はこれまで会ったことがなかった。

高校時代、「結婚したい!」とまで豪語していたスガ シカオでさえも、ここまで私の心を揺さぶったことはなかった(シカオちゃんごめんなさい)(でもシカオちゃんは私の心ずっとに寄り添ってくれた、大事な人です)。 瞬きも、息をすることも忘れるほどに見入った。目の前にいる岡村ちゃんはとてもキラキラしていた(もちろん汗のせいなどではなく)。そうだ 恋に落ちる、というのはこういう感じだった。

正直、そこまで予習して臨んではいなかった

アルバムツアーだし、と言うことでもちろん「幸福」は聴き込んではいたものの、実は過去曲はそこまで知らなかった。有名な曲はいくつかYouTubeで聴いたりしてはいたけれども、その時は正直そこまで響かなかったのだ。青森への移動中だって、イエローモンキーの予習・復習をしている始末。

だから、ぶっちゃけてしまえば【イケナイコトカイ】【カルアミルク】【だいすき】なんかもほぼ初めてに近かった。逆にそれが良かったのかもしれない。岡村ちゃんの色んな曲の初めてを、生歌で聴けたのだから。それはとても贅沢なことなのではないかと。

岡村ちゃんはメロンパンナちゃん

きゃー❤️きもーい❤️ なんて最初騒いでた隣の母は、最後の【Out of Blue】にメロメロのようだった。一番好きな曲なんだそう。終演し、会場を見渡してみれば、開演前と随分雰囲気が違っているようだった。皆、女の顔をしている。テンプテーションか? 誰もが岡村ちゃんにメロメロだった。こんなこと出来るのはメロンパンナちゃんか跡部景吾かセクスィー部長か。でも岡村ちゃんは可愛いので多分メロンパンナちゃん。絶対メロンパンナちゃん。パンナのメロメロパンチでみんなメロメロなのである。

例に漏れず私も完全に虜になっていた。ライブが終わる頃にはベイベになろうって決めた。ていうか岡村ちゃんに心を奪われた時点で私はもう完全にベイベだ。

どうしてももう1回岡村ちゃんに会いたくなった。

叶うならば翌日の仙台も行きたかったけど、それは難しいということで諦めた。母と相談して、中野のチケットを取ることにした。気がつけばDATE会員にもなっていた。こんな衝動にかられるのは初めてだった。

「蟻地獄で会いましょう」

誰かがそう、耳元で囁いた気がした。




久しぶりに始める創作活動費用に充てさせていただきたいと思います。