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指す将順位戦6th A級2組6回戦 VSここのかさん

こんにちは、こまちです。見出し画像は2017年の冬に原宿で食べたサーモン丼です。

今回は指す将順位戦の6回戦、VSここのかさんの自戦記をお送りします。

今回も前局のように事前準備をする時間がそれほど取れなかったため、「準備編」と「対局編」を合併します。というより、今後は自戦記一本のスタイルでやっていこうと考えています。

事前準備

心境
4回戦で初勝利したものの、5回戦では優勢から捲られて流れがすぐに途切れてしまいました。ただ、1~3回戦と比べると、将棋の内容は明らかに上向きになっていると感じていました。1勝4敗と状況は依然として良くないですが、ここからが正念場の後半戦ということで、全勝するぞ!という目標を掲げて気合は十分でした。

棋譜チェックと作戦決め
存在していた棋譜が約120ほどあり、全てにざっと目を通した感じでは、

・ゴキゲン中飛車→先手後手関係なく指す(比率は後手若干多め)
・ノーマル三間飛車→先手後手関係なく指す
・角換わり早繰り銀→先手限定で指す
・相掛かり→先手限定で僅かながら可能性がある

といったように指していると認識しました。これを基に、ここのかさんが先手を引いたら角換わり早繰り銀になり、後手を引いたらゴキゲン中飛車になると予想し、作戦を立てていくことになりました。角換わり早繰り銀に対してはいつも腰掛け銀で対抗していますが、プロ間での相早繰り銀の対局が増えていることから、勉強してそっちを指すのもありかなと思い、当日の気分次第ということに。ゴキゲン中飛車に対しては、これまで超速で何局も対局してきているので、経験を踏まえていつも通りに指せば良いでしょうということに。加えて、それらの戦型の棋譜に目を通したり、気になった変化をソフトにかけてみたりして序盤の知識を更新しておけばひとまず大丈夫かなといった感じで過ごしていました。

対局当日

5回戦終了~6回戦までの間にリングフィットアドベンチャーが届きました。それに伴い、食事も毎日沼を食べることを再開。睡眠も毎日基本8時間、対局前日には10時間取るようにしており、食事・運動・睡眠に関しては充実した毎日を送っています。今回も、当日は良いコンディションで迎えられました。

24で対局していたり、詰将棋を解いたり、予想した戦型の棋譜を確認していたらあっという間に対局時間になりました。モンエナを飲みラムネをかじって準備万端いざ対局。

今回から、本譜の局面図は同じA級2組所属のガスボンベさんの「JavaScript将棋盤」を使用しています。ほんとに便利です…ありがとうございます。
分岐の局面図はこれまで通り「Shogipic」を使用しています。

今回も

先手:ここのかさん 後手:こまち
初手から
▲7八飛 △8四歩 ▲7六歩 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀
▲6八銀 △4二玉 ▲4八玉 △3二玉
▲3八銀 △5四歩 ▲3九玉 △5三銀
▲2八玉 △5二金 ▲5八金 △7四歩(第1図)

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今回も後手番を引きました。これで3連続ですがそういうこともあります。来る可能性はそこまで高くないと思っていましたが、ここのかさんは三間飛車を選択。事前の段階で、ゴキゲン中飛車や早繰り銀で来られるよりは戦いやすいかなと思っていたので、ちょっと安心。

さて、前局は四間飛車に対して金無双急戦を採用しましたが、三間飛車に対しても基本使えます。ただ、金無双急戦の棋書に載っていたのが自分が考えていたのとかなり違っていたので独自で考えていくことになりますが、普通に成立します。ということで今回も△7四歩を指しました。

評価値:水匠4改 5億ノード 互角(-46)

予定外

第1図以下の指し手
▲5六歩 △7三桂 ▲1六歩 △1四歩
▲6七銀 △9四歩 ▲3六歩 △8四飛
▲2六歩 △6四銀 ▲2七銀 △7五歩(第2図)

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自分が金無双急戦の駒組みを進めていくのに対して、先手は銀冠を構築し始めました。急戦を指した経験が乏しく、銀冠相手に戦った記憶は無いので既に未知な将棋に突入しています。

▲2七銀と指され、△7五歩と仕掛けるまでに3分弱の時間を使って考えました。ここでは、

・離れ駒ができたこの状況で△7五歩と仕掛けるか
・△4二金を指して金無双の形にしてから△7五歩と仕掛けるか

のどちらかで悩んでいましたが、離れ駒ができた瞬間に仕掛けていくのが王道の指し方だと思うので、今回は予定外のただの右銀急戦のままでいくことにしました。

評価値:5億ノード 互角(-125)

指し慣れた手

第2図以下の指し手
▲3八金 △7四飛 ▲6五歩 △7七角成
▲同飛 △6五桂 ▲7八飛(第3図)

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△7五歩に▲3八金と固めてくるのは考えておらず、ここでも悩むことになります。△7六歩か△7四飛の2択にはすぐ絞りました。△7六歩に▲6八角か▲同銀と進むのが本筋なんだろうなあと思っていたのですが、なかなか良い感じの指し手の流れは浮かびませんでした。△7四飛はソフトの示す候補には挙がるものの最善手にはなりにくい手という認識なのですが、指し慣れているのはこっちの方です。どちらを選ぶとなったらやっぱり指し慣れている方なので、それなりに時間を使ってしまったものの飛車を寄ることにしました。

▲6五歩の反発は予想通りで角交換ももちろんの手。ここで先手は▲同桂か▲同飛の2択を迫られるわけですが、▲同飛なら△6五桂が美味しすぎる手なので▲同桂を本線に考えていました。以下、△7六歩▲6四歩△7七歩成と進んで好調と思いきや、▲8三角が良いカウンターで△8四飛▲7二角成△7八と▲6三歩成△6五桂▲5二と△同金(下図)まで進むとめちゃくちゃ難しくない…?と考えていました。改めてその進行を読み直してみましたが、正直自信が無いです。

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本譜は▲同飛だったので、こちらが多少良くなっているなと思っていました。しかし、ここで指し手に悩みます。

評価値:5億ノード 後手優勢(-988)

悩んだ末の最善手

第3図以下の指し手
△7六歩(第4図)

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6分弱考えて△7六歩を選択。この手で15分の持ち時間はほぼ無くなりました。ここでは2つの手を考えていました。今回も6回戦の自戦記のスタイルで書いてみます。

①△6九角(下図)
まず、指さなかった方の手を考えました。
▲8八飛は△7六歩が厳しい。▲7九飛は△5八角成▲同銀△6八金がぱっと見だけど▲7五歩があるのがどうなのか。飛車を逃げれば▲6六歩の感触が良さそうで、△7九金▲7四歩△8九金はこちらの感触が良くないからおそらくない。▲6八飛は△5八角成▲同飛△5七金▲同飛△同桂成▲6六角打△6七成桂▲1一角成△2二銀▲1二馬(下図)までは一直線でなんとなく考えられる。考えられるのだけど、そこで何を指すか…体感後手有利だけど手が広すぎる。そもそも△5七金に他の手を指される可能性もある。わからない。

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②△7六歩(第4図)
次に本譜の手を考えました。
▲同飛なら飛車交換して△8八飛で良さそう。▲同銀は△6六角の感触がすごく良い。取らないのはさすがにこっちが良いんじゃ…以前似たような形になった時にもソフトが△7六歩を示していたしその記憶と有利に指し進めている感覚を信じてこっちを指したい…

といった感じで考えていました。△7六歩の方が個人的には分かりやすさがあるので、良い選択ができたなと思います。

評価値:5億ノード 後手優勢(-1036)

思わぬ手に焦る

第4図以下の指し手
▲7六同銀 △6六角 ▲7五歩 △7一飛
▲6五銀 △同銀 ▲6八飛(第5図)

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第4図の△7六歩を指した直後に、ここで▲6六角(参考3図)がある可能性に気付きます。そこに先着されると意外と悩ましいです。△5五歩か△4四角か△2二銀のどれかで香取りを防ぐ流れになりますが、6六の地点は自分が先着したい場所なので気分的にはあんまり良くないです。

本譜は▲7六同銀だったので、△6六角と指せました。しかし、数手進んで▲6八飛が考えていなかった手で焦りました。△7五飛と指したいものの▲8四角があるから指せず、飛角交換されるのはまずそうと思い、他の手を考えても浮かぶのは△9九角成くらいでした。ここから少しずつおかしくなっていきます。

△7五飛は最善手でした。▲8四角には△7六飛とすれば問題ありません。どうして見落とした…

後日指摘された手で、△6六角に代えて△7七歩もありました。この後の分かりやすさを考えたらこちらの方が良い手かもしれません。

評価値:5億ノード 後手優勢(-1247)

後悔が続く

第5図以下の指し手
△9九角成 ▲6五飛 △6四銀打 ▲8二角打
△8一飛 ▲6四飛 △8二飛 ▲7四飛
△7三歩打 ▲同飛成 △6四角打(第6図)

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銀香交換になったところで指した△6四銀が後悔の一手です。△6四香なら飛車が捕まっているので、本譜のように進んでも先手が貰えるのは香車になります。かなり状況が違います。

なぜ△6四銀を指したのか…これがはっきり覚えていないのです。おそらく勘違いだと思います。勘違いとはいっても、△6四銀に飛車を引けば飛車が走れるから良いでしょと思ったのか、△6四香で飛車を捕まえられることに気付いていなかったのか…真相は分かりません。

▲6四飛の局面では、飛車を取るか角を取るかの2択を突き付けられています。△同歩▲同角成△6一飛(△6九飛)としても馬の存在が大きくて上手く指せる気がしなかったので△8二飛を選択しました。もちろん先手は▲7四飛と寄ってくるので飛車の敵陣侵入を防がなければならないのですが、△7三歩~△6四角がまたもや後悔の一手。△6四角と王手をかけてから△7三歩とした方が、難しいとはいえ幾分良かったかもしれません。ソフトによれば、△7二香(下図)がいいよとのこと。以下、▲7三銀△同香▲同飛成△6四角▲同龍△同歩まで進めば、△4九銀が発生していたりと、前述の2つの手よりお得になっています。今の自分ではなかなか浮かばなさそうです。

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評価値:5億ノード 後手有利(-441)

抑え込まれた飛車

第6図以下の指し手
▲6四同龍 △同歩 ▲7三角打 △8一飛
▲7二銀打 △7八飛打 ▲6八歩打 △7五飛成
▲8二銀打 △5一飛 ▲6三桂打 △7三龍
▲同銀成 △8九馬(第7図)

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飛車角交換から角銀を打たれ、飛車が引きこもってしまいました。手順中に△7八飛を見つけられたのは幸運で、もし指せなければ悲惨な状況になっていた可能性が高いです。また、△5一飛ではなく△7一香と指すべきでした。この手を指すことで、飛車を渡しても角を取りながら先手の銀をそっぽにいかせることができるので、非常に価値のある手になっていました。

▲6三桂と指されて飛車桂交換が確実となりました。ここでは既に有利と思っていた差が完全に無くなったと思っていました。加えて、△7三龍が暴発の手です。このタイミングで飛車を渡してしまうと、先手からすれば後手陣の攻略をしやすくなるはずなので、ここで△8九馬としておく方が確実に良かったです。

評価値:5億ノード 先手有利(+351)

急所

第7図以下の指し手
▲5一桂成 △同金引 ▲6三銀成 △5六馬
▲8二飛打 △4二金右 ▲6一飛打 △5五角打
▲1八玉 △1五歩 ▲5三成銀(第8図)

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▲6三銀成が少し緩い手のような気がし、指したかった△5六馬を指せて得なやり取りができたと思いました。「鬼より怖い二枚飛車」とは言われるものの、△5五角と設置できたことや、▲1八玉(▲3七桂なら△4五桂▲4八金△3七桂成△同金左△4五桂のおかわりで勝ちやすそう)に対して△1五歩と指せたことで、急所に手が伸びている気がしてまたこちらが良くなっているのかな?と思っていました。▲5三成銀と指されても、自玉はまだ大丈夫だと思い、1筋に手を伸ばします。伸ばしてしまいます。ここから急転直下が起こります。

評価値:5億ノード 後手優勢(-1424)

とんでもないやらかし

第8図以下の指し手
△1六歩 ▲4一飛成(第9図)

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▲4一飛成…指された時は「え、切っちゃうの?」と思いましたがそれも束の間。すぐにとんでもないことをしてしまったと気付きます。この時の私はパニック状態です。

▲5三成銀と指されても、自玉はまだ大丈夫だと思い、1筋に手を伸ばします。

と書きましたが、△1六歩だけを考えていたのではなく△5一香も考えてはいました。もちろん、指せなければ意味はありません。△1六歩と指す前に戻りたい。

評価値:5億ノード 先手勝勢(+4648)

チャンスの打ち歩詰め

第9図以下の指し手
△4一同玉 ▲5二金打 △3二玉 ▲4二金
△3三玉 ▲4三金 △2四玉 ▲2五金打
△1三玉 ▲1六銀(第10図)

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王様を追われ、金もポロっと取られ、一気に危機的状況になってしまいました。△3二玉をノータイムで指してしまっていることから落ち着きのなさが窺えます。そこは反省。

▲4三金に代えて▲4三成銀なら後手玉に必至がかかっていたみたいです。以下、△2四玉▲2五金△1三玉▲1四歩△1二玉▲3一金△2二桂▲3二飛成(下図)まで。先手玉に詰みはありません。

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自分も▲4三金を考えていたのですが、いざ指されてみると打ち歩詰めでギリギリ凌げている状態でした。この瞬間は手番を握っているので、何とかしないとなりません。

評価値:5億ノード 先手優勢(+875)

食らいつくも

第10図以下の指し手
△4九飛打 ▲1五銀 △1六香 ▲1七歩打
△1九角成 ▲同玉 △5五馬 ▲4六角打
△同馬 ▲同歩 △1七香 ▲2八玉
△4二歩打 ▲同成銀 △1九角打 ▲1七玉(第11図)

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△4九飛が最後の失着です。何かに当たっているわけでもなく、2八の逃げ道は角が塞いでいるわけで…何を思って指したのだろうか。

ここでは△4五馬ならまだ先手が良いながらも難しかったです。次の△3六馬が激痛ですが、▲2七銀には△1七歩があり、▲2七玉も△1九角成で窮地に陥ります。△4五馬のようなひとつずらすような活用は結構苦手なので、全く考えていませんでした。

▲1五銀と指され今度こそ後が無いと思った状況では、△2二桂でなんとか耐えることができていました。△2二桂自体はずっと浮かんではいたのですが、△1六香もしくは△1九角成のタイミングで指すのが良かったようです。結局タイミングを逃してしまい、攻めを暴発してしまいます。以降は、ここのかさんが適切に対処し、食らいつく手段が尽きてしまいました。

評価値:5億ノード 先手勝ち(詰み16手)

悔しい敗北

第11図以下の指し手
△1六歩打 ▲同玉 △2四桂打 ▲同金
△同歩 ▲1四歩打 △2三玉 ▲3一銀成
△2九飛成 ▲3二飛成(投了図)
まで、121手でここのかさんの勝ち

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なんとか一手違いにまで持ち込めたものの、時すでに遅し。▲3二龍で後手玉が詰んだところで投了しました。

対局を終えて

序盤:ちゃんと指せていたかなと思います。離れ駒を見て仕掛けることができたので良し。流れに沿って重いパンチをぶつけることができたのも良し。要所でしっかり時間を投入できていたのも良し。

中盤:5回戦の時にも書いた「良くなってからの指し回し」は依然として難ありです。長期的な課題でありすぐに改善できることではないのは分かっていますが、指す将順位戦という大事な対局の時に頻発してしまうのはいかがなものか…もっと中盤戦に強くなりたいです。

終盤:▲4一龍を見落とし、一手ばったりのような将棋にしてしまったのは大反省です。その後もチャンスはありましたが、食らいつき方がひどすぎました。

ということで、6回戦は負けでした。終局時は、悔しさのあまり「悔しい悔しい悔しいー!」と叫んでしまいました。まさにこんな感じ。

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これで順位は最下位になり、現時点での降級最有力候補になっているわけですが、まだ全く諦めてはいません。ここからです。この後も全力で挑むのみです。ここのかさん、改めて対局ありがとうございました!


最後に…対局相手のここのかさん、対局を見てくださった方、この自戦記を読んでくださった方、指す将順位戦の運営さんに圧倒的感謝。

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