『天気の子』はペルソナ2罪だった

※天気の子とペルソナ2罪・罰とペルソナ5のネタバレが含まれる上に、ペルソナ2プレイ済みの人にしか伝わらない感想です。

※小説版『天気の子』はまだ読んでないので、もしかしたら解釈が違う部分があるかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 TwitterのTLに流れて来た『天気の子』の感想が


・新海誠監督絶好調

・00年代エロゲーorギャルゲー 


 という物だったので、自分は新海誠監督作品を『君の名は』しか知らないし、エロゲーorギャルゲーも詳しくないので見なくてもいいかなとスルーしていたのだが、フォローしている人の一人が

 

『天気の子はホラーだった』

 

 とツイートした事で、(00年代エロゲオタ達が『分岐点でセーブしながら見た』や『原作プレイした時は感動した』とか言っているのにホラー?)と思い、気になって天気の子を映画館で見てきた。

 



 結果、見終わってから、(これ、ペルソナ2罪じゃねえか)という感想になった。

 

 


 ペルソナ2はPS2で発売されたペルソナシリーズの二作目であり、二作目でありながらペルソナシリーズの中でもかなりの異作である。

 

 そもそもメガテンシリーズ全てがRPGとして異作なのに、その中でもペルソナ2は前編の罪と後編の罰という前後編でとんでもなく異作。

 さらにはペルソナの初代、3、4、5と違い、後編のペルソナ2罰が『大人が主人公で仲間も基本的に大人』という作品で、思春期の子供の心が産みだしたもう一人の自分を武器に戦うペルソナシリーズの中でかなり浮いている。

 

だからこそ、『天気の子はペルソナ2罪だった』という感想になる。


 ペルソナユーザーからすると、どちらかというと序盤はペルソナ5を思い浮かべるもしれない。 

 主人公が東京に来ていきなり小栗旬から理不尽な大人の洗礼を喰らい、漫画喫茶では『濡らすなよ』と小言を言われ、仕事を探しても雇ってもらえず、徐々に手持ちのお金が減っていく。

 都会は怖いところで大人は厳しいという描写が多い。

 そんな中でお守りになる拳銃とヒロインの優しさに触れ、なりふり構っていられないという事で小栗旬に助けを求める。

 しかし、ここで少し待って欲しい。

 大人達は確かに厳しいが、それは本当に厳しいだけなのだろうか。


 主人公は『親が窮屈だった』という理由で島を出て東京に家出しに来たのだが、実際に親がどういう風に窮屈かという描写はない。

 『家出をしてきた』というだけで、何が合ったのかは説明されて無い。


 そして小栗旬は命の恩人である。

 もしも小栗旬が助けてくれなかったら主人公は死んでいた。フェリーの食堂でビールが高い事に嘆いていたが、命の値段と比べたら安いだろう。

 しかも主人公が家出と予想が付いていながら警察に通報せず、『困ったら頼れ』と名刺を渡してくれている。


 漫画喫茶の店員も自分の仕事が増えることの文句は言いながらもちゃんと対応をしてくれて、タオルを渡してくれている。

 あれが貸し出し用であったとしても意地悪な事はしていない。


 アルバイトの面接だってそうだ。

 確かに身分証が無い事を責められてはいるが、主人公がやろうとした風俗の受付はぶっちゃけ年齢を偽れば可能で、悪い大人なら騙してコキ使う可能性もある。なのに注意だけで済ませてくれている。


 現にヒロインは年齢を偽って働いていたし、そういう事もさせられそうになっていた。あれは大人達が悪いのではない。そういう社会の仕組みなのだ。

 大人達はその社会の仕組みを黙っておくことも出来たのに、主人公にちゃんと教えてくれている。

 勿論、後でバレた時に犯罪になるからというのもある。だけど、あれは『子供は子供らしくしなさい』という厳しさと優しさが同居している。


 主人公からしたら自分が否定されたように感じ、大人も都会も怖いものだと感じたと思う。

 だけど、あれは大人達の善意なのだ。


 ヒロインの所に来ていた児童相談所の人も婦警も善意で関わってきているし、ポンパドールの刑事も職務に沿った善意の警察官だ。銃を持った主人公を撃ちたくないと言っていた。


 バザーの大人達も依頼したお金よりも大金を渡しているし、そもそも晴れにならなくても責めるつもりはなくてダメで元々という感じだった。


 天気の子に出てきた大人達は基本的に正しいことをしている。善意で主人公達子供に接してくれている。

 だからこそ、その善意が罪となる。


 主人公達は晴れ女を商売にしてから成功しすぎた。

 最初のバザーの時に2万円も貰ったのが一番のターニングポイントだったと思う。

 あのお金のせいで主人公達は『晴れ女はお金になる』と考えてしまった。


 この辺りで自分はフォロワーの言っていた『天気の子はホラー』という言葉の意味が分かった。


 ペルソナ5で例えるなら、主人公達は『正体を隠さずに誰からの依頼も受ける怪盗団を結成した』という事だ。

 ここ最後に何が待ち受けているのかを想像して、自分はぞわっとした。

 最初に胡散臭い占い師が『晴れ女の力は使いすぎると代償がある』と言っていたのが伏線で、最後はヒロインが消えることになると思った。

 そして主人公達はどんどんと依頼を受けては天気を晴れにし、空中の水溜りや魚の様な水という異常な現象が増え、映画を見ている側に徐々に不安感を募らせていく。


 端的に見るのならば、ここまではペルソナ2ではなくペルソナ5だろう。

 良い事だと思って改心を繰り返していたという、メメントスの聖杯に騙されていた部分だ。


 だが、ここからがペルソナ5と少し違う。

 物語は進み、前作主人公が出て(これもペルソナ2要素)、主人公の家出・拳銃所持とヒロイン達姉弟の家庭環境のせいで、ようやく自分達が掴みかけた幸せが台無しになると主人公達が『思いこむ』。

 恩人の小栗旬からも『家に帰れ』と言われて手切れ金を渡され、味方は誰も居ないのだと『勘違いする』。

 それと同時に異常気象が起き、逃亡は余計に困難になり、主人公達は心身共に追い詰められていく。

 自分達は誰にも迷惑をかけていない。

 天気の事だってみんな喜んでくれていた。

 どうして大人は自分達をこうも追い詰めるのか。

 一体、自分達が何をしたというのか。


 この部分が、天気の子がペルソナ2だと思う最大の部分である。


 『天気の子』の話の中には基本的には悪人は居ない。

 居るとすれば風俗関係者のチャラ男ぐらいで、それも主人公の足を引っ掛けた事ぐらいだ。


 警察は『家出した少年を確保に来た』のと『拳銃所持の確認』に来ただけで、仲を引き裂くのが目的では無い。

 児童相談所に引き取られたら『離れ離れになる』というのはヒロインがそう思っているだけで、強制的にそうなるわけではない。

 天気を操作した事は悪い事では無い。誰も『この異常気象はヒロインのせいだ』とは言っていない。

 なのに、主人公達は『自分達のせいで異常気象になった。そして大人は信じれない』と思い込み、ヒロインは異常気象を解決するために自分を生贄に捧げ、主人公はヒロインに生贄に捧げる覚悟を持たせた事を後悔して走り出す。




 いや、最初から力の事も含めて全部大人に説明しとけよ。

 なんでそこだけ急に『分かってくれ!なんで分かってくれないんだ!僕が悪いんだ!!』って叫ぶ?そりゃポンパドールの刑事も(厄介な事になった…)って思うわ。

 

 これが主人公達を優しさで追い詰めた大人達の罪。

 児童相談所の職員がもっと強引にヒロイン達の保護を優先していたら、

 天気を依頼した大人達が子供に大金を渡さなかったら、

 漫画喫茶の店員やラブホテルの店員が直ぐに警察に通報していたら、

 小栗旬がもっと強引に主人公を管理していたら。

 そうすれば、子供達は『自分達が罪を犯した』と思う事は無かった。


 物語のクライマックスで主人公は空の上までヒロインを迎えに行き、天気よりもヒロインが大事だと言ってヒロインを天気から取り戻す。

 そして東京は三年も雨が降り続け、主人公とヒロインはそれを自分達の罪で背負うべきものだとして物語は終わる。


 この時に小栗旬が言っていたけど、東京が雨に沈んだのは本当に二人のせいでは無いし、世界を変えてしまったのは自分達のせいだと自惚れてはいけない。

 東京が雨に沈んだ事以前に異常気象についても作中では誰も『晴れ女のせいだ』と責めていないのであり、それを自分達の罪だと決め付けているのは主人公達だけである。

 全く背負わなくていい罪であり、罰を受けるのはそれを『背負うべきもの』と思わせてしまった大人達なのである。



 最終的に、お寺のおじいちゃんが言っていた、

『天気を観測し始めたのは何時からだ?せいぜい100年だろう。この絵は800年前からある』

 という事と、

滝くんのおばあちゃんが言っていた。

『東京は江戸時代に埋め立てて作った街』

 という事が結論になる。


 天気の巫女も時代によっては何人も居た存在で、本田翼も自称晴れ女だったが他にも晴れ女が居て自分の為に力を使っていた可能性だってある。

 長い歴史の中で何人も天気の巫女が色々な事で天気を操作してきたのでヒロインだけの責任でもないし、そもそもそれが悪い事だと誰が判断するのか。

 何度も書くが、東京の住人たちは不便にはしているが誰も晴れ女を責めていない。

 東京が雨に沈んだって、これはそういう物だ。元からそういう世界だと認識している。世界は変わっちゃいない。世界を変えてしまったと思っているのは主人公達だけだ。




 となると、分かるよね?

 天気の子は前後編で、これは前編の『天気の子:罪』。

 本来は背負わなくていいのに主人公達が勝手に背負ってしまった罪と、それを背負わせてしまった大人達の罪の提示の物語。



 つまり、この後に主人公が東京に戻ってくる間に雨に沈みかける東京中を周って主人公の事や晴れ女の事に付いて小栗旬が責任を取って周る『天気の子:罰』の物語があるはずじゃん?

 しかも前作主人公の二人も『不思議な体験なら自分達もあった』って言って参戦してくれるし、初代プリキュアも『力を合わせるから人間は強いんじゃない?』って助けてくれるに決まってる。

 勿論ポンパドールの刑事も仲間だし、本田翼は白バイ警官見習いでNPCとして窮地に助けに来てくれる。

 凪センパイはセンパイとしてアドバイスをしてくれる上に情報通のポジション。


 絶対あるでしょこれ。三年間の間に何かがあったのは間違いないんだって。

 映画見終わってから本当にそう思ったもん。

 『天気の子』はペルソナ2罪だった。

 だから続編の『天気の子:罰』もあるはずだって、ね?



 ペルソナ2が気になった人はリメイクだけどPSPのがあるからプレイしてみるといいよ。

 ヒトラーがヒューリーになってるのが個人的に残念だけどとてもいいゲームだから。

 噂システムも晴れ女の依頼に近いし、ペルソナ5を雰囲気暗くしてハッピーエンドかバッドエンドか分からなくしたのがペルソナ2って感じ。

 ホラーでもあり世界系でもあり00年代ギャルゲーでもある。

 ペルソナって言えば初代や3や5って言われる事が多いけど、2も面白いから。本当に面白いから。是非やるべき。寧ろやれ。いいな?

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