第三回性癖小説選手権 & 地雷選手権 大賞発表

 2021年6月16日~7月15日に開催していた第三回性癖小説選手権 と、 地雷選手権の大賞が決定したので発表をします。


◆ 第三回性癖小説選手権 大賞作品

作者名:首領首領橋(どんどんばし)さん
作品名:この世界がNTRゲーだと知った俺は過去に飛んだが、何故が女にTSした
性癖:TSドッペルゲンガー姦(TSした自分とセックスする)
性癖:特殊なシチエーションのNTR
性癖:ぐちゃぐちゃな倫理

選考理由:読んだ瞬間思わず「……優勝」という言葉が漏れたほど、とても濃厚な性癖を感じる作品でした。
 まず、性癖紹介に書かれている三つの性癖のどれもが特殊性癖と呼んでいい物で一般受けはしないだろうという感じなのですが、『TSドッペルゲンガー姦』がおねショタ物になっているのがとっつきやすく、又、お姉さん側が記憶喪失というのが同一人物であるという忌避感を薄めてくれています。そこからのショタによるレイプからの入れ替わっての逆レイプや交互に中身を入れ替えてのプレイが『どちらに感情移入をしてもTSドッペルゲンガー姦の性癖を受け入れた事になる』という一種の記述トリックの様な形になっており、エロを楽しみながら読んだ読者を自然に自身の性癖に引きずり落しています。
 NTR物も人によっては本当に物凄く気を遣う内容になるんですが、別世界の記憶によってNTRシチュになっているというのや、催眠によってNTRにはなっているが結局は自分だったという本当に『特殊なシチュエーションのNTR』な状態でNTR物によくある罪悪感がありません。これも特殊な性癖なのに受け入れやすくて凄いです。
 そして、ここで罪悪感が無いと感じてしまう事自体が『ぐちゃぐちゃな論理』に当てられて判断がおかしくなっているという事であり、読み終わってこの作品を面白かったと思ってしまった瞬間に『TSドッペルゲンガー姦』『特殊なシチュエーションのNTR』『ぐちゃぐちゃな論理』の三つの性癖を自動的に受け入れた事になってしまうのです。
 殆どの性癖小説は作品の面白さと性癖の共感さは別である物なんですが、この作品は作品を面白いと思った瞬間に提示された三つの性癖全てを受け入れてしまうという、性癖小説として目指すべき姿の様な作品でした。

 よって、今作を今回の第三回性癖小説選手権の大賞に選ばさせていただくと同時に作者の首領首領橋(どんどんばし)さんに初代性癖元首の称号を授与したいと思います。

 とても素晴らしい性癖小説をありがとうございました。初代性癖元首おめでとうございます!!!


続いて、裏性癖小説選手権 通称『地雷小説選手権』の大賞の発表です



◆ 裏性癖小説選手権 大賞作品

作者名:惟風さん
作品名:何が彼女を殺したか
地雷:自分勝手に行動して話を引っ掻き回し、事件の調査の邪魔にしかならない助手気取り
地雷:そんな足手まといを諌めるでもなくヤレヤレ顔で野放しにしている主人公その他周囲の人々
地雷:そしてそんな奴が特に傷ついたり反省することもなく許されているどころかあまつさえ幸せにまでなる世界観
地雷:百合の仲を引き裂く全て

選考理由:多数の地雷を全て消化した上で最大の地雷と見られる「百合を引き裂く全て」が高い水準で成されていたところが素晴らしかったです。
 百合に然程食指が動かない私でも「うわ……」と声に出た程度には百合を取り巻く環境が本当に最悪で、惟風さんの血涙が見えるようでした
 犯人も探偵助手も最悪で最高に胸糞悪かったです!おめでとうございます!

 惟風さんにはその苦しみながらも小説を書き終えた苦しさを称えて、初代地雷王の称号を授与したいと思います。

 こちらも素晴らしい(と言っていいのかどうか)地雷小説をありがとうございました。初代地雷王おめでとうございます!!!
 





 さて、発表は以上となりますが、折角なので毎回高齢の参加して頂いた方々に提出して頂いた性癖と地雷の一覧を並べようかと思います。​

今回提出して頂いた性癖の一覧


・普通に生活していけば素晴らしい成功を収めるはずの女性が、本当にどうでもいいようなことのためにその才能をゴミみたいな理由で擦り減らして何もできないまま終わる
・チョークスリーパー
・最愛の人から向けられる悪感情
・劣等感の強い人が唯一自慢していたものを好きでなくなる瞬間
・口移し
・何かのきっかけで垣間見える人間の狂気がぞっくぞくする。
・原因とかがよくわからないままに終わる投げっぱなし怪談(なるべく短いやつ)
・虚構作品の解説
・異常事態に淡々と対処する人
・可愛がるのにちょうどいい生首(切断面がぐちゃぐちゃしない、腐らない、見た目がきれい、自力で移動できる)
・「○○って良いよね」「私もそれ好き」という会話をすることなく、お互いがお互いの好きなモノについてを知り、通じ合う瞬間。
・タイトルだけ美しくて中身からっぽの小説
・蝶の幼虫を寝具として使ってみたい
・触手
・強面でガタイのいい成人男性が可愛いスイーツを食べる様子
・動物の形のスイーツを可哀想と思わずに容赦なく食べる女性
・中性的美少年ショタの性の目覚め
・精通前のショタの夢精報告
・お姉さんに弄ばれ気味のショタ
・父親になるショタ
・淫夢
・人食い怪生物
・美しく陰のある女性
・悲恋
・明治大正昭和の日本文学
・音楽
・同じタイプの能力だけど使用方法が違う奴ら
・強大な権力を持った一族
・瀕死の人間が最後にタバコ吸う展開
・同じものを表す複数の用語
・妙に血の気の多いバトルヒロイン
・二次創作
・BL
・捕食系セックス
・暴力表現
・ボコボコになる黒髪長髪の男(体格は普通~良い・顔がいい・被虐気質・出来るだけ可哀想な過去持ち・長髪は肩より長めでひとつにまとめられる程度でウェーブ可むしろOK)
・暴力に躊躇いのない攻め
・情景・風景描写
・冬
・特に何も起こらない話
・いちゃらぶ
・理解のある配偶ぴ
・けもみみ
・身体加工
・おねショタ性行為とその結果の妊娠
・眼鏡男子
・無防備な瞬間
・なにかが芽生えるとき
・ピアノを弾く男、およびその手
・好きな音楽の共有
・やまなし おちなし いみなし
・女装
・テンプレ展開
・歪な異性交流
・鬱要素のないやさしいせかい
・生贄願望
・気が合い、話も合うけれど、一番大切な価値観だけが相容れない男女の恋愛
・状況とは無関係に美しい世界
・人格の複写(他者の意識や記憶を複写して移植されたキャラクター)
・異形の赤子(既存の人間の埒外である赤子)
・難解なことを口にする女(not 意味不明)
・人類を支配する存在(場合によっては神や悪魔と呼ばれる者)
・双方向の「お前がいないと生きていけない」
・後追い心中
・大局の中で揉まれながらも最後には結ばれる
・真面目攻め×甘えた受け
・生モノ創作
・自分のことを攻めだと思ってる人同士の百合カプ
・VTUBER(箱推し)
・男らしい女顔の美形
・いっぱい食べる男の子
・カッコよく煙草を吸う人
・男のクソデカ感情
・TSドッペルゲンガー姦(TSした自分とセックスする)
・特殊なシチエーションのNTR
・ぐちゃぐちゃな倫理
・与えられたお題を消化しながら小説を書く
・種付けおじさんが幸せになる
・人間卒業
・夜が明ける描写
・歪んだ愛情で成り立つ百合
・重い過去を背負っている
・恐怖に誠実
・架空のインタビュー
・フェイクドキュメンタリーホラー
・メタ展開
・注解、注釈
・夏目漱石
・辞書で調べた言葉
・空を飛ぶ巨大な魚類
・怪獣
・巨女
・ハオルチア(植物)
・擬人化
・瞳の綺麗な描写
・人外との温度差(物理)
・甘やかされる
・欲情とは掻き立てる想像力
・主従の二人がくっつくまで100話くらいかかってほしいけどその間にも先に身体はくっついていてほしいし何ならそのせいですれ違ったり互いに傷ついたり苦しんでじれじれしながら最後はハッピーエンドを迎えることが約束されたすれ違いセックスをする主従性癖
・本心を話せず、セックスをしても心の奥底で喜びながらも「これは相手(従者)にとっては義務だから仕方なくやっていることなんだ」と思い込んで絶望する主人受け
・人前では親しい言葉遣いをするのに従者をしているときは有能な丁寧敬語で、主人を一番大切に思いながらも暗い欲望を抱えつつセックス中に高負荷がかかっても主人のために耐える従者攻め
・自分の身分のために義務として従者とセックスしなければいけないことに葛藤する受け
・自分で自分のことを道具扱いする攻め
・心はまだくっつかないけど先に身体をくっつけなければいけない事情があって、そのせいで互いの溝が深まっていくすれ違いBL
・年上の幼馴染
・ニーハイソックス
・お姉さんに甘やかされる
・意外な一面
・悪役
・散り際の回想
・価値観のズレてる人外
・愛されすぎて逃げられない
・ミステリっぽい手法が使ってある一応ミステリラインのスコシフシギっぽい変則的な小説、はやい話が乙一作品
・わけのわからない二度見設定がどんどこ展開される上に説明があんまりないがなんか読んでしまう小説、はやい話が川上弘美作品
・生命、宇宙、死などやけに壮大なものを基本思想としつつ時には個人にまで落とし込めるような世界観の創作物、はやい話がACIDMAN
・セルフ二次創作、一次っぽくいうならリライト・リメイク
・人外に飼われる人間

 全部で45作品117性癖でした。
 第一回は47作品104性癖、第二回は27作品72性癖となっており、第一回の性癖アベレージ2.2(作品数/性癖数)と第二回の性癖アベレージ2.6に比べて第三回は第二回と同じ性癖アベレージ2.6で作品数は1.7倍とかなり濃い結果です。
 性癖小説選手権は毎回様々な性癖を提出して頂いているんですが、三回ともなると皆さん慣れて来たのか性癖を複数提出されたり、『〇〇』だけでなく『〇〇な◆◆』みたいな具体的な性癖を出す人が多く、そういう方の作品ほど内容が濃い傾向にありました。
 きっと、普段の作品では性癖を出せずに溜めてしまっている方がここぞとばかりに性癖を詰め込んで作品を作って頂けたのでしょう。こうやって自分の性癖に正直な作品を出せる場を作った甲斐があるという物ですね。


今回提出して頂いた地雷の一覧


・一見正しそうなフェミニズム小説など
・一人称が「あたし」の倫理観がおかしい女の子(ただし猛烈にコレジャナイ感がある)
・自分勝手に行動して話を引っ掻き回し、事件の調査の邪魔にしかならない助手気取り
・そんな足手まといを諌めるでもなくヤレヤレ顔で野放しにしている主人公その他周囲の人々
・そしてそんな奴が特に傷ついたり反省することもなく許されているどころかあまつさえ幸せにまでなる世界観
・百合の仲を引き裂く全て
・とっとと本番に行かないエロ小説
・飲食物を粗末にする描写
・Hシーンで1人の男性が女の子2人を相手にし、女の子同士が絡むシチュエーション
・Hシーンで男女ともによく喋る
・精神疾患を扱いながら安易に問題を解消するハートフルな小説
・受け手に直で悪意をぶつけてくる露悪的メタ作品
・視野狭窄な正義感に酔いしれ、自省することなく突っ走る者
・そうした人物が歪な成功体験を積んでしまう話
・なんでもホモフォビアって言えばいいと思っている人
・人に迷惑をかけるタイプのメンヘラ
・手垢のつきすぎた上に工夫のないホラー
・そもそもホラーに対して誠実じゃなく何かに利用するやつ
・ホラーのくせに怖くする気がないやつ
・ガバガバな霊能力設定
・霊能者がハイパー解説することで真実が明らかになるやつ
・成人とティーンエイジャーの恋愛要素
・ゲイが異性愛に「目覚める」やつ
・恋愛ものじゃないのに男女バディとなったら見境なく恋愛にするやつ
・同じ表現が近くで重複していたりする読みにくい文章
・面白くない話

 全部で8作品26性癖でした。
 地雷アベレージは3.2とかなり高く、地雷小説を書いている人の怒りが伝わって来るようです。特に複数の地雷が書かれている作品は最初から全部書かれていたのではなく、作品を書いている内に(これも地雷だ!!!)という感じでどんどん追加されていった様に感じられました。
 ここまで苦しんで書いたいただけた事に感謝です。この経験はきっと何かの力になるはずです。



第三回性癖小説選手権 & 裏性癖小説選手権を終えて

 第三回性癖小説選手権と裏性癖小説選手権にご参加頂いた皆さん、ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。
 今回で三回目となりました性癖小説選手権ですが、いかがだったでしょうか。
 今回はエロやグロや暴力表現ありの18禁OKの開催にし、全作品45作品中7作品が18禁の作品でした。
 18禁の作品はどれも性癖のアピールが凄くて、今まで18禁NGのサイトで我慢して書いていた部分を解放して生き生きとして書いているなぁこの作者さん……という物がいくつかありましたね。18禁だから性癖力が強いという訳では無いのですが、作者の性癖によっては18禁OKの方が文章が映えるという感じです。
 もちろん、18禁ではない性癖小説も濃い内容の作品が多く、どの作品を大賞にするかにとても迷いました。
 三回目ともなると性癖小説を書く事に慣れて来たのか読んでいるこちらが性癖に飲み込まれる様な物ばかりで、最後の方は一作品読んだら性癖をフラットに戻す為に他の事をしないといけない程でした。
 大賞は性癖小説として優れている作品を選ばさせて頂いたのですが、折角なので個人的に好きだった作品を三つ紹介したいと思います(本当はもっとありますが際限が無くなるので三つだけ)

 この三作品です。
 ぶっちゃけどれも性癖が趣味だからです。ジュージさんの『楽園の犬』に関してはジュージさんが提示した性癖では無くて募集された性癖ですけれど(というか自分がこれで書いて欲しいと送ったお題なので当然)
 触手は無条件で好きなんですよね。触手物ってだけで贔屓しちゃいます。
 アカシックチャイルドは古典SFを思い起こさせる書き方と内容で物凄く好みでした。宮塚さんに出して頂いた作品は三作品とも好みだったので性癖のセンスが近いのかもしれないですね。
 楽園の犬はもう全体的に好きです。こんな酷い内容を笑顔で書けるジュージさんの性格も好きです。流石トカゲちゃんですね。血が冷たいのでしょう(誉め言葉)

 そして今回初開催となった裏性癖小説選手権 通称 地雷選手権 は如何だったでしょう。
 わざと自分が嫌な作品を書くというのは本当に気持ちが疲れる物で、地雷小説を書かれた人たちがツイッターで呪詛を零しているのを見てすまない事をしたと思いながらもワクワクしてしまいました。自ら苦行を行う修験者の生き方は美しいですよね。眺めている分には。
 裏主催もその様子を見て嬉しそうにしていた様ですし、先程も書きましたが参加された方はきっとなんらかの力が身に付いているはずです。胸を張って下さい。



 それではこれにて第三回性癖小説選手権 & 裏性癖小説選手権を終了致します。
 ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。そしてお疲れ様です。副主催もお疲れ様です。

 今回の性癖小説選手権はこれでおしまいですが、予定通りなら次は年末ぐらいに行いたいと思います。
 次も今回と同じ様に18禁OKな物にする予定ですが、裏性癖選手権はどうなるか未定です。


 さて、最後はこの言葉で絞めたいと思います。
 初参加の人も、常連の人も、これだけは覚えて帰って下さいね。

『他人の性癖を笑ってもいいが馬鹿にはするな by dekai3』

 また年末にお会いしましょう!

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