短編小説「K3彼女」
~DAHON K3という折りたたみ自転車の物語~
「こいつに決めます!」
夕方電話をもらい、会社帰りに直接店に寄る。
飾られている自転車には目もくれず、部屋の奥へと向かう。
少し薄暗い整備室には所狭しと整備用品やパーツが陳列されている。
空気が乾燥しているからなのか、チラチラと舞う埃が細かい光の粒と化し、メカニカルな部品達に反射して綺麗だ。
吐いた白い息が晴れたその時、室内中央にそいつはひっそりと佇んでいた。
ピンポイントライトで照らし出されているそれは小柄で華奢で、それで