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なる安で工業ミシンを買うということ

買ってからセットアップしたあとずいぶん放置していた441クローンミシンでしたが、細針とフィードドッグスロート幅狭化したら日常作業に使えるくらいになって俄然やる気に。

タイトル画像は釜のニードルガードの研削研磨前後、針は最下点です。左の買ったまんまの状態はネット上にある他の441クローンと比べて幅が広い。フックが針糸を拾うタイミングと高さを適正に合わせてから針最下点にすると、針の糸穴がニードルガードに完全にかかってしまうので「ああこれはニードルガードの形状のせいだな」と。

残す面

養生して残す面にもマスキングテープを貼り、これを削らない目安と

研磨まで。

研磨ベルトおろしたて10秒で切れるのワロタ、モノタロウ経由の購入なので交換してもらいます。

このときに奥にある釜隙間調整のためのスペーサーミカヅキですが、向きがあります、うちのは逆組みしてあったのを下の動画で学習しひっくり返しました。タイトル画像でいじってる圧縮バネ入りネジ2本の説明で、「他のディーラーでは締まってるとこから1回転戻す、と説明してるが締まった状態でバネストロークが残ってるからゆるめておく必要ない、意味わからん」とおっしゃっております。うちのは全締めするとバネが底付して遊びがゼロになりますからミシンを組んだ工場の違いですよ、このひとのクローン441は良いやつ、うちにあるのはミカヅキの向きも含めだいぶんダメなとこで組まれてる。わたしは安いのを見つけ買ったからこういうのはあって当然。

次の動画はオーストラリア。Cowboyディーラーで厚さ違いのJuki純正ミカヅキの代わりにシムを製作して敷くんですが、2分15秒くらいにちょっと逡巡したあと逆に装着。1分15秒の分解するとこをみると元々は正規の向きに装着されてます。これは解説動画としてはヤバい間違いなのでコメント入れときました。手慣れてるひとが説明している風情の作業動画なんですが、動画撮影のため幾度も練習しただけの俳優が演じ、セリフをしゃべってる疑惑も。この場合でもすんなり聞ける口頭説明のほうがミシンいじりより難易度が高いですから、インチキすんなとは言えませんが裏組みはマズい。とは言えこの動画の音量が低すぎなのは意図的なのかも。Youtubeボリュームいっぱいで聞き取れないまま、PCでの音量調整はせずスルーしました。他の動画も見ると俳優ならもっとセリフ回しがうまいしボディランゲージや視線移動、表情を使うのでそっちのセンはハズレ笑

さて、フェイスが厚いまま出荷されてたニードルガードを削ったのと裏組みしていたスペーサープレートひっくり返したあと試し縫い。そっちと無関係っぽいが気になったのは上糸のささくれ。上糸コーン中通しで撚りが増える方向に補整したり、通常の糸立の上出しの糸通しを試したりしていたんですが、この時点では中通し、針の糸穴より上流の撚りがキツイのがマズいかも。上糸コーン中通しってなに?→去年くらいでたジューキ製のやつ、必要要件を最低限満たす低コストの構造…驚愕の構成パーツ1枚。理屈をわかってない、説明する気も当然ない構成になってる気がしますけど、現場を回るセールスがこのテのパンフを置いていき、説明を求められたときまんま復唱するんだろうけど嫌われますよ、縫製業界に限ったことでなく。

DURKOPP ADLER厚物ミシンで中通しをだいぶん先にやってたのをみたわたしはテフロンチューブに通す方式で作ってます。D/Aでもこれに関して一切説明をしてないからオリジナル発想でなく、どこかから仕入れたネタを頂戴したのかも。

どうなってんだ?
軸を貫通して下から

上の糸掛けが要らずセットアップが簡単になるので全てのミシンに付けましたが、水平左釜のポストミシンだと糸撚れが逆なのでつかっちゃだめかも…441の場合はシャトル垂直釜なので、釜がグルグル回り続ける普通のミシンほど糸ヨレはないかなあ…いや上糸がボビンを巻くのは同じだ、違うのはたぶんその向き。水平左釜と同じような…これだな、普通の糸立ての通し方に戻して縫ったら上糸のささくれ解決。

そしてもう表裏がわからないくらいの縫い目。バックタックだけダメなので縫い目の美しさには中押え底のキールが有効なんですね。
れっきとした「なる安ミシン」がここまで立派になって笑

糸撚れの差について最も分かりやすいのは2本針水平釜のステッチ比較です。この場合左釜右釜以外の条件は同一の縫い目が平行してるから糸撚れの差が一目瞭然。
こういうのをちゃんと説明してある書籍が皆無なのがなんとも、のミシン業界、外国語圏でも同じです。よその国の機械や糸通しを模倣コピーしたり。よその国で作らせて自社ロゴ貼って売ってたSingerのころから体質が悪く、自分とこで設計してないから説明できないよね。

まとめ

安いなりにいろいろあります。高く買えば"いろいろ"は起こりにくい、とも言えないですけどね。
クローンもいろいろ、動画参考するミシンディーラーのレベルもいろいろ、を実感した話でした。このニードルガードについて検索する過程でみたアメリカの革ミシンディーラーのブランドロゴや塗色のミシンではちゃんと加工したニードルガードがついていました。

製造段階よりも売ったりメンテしたりする側の問題のほうが大きいような。日本では安く売り販売後のアフターサービスはしない業態が流行ってますね。もちろん表向きはそんなこと明言してない。電話での口頭説明を超える調整が必要となるレベルの不具合・クレームが生じた場合、返品・返金対応のほうがバックヤード人員が不要になりコスト削減。代替機との交換をしたがらないのは、代替機も同じ問題を抱えてる可能性が高いから。よって表向きは代替機=在庫は無く右から左に売れてることにしたほうがゴネられにくい、というスキームですかね。
よその機械調整を請けるミシン屋もありますが、「しらんがな」が真っ当な反応でしょう。そもそも革ミシンがわかるミシン屋は東海道・山陽道の都市以外にはほぼ無く、地方の人は、通販でミシンを買う前提なわけで。
漉き機の場合はクローンが801系機種しかないので単純ですが、ミシンは最新バリバリ機種以外では中古と、合法クローン新品とがある感じ。