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葦(あし)からず、CANE(ケイン)

(938文字)

葦や籐のような硬い茎を持つ植物のことを、英語で
「cane(ケイン)
と呼びます。サトウキビは英語で
「sugarcane(シュガーケイン)」
だし、花が美しい
「canna(カンナ)」
の名も
「cane」
に由来します。映画祭の開催地として有名なフランスの観光都市
「Cannes(カンヌ)」
は、葦が沢山生えていたことからその名が付きました。

「cane」
はその茎が管になっていることから、管状または筒状のものを表す言葉も多く生み出しています。体内に液体を送り込む管状の医療器具
「Kanüle〔独〕(カニューレ)」

砲弾を発射する筒である
「cannon(キャノン=大砲)」

元々は送水管の意味だった
「canal(カナル=運河)」や「channel(チャネル=海峡)」
(テレビの「チャンネル」も同じ単語で「伝送路」の意味)

グランドキャニオンでお馴染みの
「canyon(キャニオン=峡谷)」

と、小さなものから大きなものまですべて「管」仲間。

ファッションブランド
「Chanel(シャネル)」

の名は、創業者の
「Coco Chanel(ココ・シャネル)」
の姓ですが、彼女の先祖は水路のそばに住んでいたと考えられます。

「cane」は様々な道具を作るためにも用いられました。
「canister(キャニスター)」
は本来は葦で編んだかごのこと、
「canon(キャノン)」
は葦などから作った定規が原義ですが、そこから
「基準」「規範」
を表す用語として、宗教、音楽、美術等の様々な分野で使われています。なお、日本を代表する電子機器メーカーである
「キヤノン」
の名は、創業当時に発売したカメラの製品名
「KWANON(←観音)」
に音が似ていて、かつ意味も適している単語として、この「canon」を採用したものです。

なお、日本語の
「葦(あし)」は「悪し」
に通じることから、
「ヨシ」
とも呼ばれます。似たような言い換えの例には
「スルメ((賭け事で)摩るに通じる)」を「アタリメ」

「梨(無しに通じる)」を「ありの実」
と読ぶ例があります
こち亀でお馴染みの地名「亀有」も昔は「亀無」でした。
江戸時代の遊郭として有名だった吉原も、元の地名は
「葦原」
なんとカンヌと同じ意味です。面白いですね!



語源シリーズ、次回もお楽しみに!


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