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日本クスクス党 第四話

「はぁぁ...やっと一日が終わった。」

汗ばんだシャツは煙草の煙を吸い、朝のスタートから今日の終わりまでの疲労を、その匂いと皺が物語る。

満員電車に乗り、何の役にたつのか皆目わからぬ資料をつくり、得意先にチクりと嫌味を言われ、高層ビルの窓外に映える夕日を見ながら「こんなもんか?我が人生」と、ふと考えもする。


「あぁ、今日という日が終わってしまう。。。」

海では、今日最後の波を、余すことなく愉しもうと、夕暮れまで粘ったサーファーが懸命にくらいつく。それを見ながら、先の大きな改革以前は、日々を経過させるためだけに生きていた虚しい自分を振り返り、今の幸せを堪能する。

日本クスクス党の革命以降、この国の人々は超楽観的な民族へと変わった。いまや満員電車どころか、鉄道は30分に一本程しか走らない。オフィスビルはテナントの退去が進み、取り壊された分、東京の空は広くなった。


やがて、残された時間を一秒たりとも悔いなく生きようと、人々の意識と行動は変化する。夜な夜な宴が繰り広げられ、能天気な会話が繰り広げられる。もはや、テレビもYoutubeもいらない。

そんなこんなで、「ビジネス<能天気な暮らし」へとシフトした国は楽園に見えたのだが、その実、じわりと危険な領域へと近づいていた。

国際競争力の下落は、幸福度の下落に繋がる

街を支えていた道路や水道などの公共インフラ、生きるための取り合いにならない食料や衣料、そして深夜でも安心して出歩ける治安は“じりじり“と悪化する。

「モノやサービスを創り、使って、経済と日々の暮らしを循環させる」

そんなこれまで当たり前とされてきた暮らしが根底からかわり、経済と国の潤いが衰えると、並行して人々の暮らしはギスギスとしてくる。毎日夕日を眺めていても、片手にビールは行き渡らず、満足感が足りない。

「そろそろかのう?」クスクス党の党首は時代の流れを察知し、次の打ち手を決めた。

骨抜きにされ、身体能力と楽観性だけが伸びた日本国民に、「クスクス党の理念」を浸透させるべく、表向き明るく賑やかで、その実、将来を行き詰まらせる政策。

まずは「フードトラック」を多数用意し、ラテンのリズムに乗ってクスクス料理やラム酒やジンをベースとした酒類を振る舞う。

これには路上でヒマしてる国民たちがこぞって駆け付けた。そしてその場でクスクス党の革命戦略と、それにより民にもたらされるハッピーな生活を洗脳して行く。お気楽な民衆は、いとも簡単にクスクス党の手中へと収められるのであった。

~つづく~

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