子どもの未来を変える教育を

 2022年、高校の学習指導要領が全面的に改定される。文科省が言う、改革の本丸である。そこで、「論理国語」という新科目が、選択科目ではあるが登場する。その内容はともかく、「論理」という文言が「国語」に付けられたことは画期的である。
 四十年近く前、私は予備校の教壇で国語の論理の教科だと断言した。当時、そのような馬鹿げたことをいう人間は高校の教師にも予備校の講師にも全くといっていいほどいなかった。そして、案の定、私は至る所でパッシングを受け続けた。国語は文学的なものであって、それと真逆な論理などけしからんというわけである。
 その後、私の参考書等は累計1300万部を超え、最近は国語が論理であるという考えは主流になりつつあるという。そして、今回国語が論理の教科であると、国の方針として決められたということである。ゴールが明確になった今、幼児童期から国語を論理的に教えることが急務だが、大方の塾、幼児教室は旧態依然の詰め込み教育をしている。それも当然のことである。今まで国語は読書をして、問題練習を数多くこなせばそれでいいとしてきた指導者が、明日から突然論理的に国語を教えよと言われても、おそらく途方にくれるばかりであろう。
 国語を論理の教科として体系づけるまで、私は数十年の積み重ねをしてきたのだから。

 私は今幼児童教育に力を注いでいる。なぜなら、子供たちが社会で活躍する頃には今とは全く異なる社会が実現しているからである。すでに記憶と計算はコンピュータの仕事、漢字の書き取りはワープロが自動変換、近い将来、英語は自動翻訳機が格段と進歩して、三〇カ国語がほぼ完璧に翻訳できるようになるという。
 AI時代に必要なのは論理的な読解力であり、旧態依然の詰め込み教育では子供たちの創造的な脳を破壊してしまうだけなのである。
 脳科学の発達により、子どもの脳は6歳までで大人の脳の機能の80%、12歳までで100%完成するということが分かってきた。言わば、中学生以上はすでに完成された脳の教育、小学生までは脳を育てる教育なのである。
 小学生までは脳を自在にデザインすることができる。そのような大切な時期に、ただ答を疑うことなく記憶させ、言われるがまま機械のように計算させるだけの教育は、新しい時代に適さない脳を作り上げてしまうのである。
子供たちの教育を決めるのは親の責任である。大きく時代が変わるこの時に、親は自分の子どもを守るために、何よりも学ぶことが必要なのである。

 私は人生の残りの時間をかけて、幼児童教育を変革しようと決意した。子どもたちの未来のために、そして、日本の将来のためにも。日本中に新しい学びの場を広げていくつもりである。まずひとりでも多くの人たちにAI時代にふさわしい新しい教育を理解してもらうために、「2歳から12歳の脳がグングン育つ! 論理の力(水王舎刊)」を刊行した。本来あるべき未来型の教育は既存のものとはあらゆる場面で真逆であり、本書を一読すればおそらく納得していただけると思う。
 また実践の場として、「出口式みらい学習教室」を立ち上げた。西新宿に直営教室を、さらにフランチャイズの全国展開を開始した。現在、七十ほどの教室がいきなり全国各地で立ち上がり、翌年にはその倍以上になる予定である。
 「教育」とは先生が答を持っていて、子供たちがそれを疑うことなく模倣する、古い時代のやり方である。「出口式」では主役は教材とマニュアルであり、子供たちが自ら発見し、自ら学ぶために、先生はファシリテーターの役割に徹する。また保護者同伴であり、子どもを通して、古い教育を受けてきた親も新しい時代に備えるために学ぶのである。
 また幼児期に国語と算数、あるいは、英語を別個のものとして学ぶことも適切ではない。論理を土台にして、国語と算数、あるいは、国語と英語を同時に学ぶのである。
 今、子供たちの読解力、語彙力、思考力の著しい低下が深刻な問題となっているが、これは漢字教育の失敗である。書き取り中心の漢字教育が子供たちから言葉を奪っていったのである。「出口式みらい学習教室」では、漢字は書き取り中心ではなく、意味を持った言語として、その論理的な使い方を徹底的に習得していく。
 多くの塾や幼児教室は古い時代に適応していたから成長したのであり、またそれ故、新しい時代には適応しなくなる可能性が高い。だから、実績や知名度で学びの場を選択することは非常に危険なのである。
 そういった意味で、幼児童の保護者対象の新しい学びの場も提供していく。DMMオンラインサロンにおいて、「出口塾」を立ち上げた。真剣に学ぼうとする人たちの集まりであるから、私もそこでは本音で語り、新しい情報をどんどん公開していく。
 私は本気で今、この国の教育を変革していくつもりである。
                             出口 汪

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