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ななしいんく『太陽と月とエトワール』Shiny Day・Secret Night両公演を見てなお沁み出す恨み言

※かなりお気持ちです、ご注意ださい。


はじめに

 ななしいんくの2か月連続ライブ『太陽と月とエトワール』が終わった。前半の『Shiny Day』は2023年6月10日、後半の『Secret Night』は同7月17日に行われた。
 コンセプトの異なる2つのライブを2か月連続で行うということで話題になったが、その前半が始まる頃のななしいんくといえば、グループ統合に始まりタレントの卒業や引退等々荒れに荒れており、どちらかというと騒動の方で注目されていた感が否めなかった。
 そんな状況の中でも、両ライブをはじめ様々なイベントを成功させてきたタレント達と、ななしいんくそのものに対して思うことを書いておこうと思う。

両公演のコンセプトとメンバー

 対照的なコンセプトとされている『Shiny Day』と『Secret Night』だが、何がコンセプトなのかは明言されておらず、ライブのタイトルやメンバーから推察するのみだった。そこで双方のメンバーを改めて見ようと思う。まずは『Shiny Day』から。

<『Shiny Day』6月10日(土) >
⻄園寺メアリ・季咲あんこ・柚原いづみ・瀬島るい・飛良ひかり・橙里セイ・家入ポポ・瑚白ユリ・狼森メイ

https://www.774.ai/post/774live2023etoile

 太陽組に相応しい弾けるような元気を持つ、またはほんわかとした温かみを感じるメンバーだと感じる。しかし、歌やダンスがあまり得意でなかったり経験が浅いメンバーもおり、果たして大丈夫だろうか?という不安もあった。
 対する『Secret Night』のメンバーは以下の通り。

<『Secret Night』7月17日(月祝) >
宗谷いちか・堰代ミコ・風見くく・龍ヶ崎リン・獅子王クリス・茜音カンナ・涼海ネモ・紫水キキ・蛇宵ティア

https://www.774.ai/post/774live2023etoile

 こちらはそれぞれ飛び抜けた実力を持っている。5月の『Sing up』に出演したいちか・リン・カンナ・ネモが全員揃っているし、ミコ・くく・クリス・キキも歌が上手い。そして歌では一歩譲るティアだが、ダンスは素晴らしいものを持っている。全員がエースで4番といったところだろうか。

作りたい物の明確さ

 これらメンバーを見ていると、パフォーマンス以外にも差があるように感じられる。それは、作りたい物の明確さだと思う。

 月組は先に行われた『Sing up』のメンバーがそのまま入っていることもあり、歌手のライブのような雰囲気になることが予想された。一方、ダンスが得意なメンバーはそれを披露することになる。
 また各メンバーの振り返り配信を見る限り、かなり活発な議論が行われたようである。全員が意見をぶつけ合うことで「これをやりたい」「これはできない」という基本の部分は比較的早い段階で固まっていて、「もっと良くできないだろうか」という、発展的な内容を詰める段階までできていたのではないだろうか。
 事前のななしいんく演劇部配信などもあって、期待は大きかった。しかし公演が始まると、確かに歌は上手いがいまいち世界観を構築しきれていないと思ってしまい、前半は冷めた目で見ていた。
 状況が変わったのは後半に入ってからである。特にSound Hrizon『朝と夜の物語』に圧倒され、「見て良かった。おそらくこれが公演の目玉だろう」と思ったのだが、その後にも「馬と鹿」をはじめ、感動を呼ぶ曲が怒涛のように押し寄せてきた。「エモい物ができると思う」と語ったメンバーの言葉通りだった。総じて『Secret Night』はとても満足度が高いものだった。

 こうした世界観の構築という点において、太陽組には弱さを感じた。
 太陽組が目指したものは「元気いっぱいに歌って踊る姿を見に来てね!」という、いわゆるアイドルのライブであると思う。全体の雰囲気で観客を吞み込もうとする月組とは違い、太陽組が観客を引き込むには突出した実力やカリスマ性を持つメンバーが必要になる。だが発表されたメンバーを見ると、やや不安を抱いたのだ。
 一番の不確定要素は狼森メイであった。元シュガーリリックのメンバーということもあり、どちらかと言えば月組に入れられそうだが、名を連ねたのは太陽組であった。歌声は良いものを持っているメイだが、日が経つにつれダンスに苦しんでいることが明らかになっていく。正直心配になるレベルだったが、それを支え、励ましていく各メンバーの様子も、太陽組の良さであると思えた。
 そして本番のライブは見ていて元気になれるもので、歌も上手いし意外性もあって、大変良いものであった。今振り返ると、困難を乗り越えてステージを作り上げていった努力や助け合いの過程、それゆえに溢れる涙に、太陽組の「エモ」を感じたのかもしれない。
 最初はメイの出演予定が無かったことは、振り返り配信で語られている。おそらく欠員が出たのであろうが、その頑張りはもっと評価されるべきだと思う。

 こうして振り返ると『Shiny Day』は確かに良かった。しかしライブを作品として見た時の完成度で比較すれば、『Secret Night』に軍配が上がる。
 では当時の状況で『Secret Night』のみが行われていたら、チケットを買ってまで見ただろうか?と問われれば、答えはNoである。

『Shiny Day』あっての『Secret Night』

 グループ統合以降、私はななしいんく運営に対して大きな不信感を抱いていた。それでもななしいんくを見続けているのは、タレントに魅力を感じたからである。一歩間違えば害悪となる立ち位置であることは自覚していた。そして今後、許容できないことが起こった時には、すぐに去ろうと心に決めていた。

 それからというもの、ななしいんくの配信を見る頻度は明らかに低下した。私の心には悲壮感と喪失感が渦巻いていたが、それでも太陽組の頑張りは届いていた。その姿に心を動かされ、「色々あるけど今回は見よう、それから今後のことを決めよう」と、チケットを購入した。
 そして開演した『Shiny Day』は、ただ元気で明るいだけではなかった。タレント自身が自分たちの置かれている状況を理解し、「それでもどうか見に来てほしい、絶対元気になるから、楽しませるから」という気持ちが伝わってくるようだった。このことが、私の心構えを変えた。ずっと渦巻いていた負の感情の、大部分を吹き飛ばしてくれた。

 先ほども書いたが、当時の状況で『Secret Night』のみが行われていたら、私は見なかった。太陽組の多くのタレントの姿勢が、私の心と合致した。そこで心が満たされたから、「じゃあ月組も見てみようか」という気持ちにさせてくれたのだ。私にとって両公演は、どちらも欠けてはならないものとなった。

ライブに至るまでの出来事

 『太陽と月とエトワール』は、まだグループ統合がされていない時期に参加者の募集が行われたという。時期的に2022年の冬、またはもっと前のことと思われる。そこで2022年末頃からの大まかな出来事を並べると以下のようになる。

  • 2022.12.03:ななしふぇす2022 "JUMP!"開催

  • 2022.12.17:狼森メイ・蛇宵ティア活動開始

  • 2022.12.末:グループ統合について一部メンバーに情報が入る

  • 2023.01.08:ブイアパ解散

  • 2023.01.31:小森めとが「ぶいすぽっ!」へ移籍

  • 2023.03.19:グループ統合の告知

  • 2023.03.21:グループ統合実施

  • 2023.04.11:太陽と月とエトワール開催告知

  • 2023.04.17:周防パトラのライブに関する返金対応告知

  • 2023.04.22:天羽衣・いなうるう・日向ましゅ活動開始

  • 2023.04.25:不磨わっと引退

  • 2023.04.29:周防パトラ Solo LIVE “kawaii holic shibuya”開催

  • 2023.04.30:Vtuber Fes Japan 2023開催

  • 2023.05.03:NANASHI Sing up vol.1-Sparkle-開催

  • 2023.05.09:周防パトラ卒業

  • 2023.05.29:大浦るかこスタッフ転向

 私はグループ統合付近からの対応で、大きく不満に感じていることがある。その最も大きなものが、『都合の悪いことはギリギリまで隠す』ことである。隠す、と書くと悪意があると思われそうだが、都合が悪いが公表せざるを得ないことを、周囲が飲み込むしかない時期まで公表しないことは、隠蔽と同義である。
 発表から2日後に実施したグループ統合は、その象徴的な出来事だ。もっと前から知らされていれば多少のクッションもできたであろうに、足場を失った視聴者が落ちたのは岩場だった。「周知期間を設ければ反発にあい労力を割くことになる」と判断したためかもしれないが、結局はスポークスマンになれる「ななし」がいないため、各タレントが矢を浴びることになった。

 性急すぎる印象の統合には、親会社の株主総会、さらには(グループ活動させるつもりだったであろう)新人3人のデビューも影響していたのかもしれない。
 重要なのは、ここまでの出来事で「ななしいんくの運営は不義理」という印象が付いてしまったことだ。視聴者の気持ちを置いてきぼりにしただけでなく、タレントに楯も鎧も持たせず矢面に立たせたことによって、タレントのことを守る気がない事務所だと思われても仕方がない。
 「まもなく新人がデビューする事務所に辛辣な言葉を浴びせるな」と物申すタレントもいた。確かに新人が見たらショックを受けるかもしれない。が、それを呼んでいるのは一体誰だろうか。

 その後4月17日に、周防パトラの個人ライブに関して、予定のクオリティを達成できないため返金対応をする、という文書が発表され物議を醸した。
 パトラは統合時のマイクラ建築祭において、統合に反対したことを語っていた。パトラの動向には注目していたが、この返金騒動で運営と発注先、さらにはパトラとの連携不足が疑われた。つまり、既に運営はパトラに対して非協力的で、マンパワーを割いていないが故のミスなのではないかということである。上記年表でグループ統合の話を聞いた「一部メンバー」には、パトラも含まれている。ちなみに因幡はねるも統合の話を聞き、グループを無くしたくないという意向を伝えたと語っている。
 その後ライブは開催されたものの、結局パトラは個人勢として独立した。2023年3月頃には意向を固めていたという。パトラを支えていたマネージャーは連絡が取れなくなっており(4月のライブの3か月前と言っているので1月頃から)、代わりに新人マネージャーが担当したという。こうしたことから、マンパワーを割かないのではなく、割きようがない状況のではないかと言われていた 。

 パトラが独立する数日前には、パトラの自作曲に関する著作権の扱いを事務所が誤り、パトラの収益が一部停止されるトラブルがあった。ななしいんくでは過去にも、ライブで上演した曲の音源がDVD・BDに収録されないことがあり、権利上ディスク化することができなかったのではないかと言われていた。こうしたことが重なり、ななしいんくには法務担当がいないのではないか、という噂も立った。

 そして5月の終わりには、大浦るかこがタレント活動を無期限休止し、スタッフに転向するという発表がされた。ここでも何の反省もなく、発表は実施の2日前だった。
 各タレントの雑談配信などにおいて、るかこが頑張っている様子を聴くことができる。また『Shiny Day』の無料配信枠において、視聴者の誘導が不適切な部分をるかこが修正したことが知られている。

グループは無理だった、だとしても

 『太陽と月とエトワール』は、「もしかしたら」グループ統合をしたから実現したのかもしれない。ライブの構想が持ち上がったのはグループ統合前と思われるが、統合の構想も並行して存在していたとしても不思議ではない。
 このようなグループを超えたライブは、グループが存在し、その枠を越えるからこそ価値がある。しかし、もし統合が無かったら、ななしいんくのグループは従来のまま活動できたのか、と考えると、Yesとは言えない。

 社名の知名度や箱内グループの問題などを指摘する人は他にもいるので、それはそちらを見て頂きたい。一視聴者で素人に過ぎない私が感じていたのは、グルーブメンバー同士の不和である。色んな点から客観的に見れば、誰もが「ななしいんくのグループ存続は不可能」という結論に行きつくのだ。

 しかしそれでも、グループ統合であれだけ心を抉られた自分がいる。今際の際まで延命措置を望む、危篤患者の家族のように。最後の一秒まで頑張って、それでも駄目だったら諦めるしかないけど、どうか先生お願いしますと、懇願せずにはいられなかった。なのに全てのグループは、店じまいもお別れ配信もなく雲散霧消した。ストーリー性の欠片も残らなかった。

 「過去を否定するものではない」といった文言は、最初から書かれていた。月組のメドレーで、パトラの曲やシュガリリの曲が歌われた時は大いに盛り上がった。
 しかしその盛り上がりは、今回こうしたケースが初めてだったから得られたのだ。今後同じ事をしても同じ盛り上がりはないし、曲の残弾も限られている。今、活動しやすい仲良し同士が集まったとて、今までと同じストーリーを持たせるのは無理なことだ。
 おかしなものである。元あにまーれが動物モチーフである理由も、元ハニストが悪魔の姿である理由もなくなった。
「あなたがた、どうしてそんな格好しているんですか?」
 そんな言葉すら浮かんできた。

おわりに:「今できる最善」の足元には

 私はもはや、「グループ統合は必然のこと、仕方ないこと、既に済んだこと」という視点が受け入れられず、そういう立場に立てないのだと思う。
 『Shiny Day』のライブは、確かに暗い気持ちの大部分を吹き飛ばした。しかし、それで全てが帳消しになったわけではない。これからどんなに楽しいことがあっても、統合から続いた悲しみや不満といった暗澹たる思いが、きっと心の底に渦巻き続ける。タレントには感謝すらしているし、人員不足で働き続ける「ななし」達にも(結果が不十分なことばかりだが)恨みはない。しかし事務所を許す日は、恐らく来ない。

 ゲームで言えば、トゥルーエンドに向かっているのだと思う。傷付いてしまうけど、こうするしかない。ここから頑張るしかない。そういうシナリオがあるんだろう。
 そのシナリオの結末は、「私と推しとの別れ」になるんだろうか。今はまだシナリオが進行中だが、ちょっとしたことでエンディングを迎えそうな、そんな気がする。

 特に月組のライブ後の振り返りで聞かれた言葉に、『このライブはグループ統合したからできたんだと思う』というものがあった。
 実際、そうなのかもしれない。客観的に見て正しいとも思えるし、統合前は視聴者には分からない障害があったのかもしれない。そして統合前に戻ることはできないし、今できる最善を尽くすしかないという、正しい道を歩んでいると思う。

 その道にはどうだ。心臓を抉られた私が埋まっているぞ。

 この先も「グループ統合したからできた」という出来事があるんだろう。好きに重ねればいい。必要な犠牲だったと言わんばかりに、新たな楽しいことを積み上げ、そのたびに「統合してよかったね」と口走るのだろうか。
 私の恨み言は積み重なる地層に押し込まれ、誰にも見つけてもらえない化石となって終わるだろう。それでもこの痛みを忘れられない。みんなと一緒に「よかったね」と言った方が幸せかもしれないけど、私が好きだったもの、大切にしたかったものは、別のものだ。私の思うことなど有象無象にすぎないだろうが、反対派などいなかったかのように振る舞い、少しも寄り添う姿勢が見られなくなれば、それがお別れの時なのだと思う。
 土中から手を伸ばして足首を掴むような真似はしない。ただ、好きだったものを消された悲しい記憶が、残り続けるだけのこと。踏むならどうぞ踏んで行け。

(2023/07/22 一部修正)

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