ライブ感想 - 太陽と月とエトワール ~ Secret Night
はじめに
2023年7月17日、ななしいんくの2か月連続ライブ『太陽と月とエトワール』の後編『Secret Night』が開催された。6月に行われたライブ『Shiny Day』の感想はこちら。
今回は『Shiny Day』とは状況が違うため、もう少し厳しめの目で見ていた。だが、歌唱力の高いメンバーが揃ったステージはさすがのクオリティだったし、ダンスも大変良かった。
視聴前の印象
前回の『Shiny Day』の印象が個人的にとても良く、Twitter等でも好意的に受け止められていると感じていた。そもそも6月時点では、グループ統合以降のあらゆる対応のまずさで、『ななしいんく』自体への評価が大きくマイナスに振れていた。そんな逆境を跳ね返すかのように、6月のメンバーは元気いっぱいのステージを見せてくれた。
それを踏まえての『Secret Night』は、ニュートラルな評価がされるべきイベントだ。視聴者のメンタルとしても、実力派揃いのメンバーの歌声を正当に評価し、楽しめる状況になっていると思う。
クオリティはさすがの一言
歌はもう大変素晴らしく、全員がそれぞれの個性を遺憾なく発揮していたと思う。今回のメンバーの中では、歌唱は一歩譲るという印象のクリスとティアだったが、あくまで比較の話であって立派なステージだったと思う。クリスは敬愛する周防パトラの曲を自分流に歌い上げ、ティアは得意のダンスをしっかり見せていた。
大ボリュームの『朝と夜の物語』
ティアの本領発揮は後半のSound Horizon『朝と夜の物語』だ。バレエのような美しいダンスに魅了された人も多いのではないだろうか。この曲を歌う5人の魅力が惜しみなく詰め込まれ、7分を超える大作でありながら、まったく長さを感じさせないどころか、もっと見ていたいとすら思わせるような魅力あるステージに仕上がっていた。
対を成すような『馬と鹿』
一方、他の4人で歌われた米津玄師の『馬と鹿』も素晴らしいハーモニーだった。曲に合わせて切り替わるバックの映像とは対照的に、椅子に座る2人と寄り添う2人が歌いあげる、まさに歌手のライブのような、あるいはMVのような、思わず聴き入ってしまう歌だった。
気になったこと
無理にノリを求めない
ライブのコンセプト的にもどうかと思ったのだが、客席が温まりきらない序盤からコール&レスポンスを求めるのは再考してほしい。歌声で観客を陶酔させられるメンバーが揃っているのだから、温まってから煽れば自然と歓声は出るはずだ。
タレント以外の問題
舞台転換について。特に前半、20~30秒の長い暗転が度々発生した。どうしても時間がかかってしまう場合、明転や映像を駆使する等、観客の熱を下げない工夫が必要となる。後半はかなり短縮されたし、メドレーの切り替えは素晴らしかったので、非常にもったいなかった。
カメラについて。会場全体を映すカメラとスクリーンの相性が良くないようで、『Shiny Day』の時よりモアレが酷く映像が荒れていた。たとえばティアのダンスのハイライトシーンでは、手持ちカメラから画質の悪い会場カメラに切り替わってしまい、見ていて歯痒かった。
総評:実力派揃いの素晴らしいライブ
今回のライブの1つの特徴として、ソロ曲がメドレーのみだった、という点を挙げたい。通常、グループで行うライブにはソロ曲があり、抜きんでた歌唱力を持つタレントが力を見せ付ける、ライブの花形である。しかし今回は、メドレー以外は全て2人以上で歌われた。
これが個人的には大変良かったと思う点。ライブの尺は決まっていて、全体曲は動かせない。だから9人全員がソロ曲を歌えば、ユニット曲が削られてしまう。それではライブならではの楽しみが減るし、かと言ってソロ曲を減らすと、ソロが無いメンバーの主役感が薄まってしまう。
ソロを尺の短いメドレーにしたことで、各々の好きな歌を歌い、その歌声を楽しませる。そして他の曲は複数人で歌うことで、まるで有名歌手同士が1日限定ユニットを組んで歌うような、ここでしか聴けない掛け合い、ハーモニーというプレミア感が生まれた。
そんな精鋭ぞろいであるとはいえ、『Shiny Day』の成功の後のライブであり、プレッシャーは大きかったことと思う。それでも彼女たちの持つ強みをしっかり活かし、『Secret Night』──密やかな夜を最大限に盛り上げ、美しい歌声とダンスで魅了してくれた。素晴らしい一夜だった。
おわりに
個人的には、余計なことを気にせず楽しめるライブだった。今後、後日談をはじめ色んなところで噴出する物があるかもしれないが……少なくとも開演前から「何やってんだよ運営!」と怒鳴りたくなるようなことは目にしなかった、はず。
『Shiny Day』と『Secret Night』は、2つあって初めて成り立つライブの両輪だったと思う。皮肉にも、ななしいんくにまつわる一連の出来事が、そのことを際立たせたように思える。そして、『Shiny Day』が先で『Secret Night』が後という順序で良かったと思う。少なくとも私の心に溜まっていた黒い靄は、太陽組の頑張りのおかげでかなり晴れた。それがあったから、月組のライブも見てみようという気持ちになれたのだ。
皆さん、本当にお疲れ様でした。どちらもとってもいいライブでした。いずれまた、素晴らしいライブを見せてくれることを楽しみにしています。
(敬称略)
(2023/07/20 一部加筆・修正)
セットリスト
※独自調査。誤りがあったらごめんなさい。
星空のエチュード(いちか、ミコ、くく、リン、クリス、カンナ、ネモ、キキ、ティア)
空想メソロギヰ(ミコ、クリス、キキ)
死ぬな!(リン、ネモ)
レディメイド(くく、カンナ)
響喜乱舞(いちか、ティア)
宵々古今(いちか、くく、カンナ、ネモ、キキ)
悪魔の踊り方(ミコ、リン、クリス、ティア)
Twilight Stream(カンナ)※M8~M16はメドレー
ハートサーモグラフィー(クリス)
言っちゃった(キキ)
UGE CHAN MARCH(リン)
ミドリなリンゴ(ネモ)
君と未来(ミコ)
トリミングアイランド(くく)
UMenity(いちか)
Fall In Mystery(ティア)
Back to the Masquerade(いちか、ミコ、くく、リン、クリス、カンナ、ネモ、キキ、ティア)
WWW(いちか、カンナ)
獣ゆく細道(くく、リン、キキ)
寝・逃・げでリセット!(クリス、ティア)
朝と夜の物語(ミコ、くく、カンナ、キキ、ティア)
夜明けと蛍(ミコ、ネモ)
馬と鹿(いちか、リン、クリス、ネモ)
サマータイムレコード(いちか、ミコ、くく、リン、クリス、カンナ、ネモ、キキ、ティア)
瞬間イマジネーション(いちか、ミコ、くく、リン、クリス、カンナ、ネモ、キキ、ティア)
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