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ショートショート  憎しみ


 ミサトは今日も仕事帰りにブックオフに立ち寄った。

 カウンターに袋から取り出した本十冊、合計で六百円だ。

 「憎しみから解放される方法」「憎しみを手放して」「憎しみは愛情の裏返し」

 などなど、全部真面目に読んで試してみた本だ。だが成果は、なかった。

 それどころか、消えたフリをしていた憎しみは、どんどん増幅して

 突然、変な場所で変なことを喋りまくったり、心がヘナヘナになるまで落ち込んだり、暴飲暴食に走ったりで、手に負えない状態になっていた。

 しょうがない、そう思い「憎しみ」と一緒に生きようと思った。

 夜、眠る前に、ミサトはノートに書き出した。

 月が出ていて、少しリラックスできた。

 自分がされたこと、言われたこと、丁寧にちゃんと思い出した。

 ノートは一冊で収まらなかった。

 ミサトは、呟いた。「自分、こんなに我慢して頑張ったんだ」

 錯覚かもしれないけど、月がいつもより綺麗に輝いて見えた。

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