OpenAI CEO サム・アルトマン氏が立ち上げた暗号資産プロジェクト、Worldcoinとは? (part 1)
先月上旬、ChatGPTを開発したOpenAI社のCEOサム・アルトマン氏が来日して岸田総理と面会し、話題を呼びました。AIイノベーションの先鋒に立つ人物として全世界から注目を浴びていますが、彼が大規模な暗号資産プロジェクトの立ち上げに関わっていることをご存知でしょうか?
その名も「Worldcoin」。前半のこの記事ではWorldcoinの正体、そしてアルトマン氏を筆頭とする開発者チームが目指している世界像について説明します。
Worldcoinとは
2020年にOpen AI CEOサム・アルトマン氏がアレックス・ブラニア氏と共同で創立した暗号資産プロジェクトです。去年3月にはAndreessen Horowitz(a16z)やCoinbase Venturesなど著名VCから合計約130億円を調達済みで、さらに新しく最大150億円規模の資金調達を計画していると報じられています。
現在はベータ版で、サービス開始は今年の前半に予定されています。ローンチ前の段階から世界中で160万人以上の事前登録が完了していて(5月8日時点)、すでに一大プロジェクトに成長しそうな勢いを見せています。
公式サイトでは、Worldcoinは特定のユーザーが自身の唯一無二を証明するだけで取得することができる世界初のトークンと定義づけられています。
本人登録方法は独特で、眼球の虹彩をOrbと呼ばれる独自のマシンでスキャンすることによって、正式な登録が完了となります。
Orbによってユーザーが実在する固有の人物であること、以前にWorldcoinに登録したことがないかどうかが確認されます。
同じ虹彩パターンを持つ人は2人とおらず、虹彩パターンの偽造は非常に困難であるため正確に個人を識別することができる、という理由でこの識別様式が採用されています。
Worldcoinの開発意図を読み解く
アルトマン氏は、今後AIなどの新興テクノロジーによって生じる労働市場の変革に対する緩衝材として、UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)が人々の生活支援のために必要だという考え方を示しています。
UBIに積極的な政府も存在するものの、財源などの諸問題によって導入に踏み切れていない国や自治体がほとんどです。今後も世界を牽引していくと予想されるOpenAIのCEOとして、アルトマン氏はAIに仕事を奪われた人を救済するグローバル規模のUBIを提唱する必要性を感じているのではと考えられます。
以下、公式ブログからWorldcoinのパーパスについて読み解いていきましょう。
Proof of Personhood (PoP)とは、ユーザーが「唯一無二の個人である人間」であることの証明を指し、
1)同一人物による重複登録を防ぎ、UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)や社会保障などのリソースを公平に分配すること
2)AIによって生成された無数のコンテンツの氾濫を防ぎ、フェイクニュースや誤情報の大規模な拡散を食い止めること
の2点を可能にします。この手段として挙げられているのが、World IDというオープン・アイデンティティ・プロトコルです。
これは所持者のデバイスに存在するデジタル・パスポートのようなもので、ゼロ知識証明*を用いてユーザーが個人情報を開示することなく、自身が唯一無二の人間であることを証明できます。(World IDの具体的な機能については、part2でご紹介します)
WorldIDの具体的なユースケースとしては、次のようなものが挙げられています。
ソーシャルネットワーキング:ボットなりすまし耐性、コミュニティマネジメント、コンテンツ作成元認証
投票:選挙投票、DAO投票、オンライン世論調査における透明性確保
マーケットプレイスの健全性確保:商品の偽レビュー、不正取引防止
資金分配:政府による社会福祉・暗号資産のエアドロップ・UBI給付時の公平性担保
これらの場面においてWorldIDはユーザーのProof of Personhoodを確認し、人間に偽装したボットによるなりすまし・デジタル空間での身分詐称を防ぐためのデジタル・パスポートとして機能します。AIが完全に社会に普及した将来を見据えた「人間性証明」を可能にするトークンです。
part2ではこのプロジェクトと関わりが深いweb3のDID領域に触れたうえで、World IDの具体的な利用方法について解説していきます。
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(勉強会:北野、文:山田)
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