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「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」展

今月から始まった
「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」展を観に
SOMPO美術館へ。

色相環でいうところの
黄緑から青にかけての
色の扱いが本当に美しくて目が逸らせず、
色彩という意味に於いては
2021年見たアート作品の中で
一番こころが揺れました。

1929年に描かれた『別府の朝』は
特に、深く静かに美しく…
研ぎ澄まされた作家の感性に対して
感謝の念すらうまれます。

こういった人が世の中に存在し
自らの才能を発露する機会を受けた事の素晴らしさ。
悲しい事件も多いけれど
世界はやはり素晴らしい✨と思うのは
こういう瞬間。

明治時代に生まれ
大正、昭和と版画作品を
作り続けた川瀬巴水さん。

自分の中で版画というと江戸時代に活躍した
葛飾北斎や歌川広重といった
浮世絵作家のイメージがあまりに強く
ある種の固定概念として
インプットされてしまっていたのだけれど、
今回ことごとく覆され、
はじめてまっさらな気持ちで
版画を鑑賞したような感覚に陥りました。

江戸時代と近代日本は
どこかプツンと時代が区切られたように
捉えがちだったのだけれど
あたりまえだが
一年一年の積み重ねで繋がっており、
版画の世界だって江戸時代後期と
明治の初期は繋がっている。

ふたつの時代を跨いで活躍した
職人がいて、版元がいて、作家がいる。

明治にも大正にも、僕が生まれた昭和にも
版画は連綿と存在していて
「東海道五十三次」と同じ技法でつくられた
その数々の作品の中には、
いつしかガス灯が登場し
電線が通り、
人々は和服を脱ぎ、洋服を身につけ
高層階の建物が
描き込まれるようになっていました。

現代、日本のアートシーンで版画は
決して一番目立つ存在ではないけれど
今日見た版画作品の数々の奥には
日本アニメの作画や色使いの原型を感じたし
構図や色彩は僕らの美意識の中に
確実に刷り込まれていると感じました。

SOMPO美術館の展示の最後では
Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズさんと
川瀬巴水さんの関係が語られていて、
今僕が毎日使っている
iPhoneやMacBookのUIUXの後ろ側には
版画がもつ潔さという特質が
反映されているのだと知った。

本当にこの展示を
観ることができて
幸せでした😊

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