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マジェンダの君へ。③

夜学の高校生の中には、少し大人の人や不良丸出しの人や品の良い学生もいる。制服ではないので、当時はハマトラがニュートラか丘サーファーか着ている服を見れば何となく分かる。私は、一つ年下の同級生の男の事2人と常に一緒に居た。私が、一人の男の子の事が好きでもう一人の男の子は好きな子の友達というか、必ず着いてくる「角谷」という子だった。
男の子二人は、仕事をしておらず夜学だけ来ているのんびりライフの人でサーファーだった。私は、好きな男の子(やっちゃん)に誘われればほいほい着いていく、ど暇女である。やっちゃんの家は大久保でパチンコ屋さんをしていて、そこそこ裕福であるというのにやっちゃんはいつも寂しそうだった。角谷は父親しかおらず酒浸りの父をそりが合わないらしい。私も、母親の飲酒で参っていたので、家出するならやっちゃんちへGOだ。
水曜日の定休日には、朝早くに湘南あたりへ電車に板を運んで波乗りに行く
私は、ラジカセから流れる山下達郎を聞きながら波の巻かれている二人を眺めていた。やっちゃんの気をひきたくて当時流行っていたハイレグ水着を着たあの海。電車の中で、やっちゃん」と角谷の間で居眠りする瞬間もドキドキしていた。顔は可愛いけれど、瞬間大人びた笑顔を浮かべるやっちゃんに影を感じる。学校ではやっちゃんは、モテモテで年上の同級生の女性がやっちゃんに甘えている声をわざわざ教室内で聞かせている。
私は、気持ち悪くなり屋上へと煙草を吸いに行くと角谷が後ろから着いてきた。年上の同級生の女の人は、モデルをやっているらしくポスターもあるそうで、何度かやっちゃんちで見せてもらったと、嬉しくない情報をくれた。
学校帰りにやっちゃんちに入り浸ると、母の付き合っているウエスタン野郎
と私が呼んでいる男が探し回る。父親つらして意見を述べるのだ。その男は赤坂で英語教師をしていて、スタイルはカントリーウエスタン。深夜母が仕事で居ないのを良いことに、電話で英語の女口説きをしているのだった。私はふすま一枚奥の部屋で、聞き耳を立てながら英語のヒアリングをただでさせてもらったわけだ。ある日、私は母にちくりをいれた。
「貴方が居ない時間に、女の人と英語で話しているけど大分ディープな関係のようだよ」と。このウエスタン野郎は、仕事がうまくいかず私たちの家に転がり込んできている為、母と私が彼を養っているわけだが納得が私はいかなかった。大人の男なら働けよ…情けない奴だ。
そんな生活も長くは続かず、ある日ウエスタン野郎が自分のバカでかいソフアーを一人で運び出し、その最中に母親が11Fのマンションから彼のボストンバックを駐車場の車の屋根に投げつけるという事件で終わった。
事の発端は、私の洗濯ものをチェックするウエスタン野郎が私の下着に着いたシミを見て「下半身の病気かもしれない」と母親にアドバイスをしたことだった。気持ち悪かった、使用済みのパンツを見て調べているという行為は変態だと私は思う。母は、逆上し彼のワイシャツをベランダで燃やし最後はボストンバック落下事件だ。高田馬場のマンションで大騒ぎになったあの夜
ウエスタン野郎は、ソファーを運びエントランスで警察官に事情を聴かれていた。警察を呼んだのは私で、もう二度と私の前に現れてほしくなかったんだ。やっちゃんの事も調べていてやっちゃんとの交際禁止令が出ていた。やっちゃん自身が、私と距離を開けたいと言ってきたので事実上ふられたのだ。雨の夜やっちゃんが、私を自宅まで送ってくれた。

傘が1本しかなくて私に刺せよというけど、私は帰るやっちゃんに傘を使ってほしいと頼んだ。せめてそうしたかったのだ。
(もう会わないんだね)心の中で強く思ったら悲しくて、雨のしずくに紛れて私は泣いた。楽しかった、あの学生生活の思い出や新島へ行ったあの海の美しさも今は、漆黒の雨に打たれて流されている。
そんな最悪の状態のまま、更に最悪の状態に追い込まれるとはこの時は知らなかった。私は何かの罰が与えられたのだろうか・・・・+.

私の望む世界を自分なりに表現したいと思います。大体実話でございますのでよろしければ、読んでいただけましたら小躍りしたいと思います。足が不自由になってからより書きたいと思う事が増えてまいりました。私には背中に翼があることを隠せない性分なのです☆