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Big Star - Radio City

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Big Starの『Third Album(Sister Lovers)』を聴いている僕の手元には今、『William Eggleston's Guide』がある。本作は今やニューカラーのパイオニアとして知られる国宝級のフォトグラファー、William Egglestonを一躍有名にした写真集だ。

カラーフィルムという手法で写真芸術の新たな時代のはじまりを告げる作品群がとらえたのは、消えゆく古き良き時代の面影である。その革新的なスタイルで綴られたノスタルジックな世界は、『Third Album(Sister Lovers)』でAlex Chiltonが描いた心象風景にも重なるはずだ。『Third Album(Sister Lovers)』は、『William Eggleston's Guide』の優れたサウンドトラックだと言えるかもしれない。

ニューカラー、あるいはオルタナティブロックのパイオニアといったスタイルに注目が集まりがちだが、両者に共通するのは音楽として、あるいは写真としての本質的な美しさである。このアルバムに影響を受けたと自称する後の世代の音楽に欠けていたのは、まさにこの部分。斬新な表現スタイルなどに感心する部分もあるにはあるが、そこには繰り返しの鑑賞に耐え得る面白さはない。

Big Star関連の再発が進む昨今、William Egglestonの写真をジャケットに起用して決定版的な『Third Album(Sister Lovers)』をリイシューして欲しいような、して欲しくないような(単に金銭的余裕がないから)。というわけで、3rdに引き続きターンテーブルに乗せたのは『Radio City』。僕が一番好きなBig Starのレコードだ。

Live盤をのぞけば、Big Starのオリジナルアルバムで唯一、William Egglestonの写真を掲げた本作のジャケットは、写真の配置と余白、モダンなフォントの組み合わせが、Jeff Beck Groupの『Beck-Ola』などを想起させなくもないが、いずれにせよミステリアスで、旧世代にはないオルタナティブな感性が表現されたアルバムにふさわしいデザインだと言える。僕がはじめて手にした90年代初頭においても、それはとても美しく、輝いて見えた。

そもそも、このアルバムがリリースされた当時、1976年にMoMAで個展が催されるまで、William Egglestonはまだ全国的には無名だったはずで、そんな彼の作品を起用したのは、William Egglestonの飲み仲間だったとされるAlex Chiltonのアイディアなのだろう。あるいは、酒の席で強要されただけなのかもしれない。しかし、我々には、その美しい出会いに必然性を見出してしまうのである。

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