Twin Peaks - Lookout Low

画像1

Robbie Robertsonが8年ぶりの新作を発表したり、2016年に出版された自叙伝をベースにしたドキュメンタリー映画「Once Were Brothers:Robbie Robertson and The Band」が公開されるなど、世間はバンドブームならぬ、ちょっとした“The Band”ブームである。

The Bandが、どのような人たちにより結成され、何を目指し、何を成し遂げたのか--。それについては多くの人が述べているし、そこに付け加えるべきこともとくにないので省力する。The Bandが世界中(とくに英国)にもたらした影響についてもしかり。個人的に興味深く思うのは、同時代の、あるいは後の音楽家たちが捉えたそれぞれの「The Band」像である。

The Bandの魅力は、ルーラルとアーバンの融合、あるいは両者の絶妙なバランスにある。それは、田舎者が上京し精一杯に背伸びして演奏するまがい物の都市の音楽ではなく、田舎者が田舎にいながらにして己のルーツを探求することで普遍性を獲得した音楽だ。だからこそ、米国以外に暮らす若者、そして現代の米国の若者をも魅了するのだろう。

新作『Lookout Low』で古色蒼然とした音像を描いてみせた米国シカゴのバンドTwin Peaksは、そんな若き米国人音楽家の象徴的存在だ。彼らの興味は今、古い時代--といっても1970年代だけど--の音楽に向かっている。1990年代生まれの彼らにとって1970年代の音楽を“発見”する感覚は、1970年代生まれの僕が1950年代のロックンロールやビバップに受けた衝撃にも近いはずだ。

そうした感動の記憶をカタチにするときに、何をエッセンスとして取り込み、あるいはオミットして、アウトプットするのか。その取捨選択がバンドの個性の一端を担うのだろうけど、Twin Peaksら現代の若手音楽家はただ、サウンドのテクスチャーやメロディ、あるいは少々粘っこいリズムなど、あくまでThe Bandの表層的な部分をなぞっただけのようにも思える。

いや、それだけじゃないと思わせる何かがある。その何かとは、過去の遺産はもちろん、同時代の音楽への眼差しであり、グループと個のバランス、メディアとの関わり方など、ざっくりと言えば彼らの「佇まい」だ。そこにこそより大きな影響を感じるのだ。

端的に言えば、イージーな連帯を選択するのではなく、個の追求によって世界と繋がろうとする姿勢である。それは全盛期のThe Bandが表現したものでもあるし、現代の若者の心意気を表しているようにも思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?