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Big Star - In Space

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“Big Star”について、Robyn Hitchcockはかつてこう語ったという。

Knowing about Big Star was like the secret handshake.

この言葉はおそらく、70年代におけるBig Starの立ち位置を表現したものだろうと推測する。70年代半ばに瓦解したBig Starは、当時すでに知る人ぞ知る伝説的存在だったはず。だからこそ、Chris StameyやRobyn Hitchcockなどのように、Big Starに心酔する者同士の連帯感には特別なものがあったのだろう。

“Big Star”はなぜ“特別”だったのか。もちろん、商業的成功とは無縁とか悲劇的なストーリーとか、マニアが喜んで消費しそうなアンダーレイテッドな存在感だけではない。何よりレコードに刻まれた音楽が、Robyn Hitchcockら芸術的感性に優れた多くの表現者を魅了したからである。

そこで描かれたのは、70年代の若者が漠然と感じていた未来の世界だ。新たな価値観の提示、あるいは現体制への違和を表明するかのような、少しだけ歪んだ世界である。Alex ChiltonやChris Bellがどこまで自覚的だったかはわからないが、 #1 Radio Cityで表現された世界に、若き音楽家らは答えを見出したはずだ。

その後、80年代になって徐々にその影響力を拡大させていくことのなるのだが、“Big Star”という表現の輪郭を模倣しただけの後のオルタナティヴ・ロック勢は、(極端に言えば)ほとんどがBig Starの出涸らしだ。残念ながら、この作品についても、そう批評する人も少なくない。

Big Starの作品として聞けば、凡庸な作品でしかないかもしれないが、Alex Chiltonがらみの録音物として聞くならば--彼らしいファンクチューンや、R&Bのカバー(The OlympicsのMine Exclusivelyとか)、バロック音楽など--"In Space"は、Alex Chiltonらしさ満載の愛すべき作品だと評価することもできる。

このようにアンビバレンツな作品ではあるが、“Big Star”という響きに特別なものを感じる人にはオススメしたい一枚である。

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