Eric Kaz - If You're Lonely

都会者の音楽というものがある。

いわゆる“センスの良さ”というものは、生まれつきに備わるのではなく、後天的な環境によって醸成されるもの。つまり、生まれた場所がその人のセンスに与える影響は、ほとんど決定的だ、と田舎者の僕はそう思う。

想像してほしい。近所に映画館や芝居小屋、ジャズ喫茶がある環境で育った者と、車で30分くらいの距離にかろうじてチェーン店系の書店がある程度の環境で育った者との会話が噛み合うだろうか。その文化的な落差は絶望的だ。という話に、いまいちピンとこなかったり、今はインターネットがあるから、そんな情報格差など〜などと反応できる人は、おそらく都会者なんだろう。

その埋めがたい格差を知る田舎者は、都会者の香りにとても敏感だ。たとえば、Eric Kazの1stソロアルバムに針を落としたとき、イントロ--都会者らしい洗練と奥ゆかしさ、そしてコスモポリタンな感覚が凝縮された、あのイントロだ--の数秒を聴いただけで僕はピンときた。ああ、この人は都会者なのだと。

日本におけるこの作品の評価の高さは、日本人の“センスの良さ”を示すものではなく、我々がただ都会者の香りに敏感な田舎者であることの証なのだ。田舎者万歳!

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