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【検証】 『不可解参(想)』のK.A.F.DISCOTHEQUEで花譜は何メートル上昇したのか?

はじめに

 こんばん花譜ぃ〜! オオグソクムシです。

 2023年3月4日開催の不可解参(想)、楽しかったですね。いま、このnoteを書きはじめたのは4月10日午後9時を少し回ったあたり。アーカイヴの公開期間が残り数時間で終わるというところです。

 見納めにと思って最後にもういっぺん観てみましたけれども、やっぱり楽しいものでした。どうせフル3DCGだから現実武道館でできないこと全部やってやるぜといわんばかりの大ふざけが爽快で、画面の前で何度も笑いました。日本武道館の天井をぶち抜いて鉄骨のクソデカタワー建てたら怒られるし、そこらへんの交差点を破砕して破片ごと空中浮遊したらもっと怒られるもんな。終盤におけるイヲリ=カンザキの大演説も、なるほどそういう考え方をする人だからこそであるなと、読解力に欠ける私でも認識できるいい機会でした。(ある意味で、俺の中でのイヲリ=カンザキの「答え合わせ」のようなもの)

イヲリ=カンザキ。なぜ彼が人間として登場できたのにEMAが変な球体になったのかは後述する。

 ところで、アーカイヴを見返すなかでひとつ、気になることがありました。それは、

K.A.F. DISCOTHEQUE、上昇しすぎじゃね?

 ということ。

 武道館アリーナ席のオタクどもを養分として育った『概念武道館 大樹』なるデカい木の前で歌い終えた後、花譜の乗っていた円形のステージは上昇を始め、概念武道館の天井を越えて、『超構造体』の内部、『記憶の器』へと突っ込んでゆきました。そして始まったのがK.A.F.DISCOTHEQUE。花譜や可不にまつわる曲がメドレー的に流れ続け、ガラス張りのエレベーターがぺかぺかと光りまくる中で、花譜が延々と踊り続けるのを眺める時間です。オタクも画面の前で踊るのだ。

大樹。エモい。
超構造体。さすがに笑った。一番下に小さく見えるのが日本武道館。マジかよ。
K.A.F.DISCOTHEQUE。(狂)に引き続きのコーナー。綴りがややこしい。

 さてここで問題になるのが、K.A.F.DISCOTHEQUEの間も、このエレベーターは上昇を続けているということです。アーカイヴでは、1時間6分6秒から、1時間16分59秒まで、つまり、10分53秒にわたって上昇し続けていることが確認されます。

 11分間もエレベーターで上昇し続けた経験はありますか。私はないです。たとえば、東京タワーに設置されているエレベーターで地上からメインデッキ(150m)まで登るのには45秒、東京スカイツリーに設置されているエレベーターで地上から展望デッキ(350m)まで登るのには50秒しかかかりません。

 ざっくりこれらの10倍以上の時間を上昇し続けていたことになりますが、なるほど、どれほどの距離を上昇したのか、気になってきますね。実際、目測からは、相当な高さを登ったのではないかと思われます。ワクワクするぜ。

 前置きが長くなりました。そういうわけで、K.A.F.DISCOTHEQUEのあいだ、花譜は何メートル上昇したのか、ざっくり検証していきます。

 なるべく丁寧に書こうと思ったら思ったより長くなってしまいましたから、結果だけ読みたいという方は『考察』か『まとめ』まで読み飛ばしてください。ただ、やってること自体は高校の物理基礎の範囲を逸脱しないので、サクサク読めるとは思います。

一緒に踊ってくれますか?

手順

ざっくりした手順は以下の通りです。詳しくは逐次解説します。

  1. 花譜の身長を推定する

  2. エレベーターの高さを推定する

  3. エレベーターの速さを推定する

  4. ①~③をもとにエレベーターの移動距離を推定する

 長さを測定することが多々ありますが、特筆ない限り、ペイントソフト上で直線を引いたときになんか下のほうに表示される数字を使います。

 読めばわかるとおり超アバウトな測定になりますが、どうせ既にアーカイヴ公開期間は終わっており、合法的な追試は不可能なのだから、誰にも文句は言えないと思います。はい。ごめんなさい。もうちょっとはやくやっておけばよかったです。ごめんなさい。はい。

 ではどうぞ。

検証

① 花譜の身長はいかほどか?

 『記憶の器』の中で、絶対的な基準として用いることのできる量は、時間花譜の身長だけです。

 全編3DCGという性質上、画面に映るすべてのオブジェクトの大きさと速度は自由自在ですから、たとえば、エレベーターの箱の一般的サイズを検索することは無駄ですし、エレベーターの速さを調べることにも意味がありません。
 つまり、長さにおいて、花譜の身長という基準を設定することではじめて、その値を用い、他の物体の大きさを相対的に算出することが可能になるのです。(ライブの最中に花譜の身長が変化することはここで考えません)

 というわけで、花譜の身長を決定しましょう。以下、花譜の身長をLとします

 しかしながら、花譜の身長は公開されていませんから、これもまた推定するしかありません
 これについては、デザインを担当したイラストレーターのPALOW.がこのような見解を示しています。

 なるほど、ウ〜ン、155cm!

 ……としてしまうのはさすがに乱暴が過ぎますから、実際の画像を見て判断しましょう。
 幸運にも、不可解参(想)と近い日に投稿されている、花譜の身長を推定するのに適した動画が存在しました。それは…………

 花譜が名取さなとコラボした動画です。名取さなは身長を公開しています1.52mです。さらにこの動画には、特に障害物もなく花譜と名取さなが並んで立ち真正面からのアングルで撮影されたシーンが非常に多く含まれていますから、花譜の身長を推定するのにこれほどモッテコイのものはありません。
 この動画から、条件に合ったシーンをいくつか抽出し、名取さなの身長に対する花譜の身長の比を5か所で求めたものがこちらです。

1.07、1.06、1.06、1.05、1.05

 これらの平均をとり、名取さなの身長1.52mを掛けることで、花譜の身長が下のように得られます。(本来は不確かさを考慮すべきですが、面倒なのでしません。以下同様)

L ≈ 1.61 m

 なんということでしょう! 花譜の身長が1.61mであることが判明しました。
 ②~④では、この花譜身長L=1.61mを長さの基準として用いることにします

② エレベーターの高さはいかほどか?

 ①で、花譜の身長Lを求めました。これを用いれば、花譜の身長との比によってエレベーターのサイズが決定できます。

 そこで、下の図のようにして、エレベーターの前面の窓の高さ(以下、L'とする)とLとの比を測定しました。みてのとおり、ガバガバ補助線を引いてガバガバ消失点を特定し、そこからさらなるガバガバ補助線を引いてLとの比を求めます。

図. 花譜の身長Lをもとに、エレベーターの全面の窓の高さを推定する。右にあるでかい丸は消失点である。点には大きさがないはずではないかと言われると弱るので言わないでほしい。

 画面をみれば明らかに歪曲収差の効果がかけられていますが、これを考慮すると面倒になりますし、そもそもどうやって考慮すればいいのかよくわからないので、無視します。また、①と同様、なるべく花譜が直立に近い姿勢をとっているタイミングを狙って測定します。これは、花譜の姿勢による効果を防ぐためです。

 この測定を5つのスクリーンショットに対して行った結果として得られたL'/Lの値は以下の通りです。

1.74、1.74、1.70、1.69、1.66

これらを平均し、

L' ≈ 1.71L

となることがわかりました。

③ エレベーターの速さはいかほどか?

 まず、エレベーターの速さは、加速し、等速直線運動し、減速する、という順序で推移したと仮定します。以下で、等速直線運動をしている間のエレベーターの速さについて考えます。つまり、上昇開始時と上昇終了時から時間的に十分離れた地点で測定を行います。

 『記憶の器』の内部には、エレベーターと花譜以外にも多くのオブジェクトが存在しており、これらは固定されていました。これらのオブジェクトの長さと、エレベーターがそのオブジェクトを通過するのに要した時間がわかれば、エレベーターの速度もわかります(下図)。

 いま、オブジェクトの長さそれを通過するのに要した時間エレベーターの(等速直線運動をしている間の)速さとします。

図. オブジェクトの高さxと所要時間sを測定する方法の模式図。エレベーターの中には花譜が立っているが、小さいし、姿勢によって高さが不安定なので、LではなくL'を基準とする。

 なお、オブジェクトの高さxは、①と同様の手法を用い、L'との比で測定します(時間的に少しずつズレたタイミングで3回程度測定し平均を取る)。また、エレベーターの前方の窓の上端または下端が、オブジェクトを端から端まで通過するのにかかる時間がtとなります。配信画面では秒単位までの表記しかなかったため、スマートフォンのストップウォッチ機能を使い、3回ずつ測定して平均を取りました。

 5つのオブジェクトに対して上記の測定を行いました。これが難しくて、というのは、結構な頻度でカメラが切り替わってしまうために、ひとつのオブジェクトが画面に写り続け、かつ正確な測定が行えるアングルであるタイミングが案外に少なかったからです。かなり強引に測定した部分もありました。ガバを抑えるために、できれば20回くらい測定したかったのですが、時間もなかったので5つで打ち止めざるを得ませんでした。無念。

 結果は下の表の通りです。

 以上より、エレベーターの速さvは、

v ≈ 2.32 L' /s (≈ 3.97 L/s ≈ 6.39 m/s)

 であることがわかりました。ちなみに、これはおよそ分速380m時速23kmに相当します。ちょっと調べてみましたが、高層建築のエレベーターの速さとしては速すぎるということもなく、常識的な範囲内のようです。

④ エレベーターの移動距離はいかほどか?

 ③で、エレベーターの最大速さを求めました。これに経過時間を掛ければ終わり…………というわけにもいかず、その一歩手前の段階として、③の冒頭でも言及したように、エレベーターの加減速に要した時間を推定します。

 この時間を正確に測定するのはさすがにもうなんか嫌んなってきたのでかなりアバウトな話になってしまいますが、上昇開始/終了地点近傍において、特定の形状をもったオブジェクト(金網や、鉄骨のひと節)を通過するのに要する時間を順に計測し、その値の変化を概観することで、速さがvに達するまでの時間と、速さがvより小さくなり始めた時間を推定しました。

 仔細は省きますが、その結果、加速に30秒減速に30秒を費やしていると推定しました。

 さらに、加減速時の運動は等加速度運動である、つまり、一定のペースで速さが変化する、という仮定を置きます。私は運動する物体を眺めてその加速度の変化を読み取れるだけの技能を有しませんから、やむを得ない措置です。まぁ、そう大差ない仮定だとは思いますが。多分。知らんけど。

図. 上昇開始時を基準とした、時間と速さとの関係。0~30秒では加速し、30~623秒では等速直線運動を続け、623~653秒の間に減速して停止する。グラフの傾きが加速度を表し、赤の斜線部の面積が移動距離を表す。

 上の図は、以上の推定や仮定に基づいて得られた、エレベーターが上昇する速さと時間との関係を模式的に表すグラフです。

 赤の斜線で塗られた台形の面積がすなわちエレベーターの総合的な移動距離です。(きわめて細長い長方形が横に並んでこの台形を埋め尽くしている様子を想像してみるとわかりやすいかもしれません)

 したがって、台形の面積の公式に当てはめることで、エレベーターの総合的な移動距離Hを下のように算出することができます。

H = (593 + 653) × v ÷ 2

 これに、①で求めた値 L = 1.61m を代入することで、

H ≈ 3980m

 が得られます。これこそが、K.A.F.DISCOTHEQUEの間にエレベーターが上昇した距離に他なりません。検証終わり!

考察(?)

 ここまでの議論により、K.A.F.DISCOTHEQUEの間にエレベーターが上昇した高さがおよそ3980m、まあざっくり4000mであることが判明しました。

 水平方向に4kmの移動というとわれわれも常日頃から行っていることで大したことはありませんが、鉛直上向きに4kmの移動となるとこれは並大抵のことではありません。重力に逆らう必要があり、必要な仕事は桁違いです。
 日本に存在する最も高い構造物は東京スカイツリーですが、ご存知の通り、これは高さ634mしかありません。視野を世界に拡げたとしても、ブルジュ・ハリファ828mが最大です。大地に根を下ろした構造物は今のところ、1kmさえ超えることができずにいます。
 自然地形では、さすがにエベレスト(8849m)ほどの高さはないにせよ、富士山3776m)や、ハワイのマウナ・ロア4169m)とマウナ・ケア4,205m)といった高山に匹敵する高さです。
 ちなみに、マウナ・ケアには日本のすばる望遠鏡を含むマウナ・ケア天文台群が存在します。正確な電波観測のために高地の環境が最適ということのようですが、そういえば『記憶の器』を出た花譜が次に立ったステージは『観測所』といって、パラボラアンテナとかがいっぱい置いてありましたね。おそらく『超構造体』には天文台としての機能もあるのでしょう。知らんけど。

『観測所』全景。おそらく実際に観測を行うときには隔壁が開くのだろう。

 これだけの高度だと、むろん、気温気圧が地上とは全然違います。近い高さで、富士山の例をとってみましょう。2023年3月4日19時ごろの気圧はおよそ637hPa、気温は-30℃ほどだったそうです。同じ時刻の東京都心のデータでは、気圧が1012hPa、気温は12℃程度となっていますから、4000mという高さがいかに過酷かがわかります。

 ここでまず心配になるのが高山病です。wikipediaによると(これはちゃんとした文章ではないから、平気でwikipediaを参照するのだ)、1日の間に、おおむね2400m以上の高山に登ったとき、高山病を発症するリスクがあります。また、先述のマウナ・ケア天文台群でも、一気に山頂まで登ると健康上のリスクがあることから、まず比較的低い場所で数十分かけて体を慣らすことが推奨されているそうです。(ちなみに、南米などには標高4000m程度の高山に都市があったりしますが、そこの住民はかなり長い時間そこに暮らしている間に体が順応しているのであって、普段から高々標高100mない程度の場所で暮らしている我々には無理な話です。さらに、地面からの放射もない)
 ところが花譜は、約11分で4000mを一息に登ってしまいました。高山病を発症するかどうかは体質にもよりますが、発症したならば、頭痛吐き気めまいなどの症状が現れ、ひどいときには昏睡状態に陥ることさえあります。また、これらの症状を呈さなかったとしても、高所の低酸素状態では血中の酸素濃度が低下するため、激しい運動をした際の身体への負荷は地上でのそれよりもはるかに高くなります。アスリートが高地でトレーニングを行う所以です。
 なるほど、このような常軌を逸した環境で歌唱しなければならないバーチャルシンガーの仕事は過酷です。花譜CIELAlbemuthが現地でパフォーマンスを行った一方で、バーチャルシンガーではないEMA変な球体をアバターとして派遣せざるを得なかったことからもそれがわかります。

CIEL。3Dモデルのクオリティが尋常ではない。
Albemuth(画像左右)。案外喋る。
EMA(画像右手前)。
訓練を積んでいない人間をとつぜん標高4000mに突っ込むわけにはいかなかったようだ。

 もちろん、エレベーターの箱の中や『観測所』内部に適切な冷暖房設備与圧システムの存在を仮定すれば、これらの問題はほぼ解決できます。飛行機に乗って高山病になる人はあんまりいませんし、国際宇宙ステーションで凍死する宇宙飛行士はいません。せいぜい、耳が痛くなるとか、ちょっと肌寒いとかいうレベルで済むでしょう。知らんけど。
 しかしながら、これらの良心的な仮定を無意味化してしまう恐怖の存在がいます。VALISです。彼女らはあろうことか『観測所』の壁をぶち破って登場しました

『観測所』の壁が崩壊する。よくみると中央のパラボラアンテナもぶっ壊れている。どうすんねん。

 空調設備の存在を仮定すればこれはいっそう大変なことです。『観測所』の内部は、外部に比べて気圧が400hPaも高いことになりますから、壁に穴が開いた瞬間、そこからものすごい勢いで空気が抜けていき、部屋の中には暴風が吹き荒れます。室内温度も急激に低下し、瞬く間に氷点下へと突っ込みます。さらに、花譜はともかく、VALISの面々はかなり露出の多い服を着ています。軽装とかいう次元の話ではありません。そもそも、この服装で出番まで外に待機していたのでしょうか? メチャクチャですな。

VALISが登場。花譜にくらべると軽装が目立つ。寒そう。

 もはや歌唱どころか生命の維持さえ危ぶまれるありさまですが、彼女らはそんな環境で、このライブの中でトップクラスに負荷の高そうな『神聖革命バーチャルリアリティ』のパフォーマンスを完璧にやり切りました。個人的にも最も楽しかったシーンのひとつです。

おそらく過酷な高地トレーニングをくぐり抜けている。

 なるほど、バーチャルシンガーの仕事は過酷ですね。彼ら彼女らに対する尊敬の念が、ますます強くなってゆくのを感じます。

まとめ

 いかがでしたか? 今回の検証により、

  • K.A.F. DISCOTHEQUEでの上昇距離は約3980mである

  • したがって、『観測所』の標高は約4000mである

  • そんなメチャクチャな環境にいきなり放り込まれて歌ってる連中はヤバい

  • なかでもVALISは異次元にヤバい

といったことが判明しました! いやぁ、ヤバいですね! ヤバ!

 バーチャルシンガーの皆様の過酷な仕事に敬意を表しながら、この記事を終えたいと思います。

 以上! オオグソクムシでした。あばよ。

『観測所』の壁が崩壊した直後の花譜。涼しい顔をしているが、標高4000mの野外である。

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