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連作②『靴箱』

錆びた金属製の靴箱の扉に
薄橙色の瘡蓋が張り付いている。
名前札は時間の激流に洗われて
忘却の三角州で眠っている。

桃色の封筒で包んだ便箋、
宛名も差出人も不明の手紙。

何世紀も先の未来で化石になった言葉が
古語辞典で解析され息を吹き返すような、
遺伝子が組み込まれているような。

錆びた金属製の靴箱の扉に
薄橙色の瘡蓋が張り付いている。
空虚に満ちた水溜まりに
私は桃色の小石を投げる。

同心円状に拡がる漣を見て
誰かが気づいてくれたら良いな。

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