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連作④『玉蜀黍』

灰褐色の幻燈に照射される光線、
時間と物語の螺旋を吐き出す映写機。
有意義と無意義が極彩色の糸屑のように絡まって
仄暗い箱の中で虚像の音響を掻き鳴らす。

破裂した玉蜀黍を摘んでは
歯の隙間に挟まる飴色の言葉。

帰りたくない。

赤褐色の座席を歪曲させる体躯、
鼓動と呼吸の連続で紡がれる細胞分裂。
情熱と諦観が素粒子の紐のように交差して
薄暗い箱の中で二人の肩が触れ合う。

閃光が暗黒を破り棄て幻燈は砕かれる。
破裂した玉蜀黍が床上に散りばめられている。
貴方は腕時計の螺子を滑らかに回す。
何故 この世界はこんなに醜いのだろうか。


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