詩『曼珠沙華』
亡霊船の帆に降りかかる火の粉、
掌と指先の痛みを堪えて舵を取る。
天球儀の肌には星座の刺青、
輪廻の狭間で縺れ絡まる運命の糸。
曼珠沙華の花畑に漕ぎ出す、
蜷局を巻いて昇る巨きな海蛇。
貴方を救えなかったこの両腕を振り回して
五里霧中の現世を突き進む。
誰も失いたくない、
何ひとつ奪われたくない。
沈没船の柱を掴み取る聖エルモの稲妻、
蹠と爪先の傷を無視して駆けていく。
月球儀の肌には窪地の汗疹、
輪廻の終点で解け放たれる宿命の糸。
燃ゆる讃歌の間隙に
滴が落ちる音がした。
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