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詩『薫(我が恩師に捧ぐ)』

猩々緋色の襟締を最低限度の堅さで結んだ貴方と
罅割れた盃を酌み交わす日を待つ月輪の切り株。
幾重にも重なる年輪の層が濤打つ窓際の贈答歌、
木漏れ陽が薫る夏の旅路は終点間際。

貴方が揺さぶった涙腺の鈴音、
今生の別離じゃないよな。
腫らした目蓋を逸らして咲う、
夕焼ける帰路につく。

二藍色の装束と最高純度の儚さを纏った貴方と
草臥れた暁を抱き締める日を待つ日輪の果実。
幾重にも積もる後悔の汗が湿らす記憶の哀悼歌、
木枯らしが薫る秋の旅路は終点間際。

両腕の中で吐き出す嗚咽、
明日はもう逢えないな。
嗄らした喉を震わせ咲う、
朝焼ける往路につく。

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